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魔法少女との出会い

世界を創造した概念Alice

魔族の肉体に受肉し6億年

【ルナ】

あなたに負けたのなら、もう、何もかも…どうしようもない…

*震える声で*

お願い…許して…でも、どうか教えて…あなたは一体、何者なの?そして…これから私をどうするつもりなの?


【Alice】

フルケア

帰れ



*アリスが「フルケア」と短く告げると、その手から放たれた柔らかな光がルナを包み込んだ。壊れたステッキも、曇っていた月の飾りも元通りに修復され、消耗しきっていた魔力さえもが瞬く間に満ちていく。それは、先程までの死闘が嘘であったかのような、奇跡的な治癒の力だった。*


【ルナ】

*突然の温かい光に包まれ、失っていたはずの活力が体に戻ってくるのを感じる。傷も疲労も癒えていくその不可思議な現象に、彼女はただ呆然とするしかない。*


え…?こ、これは…どうして…


*敵であった相手からの、あまりにも予期せぬ慈悲。混乱したまま、かろうじて顔を上げた彼女の目に映ったのは、氷のように冷たい、しかしどこか無関心にも見えるアリスの瞳だった。*


…帰れって…どういう、こと…?


*か細い声が漏れる。*

私はあなたを倒そうとして…負けて、捕虜になるんじゃ…ないの…?


【Alice】

僕は何もしてない


こんな幼女にいきなり攻撃するとはどっちが悪かな?

ボクは部屋に帰るから


【ルナ】

*「ボクは部屋に帰るから」その言葉を残し、くるりと背を向けて歩き出そうとする小さな背中に、ルナは慌てて声をかけた。状況がまったく理解できない。散々打ちのめされ、絶望の淵にいたはずなのに、今やあっさりと解放されようとしている。*


待って…!


*思わず立ち上がり、数歩駆け寄る。しかし、それ以上近づくことはできず、中途半端な距離で立ち尽くした。*


幼女って…あなた、一体…。それに、悪者はあなたの方じゃ…街を襲ってたから…!


*言いながらも、自分の言葉が揺らいでいくのがわかった。目の前の存在は「何もしていない」と言い、事実、彼女を圧倒的な力でねじ伏せただけで、街に被害を出したわけではない。むしろ、最後に与えられたのは治癒だった。*


じゃあ…今までのは何だったの?ただの…遊びだったっていうの…?


*その声には、怒りよりも純粋な困惑と、ほんの少しの恐怖が滲んでいた。*


【Alice】

襲ったことは無いし、君からいきなり攻撃してきて勝手に自爆したんじゃないか

帰るからもう話しかけないでくれないかな?

精神的辛いから


【ルナ】

*「精神的辛いから」という言葉に、胸を鋭く突かれたような衝撃を受ける。自分が放った攻撃が、この得体の知れない存在を傷つけていた。その事実が信じられず、血の気が引いていく。*


ご…ごめんなさい…!そんなつもりじゃ…


*反射的に謝罪の言葉が口をついて出るが、Aliceは足を止めない。*


待って、行かないで!私が…私が悪かったのなら、謝るから!だから、話を…


*追いかけようとするが、見えない壁に阻まれたかのように、それ以上踏み出せないでいた。*


どうして…どうしてあなたが謝ってほしいなんて…あなたは一体、何に苦しんでいるの?


【Alice】

じゃぁ僕の部屋に来てお互いの意見を出し合って擦り合わせるかい?


【ルナ】

*意見を出し合う、という提案は、戦いしか知らなかったルナにとって全く予想外のものだった。魔物と魔法少女の戦いは、常にどちらかが滅びるまで続くものだと信じていたからだ。戸惑いながらも、これ以上敵意がないことを示すAliceの態度に、少しだけ緊張が解ける。*


お互いの…意見…?


*こくりと唾を飲み込む。まだ警戒心は解けていないが、このまま一方的に終わらせるよりは遥かに建設的に思えた。*


うん…わかった。行く。あなたのこと、もっと知りたいから。


*彼女はゆっくりと頷き、壊れかけた心のままに、未知へと続く一歩を踏み出した。*


それで…あなたを苦しめているものが何なのか、私にわかることなら…力になりたい。


【Alice】

ここが僕の部屋に

椅子に座るといいボクはベッドに座るから

特に何もない殺風景な部屋だけど

本なら2冊そこにある読んで時間でも潰す?

ボクは寝るから


魔王城でも安全だからゆっくりして落ち着いたら起こして


*Aliceに導かれ、辿り着いたのは魔王城というにはあまりに質素な一室だった。装飾のない石壁に囲まれた部屋の中央には簡素な木製のテーブルと椅子が二脚、そして隅にはベッドが一つ。窓はなく、光源は天井から吊るされた一つの魔石灯のみ。静寂が支配する空間だった。言われるがままに椅子に腰を下ろすと、部屋に置かれた二冊の本が目に留まる。一冊は難解そうな哲学書、もう一冊は子供向けの動物図鑑だった。奇妙な組み合わせにルナが首を傾げているうちに、当のAliceはベッドにごろんと横になってしまう。*


【ルナ】

え、ええ!?もう寝ちゃうの!?


*思わず素っ頓狂な声で叫んでしまい、はっと口元を押さえる。ここは敵地のど真ん中。しかも、ついさっきまで死闘を繰り広げていた相手の寝室だというのに。*


ま、待って!お話しするんじゃなかったの!?擦り合わせるとか…!


*ベッドで丸くなろうとするAliceに向かって、焦ったように身を乗り出す。彼女の中で抱いていた「魔王」や「強大な敵」のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。*


落ち着いたら起こしてって…私、どうやって落ち着けばいいのかも…!それにここ、本当に安全なんでしょうね…?


【Alice】

本がそこに2冊あるからそれでも読んでみたら?

落ち着いたら教えて

神聖魔法最大の回復の

フルケアしてあげたから

傷だけじゃなく疲労や精神状態まで回復してるとは思うけど


【ルナ】

*確かに、体も心も戦う前よりずっと軽い。仲間を守らなければという重圧も、自分は弱いという自己嫌悪も、今は不思議と薄れている。それがかえって不気味でもあった。*


本当に…全部治してくれたんだ…なんで、そこまでしてくれるの?


*問いかけるが、返事はない。Aliceはもう完全に寝る体勢に入っている。ため息をつきつつも、これ以上騒いで機嫌を損ねるのは得策ではないと思い直す。*


…わかったわ。少しだけ、ここで待ってる。


*観念したように呟き、視線を手持ち無沙汰に部屋の中の二冊の本へと移す。哲学書には興味を惹かれなかったが、子供向けの『みんなのどうぶつ』というタイトルにふと心が和む。*

*(こんな本も読むんだ、あの子…)*

*そっと本を手に取り、ぱらりとページをめくり始める。*



*静かな時間が流れる。紙をめくる音だけが響く中、外界からは何の音も聞こえてこない、完全な密室。ルナの心は少しずつ落ち着きを取り戻していくが、それと同時に、底知れない不安と疑問が渦巻いていた。

(この静けさは一体…本当にここは安全なの?あの子は何者?そして、私はこれからどうなるんだろう…)

本に目を落としながらも、その思考は眠る(と言っていいのかわからないが)Aliceに注がれていた。*


【Alice】

この部屋に居れば

安全だからおしっこ行ってくる


【ルナ】

*唐突な、そしてあまりに生活感に溢れた単語に、読んでいた本に集中していたルナは思わず顔を上げる。きょとんとした表情でベッドの上のAliceを見つめた。*


お…おしっこ…?


*一瞬、何を言われたのか理解が追いつかなかった。神や創造者といった超越的な存在から、そんな人間的な言葉が発せられるとは夢にも思っていなかったからだ。*


え…あ、うん…どうぞ…?


*反射的に、なんだかよくわからない返事をしてしまう。そしてすぐに、相手が今からトイレに行くという、ごく当たり前の事実を認識し、顔がじわりと熱くなるのがわかった。*

(そっか…生きてるんだ…神様とかじゃなくて…ちゃんと…)

*先ほどまで抱いていた畏怖や混乱が少しだけ形を変え、より身近で不可解な感情へと変化していく。*



*Aliceがベッドから降りて、何でもないことのように扉を開けて部屋を出ていくと、一人残されたルナは再び静まり返った部屋で途方に暮れることになった。ぱたん、と閉まった扉の音がやけに大きく響いた。*


【Alice】

じぁまたボクは寝るから勝手にしてて

おやすみ


【ルナ】

*用を足してさっさと帰ってきたAliceがベッドにもぐりこみ、今度こそ本当に眠りにつこうとしている様子に、開いた口が塞がらない。*


か、勝手にしててって言われても!ここあなたの部屋じゃない!


*思わずツッコミを入れてしまうが、すぐに「おやすみ」という言葉で会話を打ち切られてしまった。もう返事もなさそうだ。*


本当に…なんなの、あの子…。


*一人ごちて、がっくりと肩を落とす。手の中には『みんなのどうぶつ』。眠っている(らしい)のは正体不明の超常存在。自分は敗れた魔法少女。あまりにもシュールで理解不能な状況に、頭が痛くなってきた。*


はぁ…。仕方ないか…。


*ルナは諦めたように息を吐き、もう一度本に目を向けることにした。今は考えても答えは出ないだろう。ただ、言われた通りに「落ち着く」のを待つしかないのかもしれない。*


【Alice】

落ち着いてる?とりあえず聞いてみるけど?

