16話 スパランド平川・ほのかに点火
「あ、確か兄貴の友達の……なんとかさん」
スパランド平川のショッピングモールにある、外国の品物なども扱う、小洒落た雑貨屋。
あまりこういったところに縁のない俺・長谷部太一は、物珍しげに店内を見物していたところ、聞き覚えのある声音の女の子に話しかけられた。
「あ、ほのかちゃん」
顔を越えの方に向けると、そこには高野勇介の妹、高野ほのかちゃんがいた。
今日は少し明るい髪をまとめてアップにしている。うなじが強調され、少し艶めかしい感じだ。店名の書かれたエプロンをしているし、ここでバイトしているのかな。動きやすさを重視しているのだろう、Tシャツにエプロン、下は少しタイトなジーンズを穿いている。
「長谷部だよ、ほのかちゃん。 バイト中?」
一応中学の時からちょいちょい顔は合わせてるんだけど、なかなか名前覚えてくれないんだよな……
「あ、そうでした、長谷部さんです。 すみません、人の名前覚えるの苦手でして」
そういって軽く会釈する。
「最近始めたばかりですけどね、バイトっていうか知り合いのお店のお手伝いです」
そう言ってエプロンがよく見えるように胸を張る。
……むう、でかい。
この前すれ違った時にも思ったけど、ほのかちゃんはかなり豊満なバストの持ち主である。安達さんとタメ張るほどの大きさだ。中学の頃はそこまで大きかった覚えはないのだが……
これでまだ15歳だというのだから、末恐ろしい。
そういえば、この前は勇介に対しての態度がかなりきつかったな。前は勇介にべったり甘えていたような気がするけど、やっぱ胸が原因で揉めたんだろうなあ。
「もしかして兄貴と一緒ですか?」
「ああ」と俺が頷くと、ほのかちゃんは辺りを見回す。
それほど店内は広くないため、程なくして勇介は発見された。
ほのかちゃんの視線が勇介を捉え、次いでその隣の安達さんに向けられた瞬間、空気が変わった。
安達さんは勇介の隣、肩が触れるか触れないかの距離で一緒に商品を眺め、時折面白い品物を見つけると笑顔で感想を言い合っている。
傍から見ると、まあ、カップルにしか見えないな。
「なんとかさん……誰ですかあの人。兄貴の彼女……なわけないですよね。随分親しそうですけど、絶対違うはずですよね」
「あ、ああ、安達さんっていう同級生だよ。うん、まあ、彼女じゃないはずだよ。えっと、友達以上恋人未満ってところじゃないかな」
また、「なんとかさん」に戻ったことに対して突っ込みを入れようかと思ったが、怒気のこもった声色に押され、答だけどうにか返す。
「……どういうこと……あのロリコンが胸の大きい女と仲良くしてるなんて……冗談としか思えないわ……ふざけんじゃないわよ……胸が大きくてもいいんなら私だって……」
俺の返答を聞いているのかいないのか、ほのかちゃんは勇介と安達さんを凝視しながらぶつぶつと呟いている。正直、ちょっとどころではなく怖い。刃物でも持ち出しそうな不穏な雰囲気である。
「高野さん、レジお願い」
ほのかちゃんが勇介たちの方へ歩き出そうとした瞬間、店長らしき人から声がかかる。
「……チッ」
年頃の女の子から発せられたとは思いたくない舌打ちを残し、ほのかちゃんはレジに入っていった。
すまん勇介。なんか変なスイッチを入れてしまったようだ。




