異世界転移したら「平均」が最強スキルだった件
俺の名前は佐藤ユウキ。
どこにでもいる、平均的な高校生だ。
身長、成績、運動能力、全部だいたい平均。
取り柄は特にない。
……はずだった。
「――勇者よ、ようこそ我が世界へ!」
目を開けると、そこは王宮っぽい場所だった。
ローブを着た老人が、やたら偉そうに俺を見下ろしている。
「あの、ここどこですか?」
「異世界じゃ」
テンプレかよ。
どうやら俺は、魔王討伐のために召喚されたらしい。
ありがちすぎて逆に安心する。
「では、ステータスを確認するのじゃ」
水晶みたいなやつに手を置かされる。
RPGおなじみのやつだ。
すると、空中に文字が浮かんだ。
名前:佐藤ユウキ
レベル:1
筋力:50
敏捷:50
魔力:50
知力:50
運:50
スキル:平均化
「……なんだこれ」
「すべての能力が、ぴったり平均値じゃな」
「いや、弱くないですか?」
正直、地味すぎる。
勇者ってもっとこう、100とか999とかじゃないのか?
王様も微妙な顔してるし。
「うむ……まあ、バランスはいいのう」
フォロー雑すぎるだろ。
「で、その“平均化”ってスキルは?」
「わからん」
わからんのかい。
ーーそのまま、半ば放り出されるように城を出た俺は、とりあえず近くの森に来ていた。
「……どうすんだこれ」
スキルが“平均化”とかいう地味すぎるやつ。
正直、ハズレ臭しかしない。
とりあえず、モンスターでも――
「グルル……」
低い唸り声。
振り向いた瞬間、背筋が凍った。
「……は?」
そこにいたのは、明らかに“雑魚”じゃなかった。
ゴブリン。
――だが、でかい。
普通の倍はある体格。
筋肉が膨れ上がり、手には血に濡れた棍棒。
「おいおい……聞いてねぇぞこんなの」
明らかに格上。
逃げるべきだと、本能が叫んでいる。
だが――
「くそっ!」
もう遅い。
ゴブリンが地面を蹴り、一瞬で間合いを詰めてきた。
「はやっ!?」
振り下ろされる棍棒。
俺は反射的に剣を構える――
ドゴンッ!!
衝撃で腕がしびれる。
普通なら、そのまま押し潰されていた。
だが。
「……あれ?」
踏ん張れている。
ギリギリだが、受け止められている。
そのときだった。
⸻
『スキル:平均化が発動します』
⸻
「え?」
次の瞬間。
視界に、ゴブリンのステータスが浮かぶ。
筋力:120
敏捷:90
魔力:10
知力:20
運:15
そして――
俺のステータスが、書き換わる。
筋力:85
敏捷:70
魔力:30
知力:35
運:32.5
「……は?」
理解した瞬間、背筋に電流が走る。
「これ……平均化って……」
つまり。
敵と俺の能力を、ちょうど中間にするスキル。
さっきまで圧倒的だったゴブリンが、
今は――
「……いける」
俺は踏み込んだ。
ゴブリンの動きが、さっきより“遅く”見える。
いや、違う。
俺が速くなっている。
「うおおお!!」
剣を振り抜く。
ズバッ!!
ゴブリンの腕が宙を舞った。
「ギャアアア!?」
絶叫。
だが止まらない。
「終わりだ!」
そのまま懐に潜り込み――
一閃。
ゴブリンは、その場に崩れ落ちた。
⸻
「……勝った?」
息を切らしながら、俺は呟く。
さっきまで、どう考えても勝てない相手だった。
それが――
「平均で、ここまで変わるのかよ……」
強い敵ほど、弱くなる。
そして俺は、そいつに引き上げられる。
「……いやこれ」
ゆっくりと、笑いがこみ上げてきた。
「当たりスキルどころじゃねぇだろ」
「平均って――最強じゃん」
数日後。
俺は、魔王城の前に立っていた。
「……来ちゃったな」
本来なら、何年もかけて戦う相手だろう。
だが俺には、このスキルがある。
「行くか」
扉を開ける。
そこには、いかにもラスボスな魔王が座っていた。
「ほう……人間か」
圧倒的な威圧感。
普通なら震えて動けないレベルだ。
だが――
「悪いけど、お前は負けるぞ」
俺は踏み込む。
『平均化、発動』
次の瞬間。
俺と魔王のステータスが平均化される。
魔王(元):筋力9999、魔力9999 など
↓
俺&魔王:全部 約5000
⸻
「なっ……!?」
魔王の顔が歪む。
「貴様、何をした!?」
「平均だよ」
そのまま、俺は剣を振る。
ズドンッ!!
魔王が壁に叩きつけられる。
「バカな……我が力が……」
「強すぎたんだよ、お前」
強すぎる存在は、平均されると一気に弱体化する。
逆に俺は――爆強化。
「終わりだ」
一撃。
それで、魔王は倒れた。
⸻数日後。
王宮では盛大な宴が開かれていた。
「勇者ユウキよ!よくぞ魔王を倒してくれた!」
王様が上機嫌で言う。
「いやー、運が良かっただけですよ」
「謙虚じゃのう!」
違う。
マジで運ゲーみたいなもんだ。
ただ一つ言えるのは――
「平均、最強だな……」
俺はそうつぶやきながら、料理を口に運んだ。
なお、この後。
「平均化」を応用して、賭け事でも無双してしまい、
城を出禁になったのは、また別の話である。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は「平均=地味」というイメージをひっくり返して、「むしろ最強では?」という発想からこのお話を書いてみました。
もし続きを書くとしたら、複数人を巻き込んだ平均化とか気になりますね。
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それでは、また次の作品でお会いできたら嬉しいです!