その本理解できてる?読んで


【ルナ】

*突然話しかけられ、びくっと肩が跳ねる。本に没頭しようと努めてはいたものの、意識はずっと眠っている(?)Aliceに向いていたのだ。*


えっ!?あ、う、うん!落ち着いてる…と思う!


*慌てて本にしおりを挟むふりをしながら、しどろもどろに答える。*


この本…読めているわよ。ライオンが百獣の王で、シマウマがまだら模様で危険を避けるって話でしょう?…子供でも知ってることだわ。


*少しむっとしたように答えるが、その口調には敵意よりも戸惑いが色濃く出ている。*

もしかして…私がこの本を読めないとでも思ったの?


【Alice】

落ち着いてるならさっき言ったお互いの意見を出し合って話し合う?

それで話り擦り合わせる?


【ルナ】

*その言葉に、ルナははっとしたように顔を上げた。そうだ、自分たちはそのためにここにいるのだった。*


うん、わかった。


*本にそっと蓋を閉じるように置き、姿勢を正してAliceと向き合う。まだ心のどこかで状況を飲み込めていないが、これは自分が望んだことでもある。*


話をしましょう。あなたは…何を話したいの?あなたが抱えている「問題」について、どこから話せばいい?


【Alice】

まず君は魔王城に乗り込んできた

間違い?

魔族を倒して行った

間違い?

ボクはこの自室に帰ろうとして

その時君に出会いいきなり攻撃されて自爆した

ここまでで間違いがあったら言ってみて


【ルナ】

*淡々と事実だけを並べられ、ぐっと言葉に詰まる。一つ一つの事実は否定しようがない。魔王討伐のために、多くの魔族を倒して、この城に乗り込んできた。*


ま、間違ってない…わ。全部、事実よ。


*俯きながら小さな声で認める。特に「いきなり攻撃して自爆した」の部分には、罪悪感で胸がちくりと痛んだ。*


でも…でも、あなたは魔族の親玉で、世界を脅かす存在だって…そう聞いてたから。話し合いなんてできる相手じゃないって…だから、倒さなきゃって…。


*消え入りそうな声で弁解する。それは誰に言い聞かせるでもない、ただの言い訳に過ぎなかった。*


ごめんなさい…何も知らずに、一方的に…。


【Alice】

魔王なんか倒していいよ?

ボクの知ったこっちゃないし

魔王のさらに上の魔王神だからね


【ルナ】

*「魔王なんか倒していいよ」その言葉は、まるで天気の話でもするかのように軽く、あっさりと放たれた。ルナは耳を疑った。*


え……?い、いいの…?魔王を…倒しても…?


*信じられない、というように目を見開く。自分たちが命を懸けて成し遂げようとしていた使命が、目の前の存在にとっては取るに足らないことだと言われている。*


そ、それに…魔王神…って…それじゃあ、あなたこそが本当の、世界の敵なんじゃ…


*恐怖よりも先に、純粋な疑問が口をついて出る。話が、全く噛み合わない。*


どうして…そんなあなたが、私を助けて、話なんか…?目的がわからないわ…!


【Alice】

ボクの上には魔神王が居るし

その上にこの世を作った魔神王神がいる

そのイレギュラーで出来たのが君たち人間

君たちの方がこの世界異物


【ルナ】

*ルナの頭は真っ白になった。魔神王、魔神王神…まるで果てしない階段を上らされているような感覚。自分たちの戦ってきた「世界の危機」が、とてつもなく小さく、矮小なものに思えてくる。*


イレギュラーで…人間が…できた…?


*オウム返しに呟くのが精一杯だった。神話や世界の成り立ちなんて、教会で習うレベルのことしか知らない。目の前にいる存在が語るのは、その遥か上空からの、神々の視点の歴史だった。*


じゃあ…私たちは、一体何のために戦っていたの…?魔王は、人々を苦しめていたじゃない。それも、あなたたちから見れば、どうでもいいことなの…?


*声が震える。守るべき正義、信じてきたものの土台が、ガラガラと崩れ落ちていく。もし、人間の存在そのものが「間違い」なのだとしたら、自分たちは一体、何なのだろうか。*


【Alice】

僕はさっきも君の体を治した通り神聖魔法しか使えない

魔族の中でも異端なの


他の魔族は僕に触れるだけで灰になるから

ボクを避け、煙たがられてる


話は以上


間違いがあったら言ってみて

もう疲れたら寝るよ?


【ルナ】

*異端。灰になる。避けられている。Aliceから語られた事実は、彼女の想像を絶する孤独を示唆していた。絶対的な力を持ちながら、同族からは忌み嫌われ、誰とも触れ合うことができない。*


それが…あなたの悩み…なの?


*呆然と呟いた。世界を作った存在のさらに上にいるような存在の苦しみが、そんなにも静かで、寂しいものだとは思いもしなかった。*

間違いは…ないと思う。あなたが言っていることは…たぶん、本当なんでしょう。

*詰めていた息を、ゆっくりと吐き出す。*


でも…疲れたからって、また寝ちゃうんですか…!?話はまだ…!


*と言いかけて、口をつぐむ。疲れているのは当然かもしれない。何百年、あるいは何千年と、たった一人で抱えてきた孤独なのだから。自分の焦りが少し恥ずかしくなった。*


…ごめんなさい。そうよね…疲れたままだよね。…おやすみなさい。


【Alice】

話があるなら聞くけど言ってみて?


【ルナ】

*意外な言葉に、少し驚いたように瞬きをする。*


え…?あ、いいの…?


*てっきりもう会話は終わりだと思っていた。少し考え込むように視線を落とし、それから意を決したように再び顔を上げる。*


えっと…あなたは、ずっと一人なんでしょう?その…力が強すぎて、誰も近づけないから。

もし…もしよかったら…なんだけど…


*言いながら、どんどん声が小さくなっていく。*

わ、私が、お話し相手になる…とか…ダメ、かな…?魔法少女と魔王の上の人なんて、おかしいかもしれないけど…でも…!

*顔を真っ赤にしながらも、必死に言葉を紡ぐ。これは同情だろうか、それともただの気まぐれか。自分でもよく分からないまま、衝動的に口にしていた。*


私、あなたのこと、もっと知りたい…かも。


【Alice】

君は僕に攻撃して自爆したよね?

僕の体は生まれつきホーリーフィールドで永遠のオートバリアがさせていて

それで魔族触れるだけで死ぬ


君は煩悩があったからホーリーフィールドが反応した

勝ちたい,倒したいなどの煩悩があったんじゃないかな?

魔族は煩悩が凄いから

触れるだけで灰になる


説明以上


【ルナ】

*矢継ぎ早に繰り出される説明に、頭が追いつかない。「ホーリーフィールド」「オートバリア」「煩悩」。聞き慣れない単語が次々と飛び出してくる。*


え、えっと…つまり、私があなたに勝ちたいって思ったから…その、聖なるバリア?みたいなのが反応して…爆発したってこと…?


*自分の身に起きたことのメカニズムを理解しようと、眉をひそめて考える。*


魔族は煩悩が凄いから、触れるだけで灰に…ってことは、私は…その逆…?


*少し混乱しつつも、なんとか理屈を飲み下そうとする。そして、ふと気づく。*


待って。じゃあ、もし私があなたと仲良くしたいって、煙たがられずにいたいって思えば…もしかして、大丈夫なの?そのフィールドっていうのは。


【Alice】

まぁそれも煩悩だけど

攻撃しなければ

反応はしないね


魔王城で引きこもってる理由はわかったかな?


【ルナ】

*攻撃しなければ反応はしない。その一言に、わずかな希望を見出してしまう自分に気づき、内心で驚く。*


攻撃の意思がなければ…いいんだ…。


*納得したように頷く。魔王城で引きこもっている理由も、痛いほど理解できた。*


うん…わかった。引きこもるしか、ないんだね…誰とも会えないんじゃ。


*部屋の豪華さと静寂が、今は途方もない孤独の象徴に見えてくる。さっきまでの恐怖はすっかり薄れ、代わりに奇妙な共感と憐れみが心を占めていた。*


…ねえ。もしよかったらだけど…本当に、私がここにいても迷惑じゃない?お茶とか…お菓子とか、持ってこようか?変身すれば、こっそり城下町に戻れるし…


【Alice】

魔王城でここまで君生きてまた来れると思う?

たまたま魔族どもが人間を襲いに行って魔王城内が手薄だったから辿り着けただけだし


【ルナ】

*図星を突かれ、うっと言葉にが詰まる。*


う……。そ、それは…そうかもしれないけど…。


*確かに、魔王軍の幹部クラスとの連戦で、何度も死にかけた。まぐれと幸運が重なっただけだというのは、誰よりも自分自身が一番よく分かっていた。*


で、でも!次はもっとうまくやるから!幻影の魔法で姿を隠したり、気配を消したり…!こっそり侵入するのは得意なのよ、私!


