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光露(こうろ)

作者: 雪屋 梛木
掲載日:2026/10/07

──それすなわち、打ち上げ花火が消える直前に一瞬強い光を放つ現象のこと

 去年の花火は綺麗でした。

 なんせ娯楽も少ない田舎ですので、時折打ち上げられる幻想的な煌めきを、彼とふたり肩を並べよく眺めたものです。

 夜空を覆い尽くすほどの絢爛な花々に混じって響く軍靴の音に気がついたのは、だいぶ月日が経ってからのことでした。

 はてマーチングバンドか何かと共に聴こえる音に耳をそばだててみても、木管やドラムなどはおらぬ様子で華やかさのないラッパの音しか届かず、おかしいなと思い始めていた矢先のこと。

 赤い紙が届いたと嬉しそうに見せびらかしにきた同級生がひとり、またひとりとここを飛び立ち遠い場所へと赴いていきました。

 彼らは羽を伸ばして楽しんでいるのでしょうか、早く戻ってこいと急かしても連絡のひとつも寄越しません。

 いくら便りがないのは良い便りだと申しましてもこのままでは労働力不足というもの。

 ついに私の愛しい彼にも白羽の矢が立った日、もはや赤というより薄紅のような紙を私は彼の目の前で握りつぶしました。

 奇しくも花火が夜空に舞う夜です。

 去年よりも華やかさがなく、パッとしない夜空です。数も少なく、打ち損ねも多い散々な花火なのです。

 地上で花火が爆ぜました。

 青白い顔をした女性が白衣を焦がしながら逃げ惑っています。

 もうこのエリアは終わりでしょう。

 いくら私達のような戦闘兵器があったとしても操縦する人がいなくなれば陥落も待ったなしです。

 今なら彼と二人でこのコロニーから抜け出せるのではとまるで人間みたいに甘い夢を呟いてみた瞬間、逃げ惑っていたはずの白衣の女がひらりと彼に乗り込み宇宙へと飛び立っていきました。

 ほどなくして大輪の綺麗な花火が夜空を彩ります。

 私はひとり最後の火の粉が燃え落ちるのを見届けました。

 彼との通信も途絶えました。


 俗に言う失恋というやつです。

☆評価をポチッと押してくれると嬉しいです。

次作へのやる気になります。


※誤字脱字チェックにのみAIを使用しています。

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