1話 高野勇介
2013/07/17 今後のUPペースを考え、分割しました。
2013/11/29 どれがどの話か分からないのでサブタイトルを付けました。
2015/02/13 他の小説を参考に体裁を整えました。
俺は巨乳が嫌いだ
俺が巨乳を嫌いである理由はひとまず措いておき、とりあえず現状を知ってほしい。
高校最後の夏休みが明け、しばらくした秋の日。制服の衣替え週間といっても、まだまだ残暑の厳しい放課後の教室に俺はいる。夕日で赤く染まった教室は、「いかにも」な雰囲気である。俺の前には1人の女生徒。頬が朱色に染まって見えるのは、恐らく夕日のせいだけではないだろう。
女生徒は俯いたまま口を開く。
「高野君。今……付き合ってる人とかいますか?」
さて、これはどうしたものか。告白されているんだよなあ、多分。漫画とかだと、「友達に頼まれたから」ってなパターンもあるけれど……
「もし、今いないんでしたら私と付き合ってもらえないでしょうか」
違った!まじ告白だ!
い、いやまて、付き合うといっても意味は複数ある。
「それは男女の交際という意味で?」
彼女はますます赤くなったが、しっかりと頷き、俺の言葉を肯定した。
彼女の名前は安達美月。
確か剣道部。全校集会で表彰されていたのを覚えている。腰の辺りまである艶やかな黒髪が印象的だ。
かなり整った顔立ちで、結構な美人だと思う。
同級生に対しても敬語を使うところに育ちのよさも感じる。
しかし、なんでそんな美人が俺に……。
クラスも違うし、俺は帰宅部だし、接点はほとんど無い。話したこともほとんどないはずだ。
何かの罠かと疑ってしまう。まあ、罠だろうと何だろうと、彼女に対する俺の台詞は決まっている。制服の上着の極端な膨らみを目にした時から。
「ご」
俺の口から漏れた音に反応して安達は顔を上げる。
同時に極端な膨らみがたゆんと揺れる。
「ごめん!」
思ったよりも大きな声になってしまった。
人気のない教室には、部活に精を出す生徒の声がかすかに届くのみで、響いた声はいつまでもその場を漂っているように感じた。
どんな思いが彼女の脳裏によぎったのだろう。顔を上げた安達の目には涙が浮かんでいた。
「……もしかして他に好きな人がいたんでしょうか?」
「ごめん」
溢れた涙が彼女の頬を伝う。
俺はただ謝罪の言葉を口にし、逃げるように立ち去る。なぜなら……
「高野君!」
背中越しに安達の声が聞こえるが、振り返らずに教室を後にする。
なぜなら君が巨乳がだから……
なんて言えるわけねえーー!