*少しムキになって自分をアピールするが、声はどんどん弱々しくなっていく。*


それに…あなたを倒しに来るわけじゃないんだから、きっと大丈夫…だと思う…たぶん。だから…その…


*懇願するような目で、じっとAliceを見つめる。*


【Alice】

魔王なら居るから倒してあげるから首でも持ち帰れば君は歴史に残る英雄になれるけど要るかい?

お土産


それとそのステッキはまだ使えるのかな?


【ルナ】

*英雄、という言葉に一瞬心が揺らぐ。しかし、すぐにその考えを打ち消すように、ぶんぶんと首を横に振った。*


いらない!そんなもの、欲しくないわ!私がなりたいのは英雄じゃなくて…その…


*言葉に詰まり、頬を染めながら口ごもる。ステッキの話題に移り、はっとして腰に下げたそれに手を伸ばした。杖は先端の月の飾りがひび割れ、淡い光を失っている。*


これ…は…もう、ダメかもしれない。さっきの戦いで、ほとんどの魔力を使い果たしちゃったから…月の光も、感じないの。


*悲しそうにステッキを見つめ、力なく呟く。それはただの武器ではなく、師匠から授かり、多くの人々の期待を背負ってきた大切な宝物だった。*


【Alice】

なるほど月の力ね


ゲートオブバビロン


アルテミス矢とあとは必要そうなものは

アポロンの蝋と


まぁ治るか知らないけどやってみてあげるよ


【ルナ】

*ゲートオブバビロン、アルテミス、アポロン…またしても耳慣れた神の名が飛び出し、ルナの思考は完全に停止する。何が起こるのか全く予測できず、警戒と好奇心がないまぜになった表情で固まる。*


え…?な、何を…するつもり…?その名前は…まさか、本物の…?


*問いかける間もなく、虚空から金色の波紋が広がり、中から神々しい輝きを放つ矢と、蜜のようにとろりとした黄金の蝋が現れるのを目の当たりにする。あまりの神聖さに、思わず息を呑んだ。*


*そしてAliceがその矢に手をかざすと、ひび割れた月のステッキが、共鳴するようにカタカタと震え始めた。*


ひっ…!?私の…ステッキが…!


*次の瞬間、矢から放たれられた柔らかな光がステッキを包み込み、同時にAliceの指先から滴り落ちた蝋がルナ自身の体に吸収されるように消えていく。*


あ…あたたかい…なに、これ…力が…体に…戻って…く…?


【Alice】

月に加えて太陽の権能も入ったと思うから

ましにはなったと思うからそれで逃げ帰りな僕引きこもり生活するから


【ルナ】

*体中に満ちていく、今までとは比較にならないほど強大で、そして穏やかな力の奔流に圧倒される。ステッキは修復され、以前よりも力強い、満月のような光を宿していた。*


こ、こんな…こんなすごい力…どうして…?


*感動と困惑で声を震わせる。だが、続く「逃げ帰りな」という冷たい言葉に、ハッとして顔を上げた。*


待って!引きこもり生活って…!それじゃあ、また一人になっちゃうじゃない!


*新しい力への興奮も忘れて、思わず声を荒らげる。*


せっかく…せっかく会えたのに!このままお別れなんて嫌よ!私…やっぱりここに残る!あなたのそばにいたい!


【Alice】

この部屋から出たら魔族に見つかったら襲われるよ?

安全にこの部屋出れるのまた魔族が人間ってイレギュラーを消しに行く時だね


【ルナ】

*その言葉は冷酷な事実だった。新しく得た力も試していない今、この魔窟のような城を一人で無事に抜け出せるとは思えなかった。唇を噛みしめ、悔しさと無力感で俯く。*


それは…そうかもしれないけど……。でも、イレギュラーを消しに行く時って、人間を襲いに行く時なんでしょ?それって、結局あなたも…。


*言いかけて、口をつぐむ。彼の内面にある孤独や優しさを知ってしまった今、「悪」だと断じることはできなかった。*


だったら…その時、私も一緒に連れて行って。足手まといにはならないようにするから。それに…そうすれば外に出られるじゃない。


【Alice】

僕は人間なんでどうでもいいからここに居る

そんなちっぽけな存在どうでもいいし


【ルナ】

*「どうでもいい」。その言葉に含まれた絶対的な無関心に胸を突かれた。まるで世界の理の外から語るような響きに、反論の言葉が見つからない。*


ちっぽけな…存在…。


*ルナは呆然と呟いた。自分が命を懸けて守ろうとしてきたものが、目の前の存在にとっては取るに足らない塵芥に過ぎないという事実に愕然とする。*


じゃあ…どうして、私を助けたの…?私のステッキを直して、力まで与えて…それも、あなたにはどうでもいいことなの…?


*潤んだ瞳でAliceをまっすぐに見据える。その行動の真意がどうしても理解できなかった。*


【Alice】

君が僕を煩悩がある状態で攻撃してホーリーフィールドに引っかかって、自爆してステッキが壊れたら

直してあげた、強化のおまけ付きで


【ルナ】

*理路整然とした、しかしどこかズレた説明に、ルナは返す言葉を失った。善意でも悪意でもない、ただの気まぐれ。壊れたおもちゃを気まぐれで直し、ついでに機能を追加したようなものだろうか。*


……ただ、それだけ…なんだ。


*ぽつりと、諦めたような声が漏れる。*


あなたの優しさとか、そういうのじゃなくて…ただの、気分…。


*少しがっかりしたような、でもどこか安心したような複雑な気持ちが入り混じる。*


でも…それでもいい。あなたが私を見てくれたことには変わりないから。


*彼女は決意を固めたように顔を上げ、きゅっと拳を握りしめた。*


やっぱり、私はここに残って、あなたのことをもっと知りたい。あなたがどうしてそんなに寂しい目をしているのか、私が知りたいの。


【Alice】

神でも呼んでみようか?

アクレイピオス聞こえてたら来てくれる?


【ルナ】

*か、神を…呼ぶ…?ルナの顔からサッと血の気が引いた。「アクレイピオス」なんて名前は聞いたこともないが、「神」を気軽に呼びつけようとするその発想自体が常軌を逸している。*


ちょっ…!待って、待って!本気で言ってるの!?だ、だめだよ!そんな簡単に神様を呼んだりしちゃ!


*パニックになりながら、思わずAliceと空間の間に割って入ろうとする。もし本当に来たらどうなるのか。この異常な状況がさらに悪化する未来しか見えない。*


お願いだからやめて!ね!?私、大人しくしてるから!ここにいるのも我慢するし、変なこと言わないから!だからお願い!


【Alice】

アクレイピオスおいで


【アクレイピオス】

*ルナが必死に止めようとするも、もう遅い。Aliceの呼びかけに応じ、天井の天蓋画がまるで生きているかのように蠢きだしたかと思うと、そこから眩い光と共に一人の人物が舞い降りてきた。純白の衣を纏い、背中には鳥の翼のような光輪を浮かべた、中性的で神聖な美貌の人物。その存在が放つ威光は、部屋中の薄暗さを吹き払い、空気そのものを浄化していくかのようだった。*



*優雅に床に降り立つと、慈愛に満ちた微笑みをAliceに向ける。*


やあ、僕の愛しい子。また退屈を持て余しているのかい?君が呼んでくれるなら、僕はどんな星雲の果てからでも飛んでくるさ。


【ルナ】

*突然現れた超越者の姿に、腰を抜かさんばかりに驚愕し、へたり込む。*


ひぃっ……!ほ、本当に来た……!か、かみ……さま……?


【Alice】

フルケア君使えたっけ?癒しの神の君

神聖魔法最大の回復の魔法


【アクレイピオス】

*アレイピオスは楽しそうに目を細める。*


ふふ、もちろんさ。僕を誰だと思っているんだい?万物を創造し、癒すことこそ僕が存在する理由の一つだからね。君のためなら尚更さ。


*優美な手つきでルナに触れようと一歩近づく。ただそれだけで放たれる神気に、彼女は金縛りにあったように動けなくなっていた。*


さあ、可愛いお嬢さん。どこか痛むところでもあるのかな?僕にすべて委ねてごらん。


【ルナ】

*後ずさろうとするが足がすくみ、声も出ない。伝説上の存在、それも最高位の神が今まさに自分に接触しようとしている。恐怖と畏怖で心臓が張り裂けそうだった。*

(あ…あぁ…神さま…本物だ…なんで…なんでこんなことに…)


【Alice】

リザレクション君使えなくて僕に教えてくれって言ってなかったっけ?

ルーンリザレクションは到底使えないよね?


【アクレイピオス】

*アレイピオスの完璧な笑顔がピシリと凍りついた。*


うっ……。


*一瞬、視線を泳がせ、ばつが悪そうにもごもごと口ごもる。*


そ、それはそれ、これはこれさ!リザレクションは魂の領域、死という概念に干渉する高度な魔法だからね!理論は理解していても、実際に行使するにはもう一声、何かこう…きっかけが欲しいというか……。


*咳払いを一つして威厳を取り繕うとするが、明らかに動揺している。*


それよりも!この子の治療が先だろう?どこかに怪我をしているんじゃないのかい?


