3話 住処
月5万の古い木造2階建てのアパート。田舎だからなのか、この家賃で3LDKだ。隣の部屋どころか、アパートの全部屋の生活音が聞こえてしまうのは妥協点だろう。
ここが俺、高野勇介の住処である。
他に母親と妹が1人一緒に住んでいる。一緒に住んでいるといっても、ほとんど口を聞かなくなって久しいが。
時刻は午後6時。母親は仕事で、妹はバイトだろう。午後9時ぐらいまでは1人でいられる。
自室のベッドに腰掛け、その辺にあった漫画のページを適当にめくっていくが、どうにも内容が頭に入ってこない。カーテンの隙間から夕日が差し込んでいるせいかも。その赤い光は先ほどの光景を思い出させる。
安達か……まあ、顔は可愛いな。 泣いてたし本気だったんだろうな。
はあ、何で俺なんかに告るかなあ。可愛いし、一般的にはいいスタイルなんだし、もっと吊りあった奴を選べよな。
気分が重い。
おろしたての白いシーツにコーヒーを溢してしまったような気分といえば伝わるだろうか。
誰かの大事なものを傷つけることだけはしたくない。そう思ったからこそサッカー部も辞めたのに。
どこが良いことなんだよ、太一。
太一は俺の巨乳嫌いを知らないので無理からぬことではあるのだが。
「面倒くさい……」
ため息と一緒にそう呟いて、明日は学校をさぼることに決めた。