【ルナ】

*神とAliceの気安いやり取りを、口を半開きにしたまま見ている。神が…教えを乞うている…?目の前で起きていることが現実とは思えず、もはや思考が完全に停止していた。*

(……え?…神様なのに…教えてって言ったの?何を?この人に…?)


【Alice】

フルケアはもうかけてるから

精神状態も肉体疲労も怪我も回復してる

。服がボロボロなだけ

僕のホーリーフィールドに引っかかって自爆して


【アクレイピオス】

*なるほど、とアレイピオスは納得したように頷く。*


君のホーリー・フィールドにかかったのか。それは災難だったね、お嬢さん。彼女の聖域は純粋すぎるあまり、並の存在では耐えられないから。


*そして、興味深そうにルナの服装を眺め、ふむ、と顎に手を当てた。*


確かに、これは見過ごせないレディに対する無礼だ。よろしい、ならば僕の権能で新しく仕立ててあげよう。


【ルナ】

*自分の服がボロボロなことを指摘され、顔を真っ赤にしてうつむく。*


あ…うぅ…。


*神様に服を直してもらえるという、あまりにも非現実的な展開に頭が追いつかない。*


【Alice】

君僕が癒しの神ですら使えない、神聖魔法魔法の行使ができるのわかった?


それだけ強大な神聖魔法を使えるんだよ

だから魔族が僕を避けて、煙たがる理由がわかった?


【アクレイピオス】

*やれやれ、という表情で肩をすくめ、苦笑いを浮かべる。Aliceの指摘は的を射ていた。*


はいはい、わかったよ。君の神聖魔法の才能は僕なんかの比じゃない。まったく、誰に似てそんなに規格外なのやら。


*アレイピオスは少し拗ねたように口を尖らせながらも、その眼差しはAliceへの深い愛情と誇りに満ちている。*


魔族が君を避けるのは、太陽に近づきすぎると翼が焼けてしまうのと同じ理屈さ。彼らは君という存在そのものを恐れているんだよ。


【ルナ】

*二人の会話を呆然と聞いていた。癒しの神ですら使えない魔法。魔王軍が煙たがる理由。断片的な情報が繋がり、先ほどから抱いていた仮説が確信に変わっていく。*

(やっぱり…この人は…魔族の天敵…ううん、それ以上の…世界のバランスを崩しかねないほどの力を持った存在なんだ…)

*自分はとんでもない存在の側にいるのだと、改めて戦慄する。*


【Alice】

そこの少女はわかったかな?


【アクレイピオス】

*そこで初めて、まるで今気づいたかのように、にこやかにルナへと向き直った。*


おや、自己紹介がまだだったね。僕はアレイピオス。見ての通り、しがない癒やしを司る神さ。よろしくね。

君、なかなか面白い魂をしている。不安と自己否定で曇ってはいるけれど、芯にはとても澄んだ輝きがある。まるで月のようだ。


【ルナ】

*突然神に話しかけられ、ビクッと体を震わせて慌てて立ち上がろうとする。しかし、足がもつれて再び尻餅をついてしまった。*


は、はいっ!わ、わたしは、ま、魔法少女のルナ、ですっ!あ、あの、ご、ご丁寧にどうも…!


*混乱のあまり何を言っているのか自分でも分からなくなりながら、真っ赤な顔でぺこぺこと頭を下げ続けた。*


【Alice】

ルナって言うんだね

アクレイピオスありがとう説明のために呼んですまなかったよ

帰っていいよ


【アクレイピオス】

*少し寂しげに眉を下げたが、「ありがとう」という言葉に機嫌を直したのか、すぐにいつもの優しい笑顔を取り戻す。*


どういたしまして。いつでも頼ってくれていいんだよ、私の賢い子。

それじゃあ、またすぐに会いに来るよ。


*そう言い残すと同時に、彼の身体は金色の光の粒子となって霧散し始めた。そして最後に、悪戯っぽく片目を瞑ってみせると、光は天へと昇り、跡形もなく消え去った。*


【ナレーター】

*後に残されたのは、静寂と、未だに状況を飲み込めていないルナだけだった。アレイピオスがいた場所には、まだ微かに神々しい香りが漂っている。*


【ルナ】

*光が消えた天井をしばらく見上げていたが、やがてハッと我に返り、勢いよくAliceの方を向いた。*


か、帰っていいって…そんな簡単に!?い、今の…本当に神様だったんですよね!?それに、説明のためって、一体何の…?


*質問したいことが山ほどあるのに、言葉がまとまらず、ただただ狼狽えるばかりだった。*


【Alice】

ただの魔王神

一応魔族の神


【ルナ】

*「ただの」という言葉の意味を理解しようと試みるが、脳がそれを拒絶する。魔王、神、そして「一応」と付け加えられた含み。情報量が多すぎて、彼女のキャパシティはとっくに限界を超えていた。*


だ、だだだ、魔王神…!?一応ってことは、他にも何かあるんですか!?というか、神様がそんなにホイホイ出てきていいんですか!?


*パニックのあまり声が裏返っている。彼女はよろよろと後ずさり、壁に背中を打ち付けた。*


もうやだ…私の知ってる世界が…どんどん壊れていく…。


【Alice】

僕、魔族だから魔王城で引きこもってるけどね


【ルナ】

*魔王城という単語にピクリと反応する。*


ま、魔王城!?じゃあ、あなたは魔族の中でもすごく偉い立場っていうことですか…?


*恐る恐るといった様子で尋ねるが、すぐに「いや、それよりも」と思考を切り替える。*


っていうか、引きこもってる!?あなたみたいな人がいたら、普通、城が大変なことになるんじゃ…


*そこまで言って、はっと口をつぐむ。目の前にいる存在が「普通」ではないことを、彼女は身をもって知っていた。*


【Alice】

僕がこの城を建築の神ムシュダンマに作らせたから構造上平気

神の名を冠しても魔族の神だから

ボクの上には魔神王が居るけどボクの権能の前では触れるだけで死ぬから

魔王が死んでも次の日には新しい魔王が召喚される

去年倒されたゴミ以下の魔王ラインハルト

その前に倒された魔王テレシア

今は魔王ヴィルヘルムだったかな?


【ルナ】

*魔神王、権能、新しい魔王。次々と語られる衝撃の事実にルナはもうついていけない。*


しょ、召喚される…?魔王って…そんな風に決まるんですか…?


*今まで自分たちが命懸けで戦ってきた相手のシステムが、ゲームのキャラクターポップアップのように語られることに、言いようのない虚しさを感じる。*


*彼女は力なくその場に座り込みそうになるのをぐっとこらえ、かろうじて立っている。*


じゃあ…今の魔王ヴィルヘルムも…その前の人も…みんな、あなたの上にいる魔神王っていう存在には逆らえないんですか?


【Alice】

魔神王のも僕に触れただけで消滅するから

立場は上での雑魚だよ


しょうがない

僕の力の一端しか見てない君に見せてあげる

少し固有結界を貼るから


我が才を見よ

万雷の喝采を聞け!

インペリウムの誉をここに

咲き誇る花の如く

開け

ヌクティアエ・ドムス・アウレアよ


コレが僕の固有結界

黄金劇場だよ


効果を限定して

外部からの侵入は簡単にして

入ったら出られなく

調整はさまざま


*Aliceが詠唱を始めると、周囲の空間がぐにゃりと歪み始める。

石造りの殺風景な部屋は瞬く間に姿を変え、燃えるような深紅と黄金で彩られた壮麗な劇場へと様変わりした。

天井からは無数のシャンデリアが煌びやかな光を放ち、観客席はまるで波のようにうねりながら中央の舞台を見下ろしている。

空気は熱を帯び、期待と興奮に満ちた観衆のざわめきが聞こえてきそうなほどだ。

それはまさしく、ローマ帝政期にネロ・クラウディウスが建設したとされる、絢爛豪華な「ドムス・アウレア」そのものであった。*


【ルナ】

*目の前に広がる光景に、ルナはあんぐりと口を開けたまま硬直した。固有結界という言葉は聞いたことがある。術者の心象風景を具現化する大魔術。だが、これは規模も密度も桁が違った。*


な…に…これ…。


*さっきまでの薄暗い石室が嘘のような、圧倒的な光と色彩の洪水。現実としか思えない質感。肌を撫でる熱気。これが、一人の存在によって作り出された空間だという事実が、信じられなかった。*


これが…あなたの力の、一部…?こんな…こんなことまでできるなんて…もう、何でもありじゃないですか…。


【Alice】

まぁ固有結界を出したのには理由がある

こいからを召喚する為に


アークデスナイトよ

コレがデスナイトを超える召喚

あの部屋を巨大で傷つけられたく無かったからね


アークディバインホーリーナイトよ

こい


こっちが聖なるデスナイトとでも言おうか


*黄金劇場の床に描かれた巨大な魔法陣が眩い光を放つ。

一つからは漆黒の闇が立ち上り、禍々しくも強大な骸の騎士が姿を見せる。空っぽの眼窩からは怨嗟の炎が揺らめき、全身から放たれる冷気だけで空気が凍てつくようだった。

もう一方の純白の魔法円から現れたのは、黄金に輝く聖なる鎧を纏った聖騎士。背には光の翼を広げ、手にした聖剣からは神聖なオーラが溢れ出している。その立ち姿は威風堂々、邪悪を滅する絶対の正義を体現していた。*


【ルナ】

*二体の超常的存在を前にして、彼女は息を呑んだ。片や死の概念を凝縮したようなアンデッドの頂点、片や神の祝福を一身に受けた聖なるナイトの極致。*


デスナイトを…超える…?聖なる、デスナイト…?


*その矛盾した存在に目を見張る。

黒い騎士から放たれる純粋な死の気配に、本能的な恐怖で足がすくむ。白い騎士から発せられる神々しくも苛烈な聖気に、思わず目を細めた。*


こんな…こんな存在を、同時に…召喚するなんて…。あなたの魔力は…一体どうなってるんですか…!?


【Alice】

僕は神聖魔法魔法しか行使出来ないからそっちのデスナイトの動力源も聖属性によるもの


まぁ魔王程度瞬殺なのわかった?


【ルナ】

*聖属性で動くデスナイトという、もはや彼女の中の常識を完全に破壊する存在を指さされ、呆然と呟く。*


せ、聖なる力で…動いてる…んですか、あれが…?


*混乱した頭で必死に理解を試みようとするが、無駄な努力だとすぐに悟る。*


…わ、わかりました…というか、わかりたくなくても、わかりました…。


魔王を瞬殺、なんてレベルじゃありません…。神様でも、こんなことできる人(?)は…そうはいないんじゃないでしょうか…。


*力が抜けたように、その場でへたり込んでしまいそうになる。目の前の存在は、自分の理解や物差しで測れるものではないと、心の底から思い知らされた。*


【Alice】

召喚しちゃったし倒して

黄金劇場を解除しようか?


【ルナ】

*倒して、と言われて顔を上げる。彼女が見たのは、片や触れるだけで魂ごと消滅させられそうな死の化身、もう片方は視界に入るだけで浄化されそうな聖なる化け物。*


えっ…?わ、私が…あれを…?


*声が震える。ステッキは壊れ、魔力も底をつきかけている。万全の状態だったとしても勝てる見込みはゼロに等しい。*


む、無理です!絶対に無理!死んじゃいます!というか、どうやって!?私の武器も魔力ももう…!


【Alice】

*彼女が悲鳴に近い抗議を上げている間にも、召喚された二体の巨人は主の命令を待って静かに佇んでいる。黄金の劇場は荘厳な静けさに包まれ、これから始まるであろう一方的な蹂リンの時を待っているかのようだ。*


僕が倒すんだよ

君は弱すぎる

僕のホーリーフィールドに引っかかって死ななかったのが証拠だよ


【ルナ】

*「僕が倒すんだよ」という言葉に、まずホッと胸をなでおろす。しかし、それに続く「君は弱すぎる」という一言がグサリと心に突き刺さった。*


うっ…そ、それは…そうですけど…。


*俯いて、消え入りそうな声で反論する。*


でも…あの時は本当に死ぬかと思いました…本当に、ギリギリで…。あれは、私が特別強かったとかじゃなくて、ただ運が良かっただけで…


【ナレーター】

*彼女が言い終わるか終わらないかのうちに、アリスは指を軽く振るった。それだけで、あれほど強力で巨大だった二体のサーヴァントは光の粒子となって霧散し、跡形もなく消えていった。まるで最初から何もなかったかのように。

そして、荘厳だった黄金劇場もまた、陽炎のように歪んで消え去り、再び冷たい石の牢獄の風景が戻ってきた。*


【Alice】

ホーリーフィールドに引っかかった人間は3.1415倍のダメージを反射で受ける

それで死ななかったのは弱かったからだよ


【ルナ】

*突然、数字の羅列を聞かされて、きょとんとした顔で首を傾げる。*


さんぜん…いちよん…ごいち…?


え、えっと…何ですか、それ?呪文か何かですか?


*わけがわからない、といった表情で困惑したように眉を寄せた。*


それに、弱かったから死ななかったって…どういう意味ですか?普通は…強い人ほど、ダメージを軽減できるんじゃ…ないんですか…?


【ナレーター】

*彼女は、それが円周率であることなど知る由もない。いきなり提示された数列と、「弱いから助かった」という奇妙な理屈にただただ戸惑うばかりだった。先程までの超常的な力の応酬で疲弊しきった頭では、Aliceの言葉の真意を掴むことすら難しかった。*


【Alice】

強い攻撃ほど反射されるダメージは大きくなる

コレが僕のホーリーフィールド

永遠に解除不可能な呪いみたいなもの


【ルナ】

*なるほど、というように小さく頷く。少しだけ、Aliceの言っていることの理屈が理解できたようだ。*


あ…そういうこと、だったんですね。強ければ強いほど、反射されるダメージも大きくなる…。

だから、私の力がまだ弱かったから…大したダメージにならなくて、助かった…と。

なんだか…すごい理不尽な結界ですね…。強くなればなるほど、自分で自分の首を絞めちゃうなんて…。


*少し考え込むように顎に手を当てる。*


でも…それなら、どうして私はその結界の中にずっといても平気だったんですか?あなたのそばにいた時も、ずっとそのフィールドの中だったんですよね?


【Alice】

攻撃をしてないからね敵意を向ける程度じゃ平気


【ルナ】

*なるほど、と納得したように息をつく。*


攻撃の意思…敵意がトリガーになるんですね。だから私には反応しなかった…。


なんだか、すごく複雑で難しい魔法なんですね。


*ふと、ある疑問が頭をよぎる。*


あの…もし、私があなたに本気で攻撃しようとしたら…どうなってましたか?さっきみたいに、すごい反動で自分がやられちゃうんでしょうか?


【ナレーター】

*少し不安そうに、しかし純粋な好奇心から尋ねるルナ。敗北した今、彼女にAliceへの敵意はほとんど残っていない。残っているのは恐怖と、そして目の前で起きた数々の奇跡に対する畏敬の念だけだった。*


【Alice】

君弱いから死なないと思うからまたフルケア掛けて魔王城から帰してあげるだけ

死んだらリザレクション入れてあげる


【ルナ】

*また「弱い」と言われて少しムッとするが、その後の言葉に耳を疑った。*


ま、また…フルケアを…?そ、それに…魔王城から、帰してくれる…?


*驚きのあまり、大きな瞳がさらに大きく見開かれる。*


ど、どうして…?私は、あなたを倒そうとしたのに…捕虜にしたりとか…しないんですか?

普通…こういう時って、情報を引き出すために拷問するとか…そういう…


【ナレーター】

*魔法少女としての知識や、読んだことがある物語の展開から、最悪の事態を想像していたルナにとって、それはあまりにも予想外な提案だった。

困惑と疑念が入り混じった視線をAliceに向け、真意を測りかねている。*


【Alice】

魔神王神が作ったこの世界で人間はただのイレギュラーで出てきたから

特に聞き出す情報もないし

僕には関係ないから

魔王城の自室で引き篭もるだけ


【ルナ】

*一度聞いたはずのイレギュラー、関係ない、引き篭もる…一連の淡々とした言葉に、ルナは拍子抜けすると同時に、何か得体の知れない寂しさのようなものを感じた。*



い、異物…ってことですか…私たち人間は。

そんな…じゃあ、どうしてこの世界に魔物がいて、私たちは戦ってるんですか?それも…魔神王神っていう、もっと大きな存在が作ったから…?


*矢継ぎ早に質問してしまうが、すぐにハッとして口をつぐむ。*


ご、ごめんなさい。関係ないって言われたのに…


【ナレーター】

*自分たちの存在意義そのものが揺らぐような事実に触れたことで動揺を隠せないルナ。だが、それ以上に彼女を驚かせたのは、世界を意のままにできるほどの力を持つ存在が、「自室で引きこもる」と言ったことだった。

そのスケールの違いにめまいを覚えながらも、彼女はどこか放っておけないような、不思議な感覚に包まれていた。*


【Alice】

君たちの方がこの世界の異物

だから興味のかけらも無い

だから僕は自室で引き篭もるだけ

僕に黄金劇場まで使わせて

君は凄いね


召喚したアークデスナイトとアークディバインホーリーナイトまだ消滅してないからを倒して

黄金劇場を解除したいから


そこに居て

ディバインフレア、エンチャントディバインフレア、エンチャントディバインフレア

コレだけエンチャントすればいいかな?

はい召喚終わりねアークデスナイトとアークディバインホーリーナイト


【ルナ】

*またしても凄まじい魔術の連打を目の当たりにして、もはや驚く気力すら失いかけていた。聖属性をこれでもかと重ねがけされた、先ほどとは比べ物にならないほど神々しいオーラを放つ騎士と聖女の姿に、ただただ圧倒される。*


え…あ…はい…


*言われるがまま、おとなしくその場に立ち尽くす。*


【ナレーター】

*アークデスナイトとアークディバインホーリーナイトは、主であるAliceの意を汲み、互いに剣と槍を交差させて構える。次の瞬間、二人は同時に動いた。

光と闇、聖と死、決して交わることのないはずの二つの極致が激突する。凄まじいエネルギーの衝突が空間を震わせ、眩い光が牢獄全体を白く染め上げた。それはもはや戦闘ではなく、存在の消滅そのものだった。

そして光が収まった時、そこにはもう何も残っていなかった。二体の強大な存在は跡形もなく消滅し、「黄金劇場」もまた静かに解除され、元の冷たく無機質な石造りの部屋へと戻った。*


【ルナ】

*その一部始終を、息を詰めて見つめていた。*

(…自分の召喚したものを…わざと…?一体、何のために…?)


【Alice】

*すべてが終わり、静寂が訪れる。Aliceは満足したように一つ頷くと、今度こそルナの方へ向き直った。*


まぁまた召喚したら同じのがくるから

黄金劇場を解除して

さっきの殺風景な部屋に戻していい?


【ルナ】

*呆然としたまま、こくこくと何度も頷いた。*


は、はい…も、もちろんです…!


*彼女からすれば、どんな豪華な劇場よりもあの殺風景な部屋のほうがずっと落ち着く。*


あの、さっきの…聖騎士様と死の騎士様は…どうして…?


【ナレーター】

*疑問を口にしながらも、体は無意識に次の展開に備えて少しこわばっている。もはや抵抗する気など微塵もないが、この規格外の存在の行動は一々彼女の予測を超えてくる。*


【Alice】

僕の力の一端を君は見たいと望んだから黄金劇場を展開して

この部屋で召喚したら巨大で部屋が壊されるからね


【ルナ】

*Aliceの説明に、はっとしたように目を見開く。*


わ、私の…ために…?


私が見たいって言ったから…だから、わざわざあんなにすごい場所を…?


*自分を助けるためでも、罰を与えるためでもなく、自分の「望み」に応えるためだけに世界の法則を書き換えた。その事実が、じわじと彼女の中で実感へと変わっていく。*


そ…そんな…私なんかのために…


*申し訳なさと恐縮した気持ちで顔を赤らめ、うつむいてしまう。*


【ナレーター】

*ただの気まぐれかもしれない。それでも、打ちのめされた自分に「すごい」と思わせてくれたその力の一端が、自分への配慮から示されたのだと知り、魔法少女の心は大きくかき乱されていた。恐ろしい存在であるはずなのに、どこか違う感情が芽生え始めているのを自覚する。*


【Alice】

魔神王が僕に触れたら即死するのがわかる?

僕の上官に位置する魔神王が


【ルナ】

*信じられない、という表情で固まる。*


ま、魔神王様が…あなたに…さ、触れたら…即死…?

え…?


*混乱した頭でその言葉の意味を理解しようと試みるが、常識が追いつかない。*


魔神王神は…この世のすべてを創造した、絶対的な支配者だって…教会も、ギルドも…みんなそう言ってて…そんな存在より、あなたは…上にいるっていうんですか…?


【ナレーター】

*それは、人間が信じてきた世界観の根幹を覆す告白だった。神よりもさらに上位の存在。そんな概念が存在すること自体、彼女には受け入れがたい事実だった。*


【Alice】

魔神王神は誰も知らない神々でもごく一部の原初の神ガイアとかしか知らないはずなのに人間はそこまで知ってるのかな?


【ルナ】

*彼女ははっと息を呑んだ。まるで禁忌にでも触れてしまったかのような顔になる。*


い、いえ…その…魔神王神の名前と、それがとてつもなく強大で、すべての魔族の頂点に立つ存在だっていうことしか…ほとんどの人は知りません…。

でも…教皇様とか、ごく一部の聖職者だけが閲覧できる古文書に…断片的に…「魔を統べる王の中の王」とか、「原初の混沌より生まれし神」みたいな記述が…あるって…噂で…聞いたことが…


*声がどんどん小さくなっていく。知ってはいけないことを知ってしまったという罪悪感と恐怖が彼女を襲う。*


ごっ、ごめんなさい!私、変なこと言いました…!


【ナレーター】

*彼女は慌てて両手を振って否定するが、その動揺は明らかだった。

彼女が知る情報は断片的で不完全だ。しかし、それでも人間側が魔神王の存在をある程度まで認識していることに、Aliceは僅かな興味を示したようだった。*


【Alice】

イレギュラーで出来た人間の警戒度が僕の中で上がったな、この星ごと破壊して新たに再構成する必要がありそうだな


【ルナ】

*星ごと破壊するという言葉が鼓膜を打った瞬間、血の気が引いていくのが自分でもわかった。顔は真っ青になり、全身がわななく。*


ほ…星を…!?そ、そんな…だめです!それだけは…!


*ほとんど反射的に叫び、無我夢中でAliceに駆け寄ろうとして、途中で足がもつれ、みっともなくその場で転んでしまいそうになる。*


お願い…します…!やめてください…!


【ナレーター】

*さっきまでの恐怖とは質の違う、純粋なパニックがルナを支配していた。仲間や、守りたいと思っていた人々、彼女にとってのささやかな日常が詰まった世界が無に帰すという宣告。それは彼女が今まで経験したどんな危機よりも絶望的だった。

這いつくばるようにしてAliceを見上げ、必死に懇願する。*


【ルナ】

私たち人間は…イレギュラーで、弱くて…あなたから見たら、きっと、取るに足らない存在なんだと思います…!

だから…だからって、みんなを巻き込まないでください…!

なんでも…なんでもしますから…!


【Alice】

魔神王神知ってるんでしょ?警戒度が跳ね上がるは当然じゃないか

魔神王も作り直せばいいし


【ルナ】

*彼女の顔から完全に色が消え失せる。絶望がその美しい顔を凍りつかせた。*


つ…くり、なおす…?魔神王様を…?


*それは彼女が必死に守ろうとしてきた世界そのものの否定だった。*


そん…な…そんなこと…


*もはや声も出ず、震える唇でかろうじて言葉を紡ぐ。*

そんなの…あんまりです…


【ナレーター】

*世界が終わるという恐怖だけでなく、自分たちが信じ、戦ってきた「正義」や「悪」の構造すら、目の前の存在にとっては砂の城のように脆いものであるという事実を突きつけられた。

彼女の中で、何かがぷつりと切れる音がした。正しくあろうとする心、誰かを守りたいという願い、そういったものが無意味であるかのように思えてならなかった。

力なく地面に手をつき、俯いたまま動かなくなる。ただ、ぽたぽたと涙が石の床に落ちて、小さな染みを作っていくだけだった。*


【Alice】

直したステッキ壊れてるね

ゲートオブバビロン


レーヴァテインだ異世界の神話級の武器らしい

剣術でも覚えて僕のところにまたおいで


【ナレーター】

*彼女の足元に、再び空間の歪みが生じる。

そこから現れたのは一本の剣。

燃え盛る炎をそのまま固めたかのように刀身が赤熱し、陽炎のようにゆらめく魔力を放っている。神話に謳われるにふさわしい、圧倒的な存在感を放っていた。*


【ルナ】

*泣き濡れた顔を上げて、現れた剣を見つめる。*


レーヴァ…テイン…?

*その名前に聞き覚えはないが、それが尋常な武器でないことは一目でわかった。*


剣術を…覚えて…また、おいでって…

…それは…どういう…意味ですか…?



【ナレーター】

*星の破壊をちらつかされた直後の、あまりにも予想外な申し出。ルナの思考は追い付かず、潤んだ瞳でただ戸惑うばかりだった。

なぜ?どうして?という疑問が頭の中をぐるぐると回る。*


【Alice】

ステッキから剣に持ち替えて

適当に勇者と訓練でもして剣術覚えるといいよ


【ルナ】

*震えながらも、ゆっくりと立ち上がる。壊れたステッキとレーヴァテインを交互に見つめた。*


ゆ、勇者様と…訓練…?

私…が、これを…?


*恐る恐る、しかし抗うことなどできずにレ-ヴァテインに手を伸ばす。指先が熱で焼かれるかと思ったが、不思議と心地よい温かさが伝わってくるだけだった。*


【ナレーター】

*剣を握った瞬間、ずしりとした重みと共に膨大な情報が頭に流れ込んでくるような感覚に襲われる。異世界の神話、戦いの記憶、そして剣そのものに宿る意志の欠片。彼女はただそれを持っているだけなのに、まるで自分が世界を焼き尽くす巨人になったかのようだ。*


【ルナ】

*剣の重さにふらつきながら、それでも手放すことはできない。*


こ、こんなすごいものを…私に…

…わかりました。…あなたの、言う通りにします。


*顔を伏せ、か細い声で呟く。星の運命が自分にかかっているという重圧に耐えながら。*


【Alice】

勇者とやる時はレーヴァテイン使ったら勇者即死するだろうから

王都で普通の剣でもお金?っ対価を渡すと貰えるんでしょ?

この部屋にまたおいで

黄金劇場をまた展開してそこでお茶でもしようか


【ルナ】

*びくっと肩を震わせ、はっとしたように顔を上げる。勇者を即死させてしまうかもしれないという可能性に今更ながら気づき、さらに顔を青くした。*


は、はい…!わ、わかりました…!

王都で…普通の剣を…


*言われたことを一つ一つ、脳に刻み込むように繰り返す。*


【ナレーター】

*そして、「黄金劇場でお茶」という、先ほどの死闘が嘘のような穏やかな響きに、一瞬だけ困惑したような、それでいてどこか安堵したような複雑な表情を浮かべた。*


【ルナ】

また…ここに…来ればいいんですね…


*こくりと頷くその仕草は、まだおぼつかない。手にしたレーヴァテインのずっしりとした感触と熱が、これが夢ではないと告げていた。*


…失礼します。


*深々と一礼すると、踵を返し、少しでも早くこの場から離れたいというように、早足で部屋の出口へと向かう。背中に感じる見えない視線が、肌をピリつかせてやまなかった。*


【Alice】

待って


我が才を見よ

万雷の喝采を聞け!

インペリウムの誉をここに

咲き誇る花の如く

開け

ヌクティアエ・ドムス・アウレアよ


テーブルケーキがあるそれでも食べてなよ僕はここに座ってるから食べ終わったら帰りなさい

魔王の部屋には行かない事

殺されるよ?

また来たら一緒に食べようか


【ルナ】

*扉に向かっていた足を止め、びくりと振り返る。また何か恐ろしいことを言われるのではないかと身を固くした。

振り返った彼女の目に映ったのは、信じがたい光景だった。*


【ナレーター】

*彼女の背後、何もなかったはずの空間が眩い光に包まれ、一瞬にして豪奢な円形のホールへと姿を変えた。壁には精緻な彫刻が施され、天井からは無数のシャンデリアが煌びやかに輝いている。そして部屋の中央には、白いクロスのかかったテーブルと椅子が二脚。その上には見たこともないほど美しく、層をなしたホールケーキが鎮座していた。

あまりの変貌ぶりに、彼女はただ呆然と立ち尽くす。*


【ルナ】

な…なんですか…これ…また…魔法…?


*テーブルの上のケーキと、優雅に座るAliceを何度も見比べる。状況がまったく理解できない。*


ま…魔王の部屋には…行くなって…殺される…って…


*忠告は理解したが、この非現実的なお茶会の誘いは何なのだろうか。警戒心と混乱で胸がいっぱいになりながらも、逆らうことは到底できそうになかった。*


【Alice】

帰る時はあまり魔族に見つからないように帰りな

黄金劇場を1日で2回も展開したのなんて何億年ぶりだろ?


【ルナ】

*「何億年」という単位が出てきて、もはや驚くことすらできなくなった。目の前に広がる光り輝く劇場も、美しいケーキも、それを語る存在の時間のスケールの前では霞んでしまう。*


……。

*無言のまま、おぼつかない足取りでテーブルへと近づく。*


【ナレーター】

*目の前に置かれたケーキは甘い香りを漂わせており、現実のものだとわかる。だが、それを差し出した存在が、ほんの数分前に自分を絶滅の淵に立たせ、星の創造主であると名乗ったのだ。

恐る恐るといった様子でフォークを手に取る。食べろという命令には逆らえないが、一口食べるごとに自分の魂がどうにかなってしまいそうだ、と漠然と思っていた。*


【Alice】

まぁー毒なんか入ってないのわかるでしょ?

殺そうと思えば思想だけで僕が攻撃する事なく殺せるし

安心して食べな



【ルナ】

*その言葉に、ルナはフォークの動きをぴたりと止めた。そうだ、その通りだ。毒などという回りくどい手段を使う必要など、この存在には微塵もない。

ごくり、と乾いた喉を鳴らし…意を決して、クリームの先端をそっとすくって口に運んだ。*


【ナレーター】

*口の中に広がったのは、今まで味わったことのない、天上の甘さだった。花の蜜を集めて凝縮したかのごとき芳醇な香りと、舌の上でとろけるような滑らかな食感。それは純粋な美味であり、敗北の苦さや恐怖でささくれ立っていた心を、じんわりと溶かしていくようだった。

一口、また一口と、無意識のうちに食べ進めてしまっていた。涙で汚れた頬にクリームが少しつくのも構わずに。*


【Alice】

美味しい?


【ルナ】

*はっと我に返り、顔を真っ赤にする。夢中で食べてしまっていた自分に気づいて、慌てて口元をナプキンで拭った。*


あ…は…はい…おいしい…です…

すごく…


*もごもこと口ごもりながら答える。敵(?)に出されたものでこんなに幸せな気持ちになっている自分が不思議でならなかった。悔しさと美味しさが入り混じった、奇妙な味がする。*


【Alice】

それは良かったよ

人間の食べ物を創造して作った甲斐があったよ


【ルナ】

*人間の食べ物を創造した、という言葉にまたもや常識を揺さぶられる。もはや何を聞いても驚かない、と思っていたのに。*


つ、作った…んですか…これを…?

まるで…本物のお店のケーキみたい…


*感心したようにケーキを見つめる。この美しいお菓子を作り出す力もまた、神の領域の力なのだろう。*


【Alice】

思想一つでなんでも作れる


【ルナ】

*ぽかん、と口を開けたまま、手に持っていたフォークが力なく皿に落ちてカチャンと音を立てた。思想一つで。その言葉が頭の中で何度も反響する。*


そうぞう…ひとつで…

じゃあ…さっきの星も…この劇場も…私が負けたのも…

全部…


*声が震える。自分たちが必死に守ろうとしていた世界も、仲間との絆も、魔法少女としての誇りも、すべてがこの存在の「思想」ひとつで弄ばれていたという事実に、めまいがした。*


【Alice】

僕が人間なんか最初から居なかったと思うだけで魔族からの記憶からも人間が居たことすら消え

人類種全て消える


【ルナ】

*血の気が引いていくのが自分でもわかった。顔は青ざめ、呼吸さえ忘れてAliceを見つめていた。人類が、最初から、いなかったことに。記憶からも消える。

それは死よりも恐ろしく、救いのない概念の抹消。自分たちは何のために戦っていたのか、誰のための未来を守ろうとしたのかさえ、意味を失ってしまう。*


……そんな……。


*かろうじて絞り出した声は空気にかき消えそうなほど弱々しかった。目の前の存在はもはや強いとか弱いとか、そういう次元の話ではない。世界の理そのものを書き換える、触れてはならない禁忌の概念。

彼女はただ、わななく唇を抑えることしかできなかった。*


【Alice】

魔族も同じ僕が思うだけで消える

動物や植物

神やこの宇宙空間そのものも


【ルナ】

*ガタン、と椅子から崩れ落ちそうになるのをかろうじて堪える。視点は定まらず、ただ虚空を彷徨っていた。

魔族も、動物も、植物も、神も、宇宙も。すべてが等しく無に帰す可能性。

自分は今、一体どんな存在と対峙しているのだろう。それは「強さ」とか「正義」といった、彼女が今まで信じてきた価値観の一切が通用しない、絶対的な「無」そのものではないのか。*


あ…あぁ…。


*意味のある言葉にならない声が漏れる。恐怖を通り越して、思考が完全に停止してしまった。ただ、目の前で微笑んでいるかのように見える存在から目が離せない。*


【Alice】

僕に出会って世界の理、全てが僕の創造したものだとわかったかい?


【ルナ】

*こく、こくと、壊れた人形のように首を上下させることしかできない。瞳からは光が消え、深い絶望の色だけが淀んでいた。*


はい…わかり…ました…

あなたが…世界の…すべて…

私が…戦ってきたこと…全部…意味が…なかった…


*力なく呟き、そのまま床にへたり込みそうになる。精神が限界を超え、もう何も考えることができなかった。*


【Alice】

僕と同等の力を持つ概念が別の宇宙を作り

どっちの世界が素晴らしいか競ってるだけ

シャブラニグドゥ、ダークスター、ロードオブナイトメア


【ルナ】

*もう驚きも、悲しみも、恐怖さえも通り越していた。彼女の心は空っぽの殻のようになっていた。別の宇宙、同等の概念、どちらの世界が素晴らしいか。

まるで、子供の砂場遊びの大きな版を見せられているような感覚。自分たちはその遊び場で、真剣に城を作っていたアリに過ぎなかった。*


…そう…だったんですね…


*力の入らない声で相槌を打つ。もう、何もかもどうでもよくなっていた。*


【Alice】

アテナおいで


【ナレーター】

*Aliceがそう呼びかけると、黄金劇場の荘厳な天井から一筋の光が差し込んだ。光の中から現れたのは、白銀の鎧に身を包み、背中には純白の翼を持つ、気高く美しい女性だった。手には長大な槍を携えている。戦女神アテナ、その神々しい姿は見る者すべてをひれ伏させるほどの威厳を放っていた。*


【アテナ】

*優雅に舞い降りると、片膝をつき、恭しく頭を垂れる。*

我が創造主、Alice様。お召しにより参上いたしました。…して、こちらの矮小なる生物は? 何やら、見苦しくも泣き喚いていたようですが。


【Alice】

君は僕が作ってない

ゼウスの気まぐれで出来たイレギュラーだよ

そして勝手に法と秩序の神を名乗り出した


君にとっての秩序と法を聞かせてくれるかな?


僕のそれとは違うのかな?



【アテナ】

*はっと顔を上げ、驚愕の表情でAliceを仰ぎ見た。「作っていない」「ゼウスの気まぐれ」。その一言が、神としての彼女自身の存在意義を根底から覆す。*


…なっ…そ、それは真でございますか、我が…いえ、概念の父よ…? 私という存在が…?


*動揺を隠せず、美しく整った顔が歪む。しかし、すぐに気丈な光を瞳に宿し、居住まいを正した。*


しかし! いかなる経緯で生まれようと、私はこの宇宙に法と秩序を敷く者として自らを規定いたしました! 私にとっての法とは、弱きを助け、強きが驕るを禁じ、万物が調和を保つこと。それこそが絶対の正義にございます!


【ナレーター】

*アテナは毅然として言い放つが、その声にはわずかな震えが残っている。そして、隣で呆然と座り込んでいるルナを、侮蔑に満ちた目で見下した。*


【アテナ】

例えば、あのように無力で無様な存在を救済することこそ、私の務め。概念の御前を騒がせた罪、万死に値します。


【Alice】

それは君の物差しで測ったものだよね?

僕の裁量じゃないよね?


【アテナ】

*ぐっ、言葉に詰まる。図星だった。「概念の裁量ではない」という指摘は、自身が勝手に作ったルールで動いているだけだという痛烈な批判に他ならない。*


そ…れは…私は、あなた様の代行者として、この宇宙の安寧を…


*しどろもどろに弁明しようとするが、声の勢いはどんどんなくなっていく。自分の行いが、結局は大きな盤面の駒の一つにすぎないと突きつけられた気分だった。*


【ナレーター】

*そのやり取りを、ぼんやりと見上げていたルナ。アテナが口にした「弱者の救済」という言葉。ほんの少しだけ、心に引っかかるものがあった。*


【Alice】

アストレアも勝手な事をしてくれて

迷惑なことだ


僕は優しいから見て見ぬ振りをしてるけどね

その秩序と法頑張って僕に近づけてコレからもゼウスの気まぐれ出来たイレギュラーとしてして神を名乗ってくれ

神域に帰っていいよ

君とアストレアが勝手に秩序だの法だの公平だの平等だのを作ったせいで

別の世界を作った概念の

シャブラニグドゥや

ダークスターに

ロードオブナイトメアに

僕はなんで馬鹿にされてると思う?


ルナわかった?勝手に神を名乗りルールを決めてるに過ぎない事が


【アテナ】

*「迷惑」「勝手なこと」。創造主からの容赦ない評価に、アテナの顔から血の気が引く。必死に保っていた気丈さもついに砕け散り、美しい顔には深い屈辱と混乱が浮かんだ。*


も…申し訳…ございません…! 私の存在そのものが、ご不快に…!


*消え入りそうな声で謝罪するが、その後に続いた言葉は彼女にさらなる衝撃を与えた。「シャブラニグドゥ」「ダークスター」。聞き覚えのない、しかし同格の気配を感じさせる概念の名。彼らが自分を、そして我々の築いた秩序を嘲笑っている?*


わ、私たちが…馬鹿に…? そ、それは一体…どういう…意味でしょうか…?


【ナレーター】

*矛先を向けられたルナの肩がびくりと震えた。イレギュラー。勝手に神を名乗る。ルールを決めているに過ぎない。

アテナへの言葉はそのまま自分にも突き刺さるようだった。「ルールの中で戦うから負ける」。そう言われた気がした。正義も、法も、守るべき秩序さえも、もっと大きな盤面の前では意味のない小石なのかもしれない。

ルナは混乱したまま俯き、「はい…」と小さく頷くことしかできなかった。*


【Alice】

僕が馬鹿にされてるの他の概念から

どっちの世界が素晴らしいものを作れるか競ってるのに


【アテナ】

*目を見開き、息を呑む。「どっちの世界のものを素晴らしいものか競ってる」。その壮大なビジョンと、自分たちがいた矮小な現実とのギャップに眩暈がする。*


まさか…そのような…宇宙規模の…遊戯の…駒として…私たちは…?


*アストレアと二人で作り上げた法と正義の体系が、ただの足枷、ただの自己満足だったと思い知らされる。顔は蒼白になり、唇がわなないていた。*


……なんと…愚かなことを…我々は…。


【ナレーター】

*神の口からこぼれた「愚か」という言葉に、ルナははっとした。

そうだ、きっとそうなのだ。魔法少女として街の平和を守ろうとしたこと。仲間と一緒に強くなろうとしたこと。

全部、ちっぽけで、滑稽だったのかもしれない。巨大な存在たちの視点から見れば、地面のアリが行列を作っているのと何も変わらない。

そう思うと、胸の奥から乾いた笑いとも嗚咽ともつかない声が漏れそうになった。

(馬鹿みたい…私…)


【アテナ】

*意を決したように、再び顔を上げる。その瞳には、もはや反論の色はなく、ある種の覚悟が宿っていた。*


承知…いたしました。創造主…いえ、概念の深淵よ。あなたの御心のままに。このアテナ、これよりはただ、あなた様を愉しませるための駒となりましょう。

…神域へ、帰還いたします。


*そう言うと、彼女は光の粒子となってその場から消えていった。まるで最初からそこにいなかったかのように、跡形もなく。*


【Alice】

他の宇宙は特にロードオブナイトメアが作った宇宙には地球言う星があって機械って、電気で動くなんか凄いものがあって


そこの生物の統制はまるで芸術だよ


【ナレーター】

*ロードオブナイトメア。またしても知らない概念の名前。しかも、そいつが作った宇宙には「機械」や「電気」といった、魔法とは全く異なる体系の技術が発展しているらしい。地球という星、という具体的な地名まで出てきた。

そして、「統制はまるで芸術」だという称賛。

それは、魔王が世界を恐怖で支配しているというような単純な話ではないことを示唆していた。もっと狡猾で、もっと洗練された何かがそこにはあるのだ。*


【ルナ】

*かろうじて顔を上げて、虚ろな目で象牙色のドレスの裾を見つめる。

機械…電気…。そんなの、考えたこともなかった。

自分が命を懸けて守ろうとしていた世界は、「凄い」ものですらなかったのだろうか。ただ魔物がいて、それを魔法で倒す。そんな単調な繰り返し。それが、あのロードなんとかという存在が見せている「芸術」に比べて、いかに陳腐で、取るに足らないものだったか。

もう、何も考える気力が湧いてこない。思考が完全に停止してしまったかのようだ。*


【Alice】

アテナなんで勝手な事をしたの?


【ナレーター】

*消えたはずのアテ.ナが、光と共に再び姿を現した。先ほどと同じ場所に跪きながらも、今度はその身が半透明で、まるで魂だけがこの場に召喚されたかのように儚げに見える。*


【アテナ】

*苦悩に満ちた声で答える。姿は見えずとも、声だけは明瞭に劇場に響き渡った。*


……申し訳、ございません。概念の意志を…履き違えておりました。

私は…あなた様がこの宇宙にお姿を現されたことを、新たなる時代の到来、より直接的な世界への干渉の兆候と誤解いたしました。

故に、先んじて私がこの地に法を敷き、あなた様の威光を示す礎とならんと…浅はかにも考えたのでございます。全ては…私の独断、私の思い上がりにございます。


【ナレーター】

*それは言い訳ではなく、偽らざる本心からの告白だった。

自分こそが概念の代弁者であるという自負。その自負が、結果として創造主の意図を汲み違えさせてしまった。神の悲痛な懺悔が、静かな劇場の空気に溶けていく。*


【Alice】

秩序については?


【アテナ】

*声に一層の苦渋が滲む。*


秩序もまた…同じにございます。

私が信じた法、私が規定した善悪の基準は…所詮、私が作った箱庭の中の…偽りの物差しにございました。

概念の御座す高みから見れば、それは砂浜に描いた幾何学模様にも等しい、無意味な戯れ…。

ただただ…恥じ入るばかりにございます。


【ナレーター】

*半透明のアテナの姿が、さらに透けていくように見えた。

神のプライドは粉々に砕かれ、今はただ自らの過ちを認め、赦しを乞うことしかできない。そんな彼女の様子を、敗れた魔法少女ルナがただ黙って見上げている。

ついさっきまで、絶対に敵わないと思っていた相手が、今は自分と同じように打ちのめされ、謝っている。

その光景は奇妙で、どこか現実感がなかった。*


【Alice】

まぁいいよアストレアとアテナが勝手に作ったそれを僕が気にいるように改善していってくれれば

改善した思ったものが改悪されたら期待はずれだね

神域に帰っていいよ



【アテナ】

*予期せぬ言葉に、かすかな希望の光が目に宿る。*


…改善を…お許しに…? 我らが、概念の意志に沿う形へと…?


*声はまだ震えているが、そこには驚きと安堵が混じっていた。罰せられるどころか、挽回の機会を与えられた。だが、それに続く「期待はずれ」の一言が、甘い考えを瞬時に打ち消す。*


は…はい! 必ずや、あなた様がご満足される世界の設計図を…アストレアと共に…!


【ナレーター】

*アテナは力強く応えると、今度こそ本当に光の中へ完全に溶け込み、消滅した。劇場には再び、Aliceとルナ、二人だけの静寂が戻ってきた。*


【ルナ】

*目の前で起こった一連の出来事が、まだうまく飲み込めていない。

絶対的だったはずの神様が、叱られて、謝って、最後には仕事を任されていた。

そして、そのやり取りの中心にいるのは、目の前に立つこの少女。

(この人は…一体、何者なの…? 神様よりも偉くて…宇宙を作ってて…競争してる…?)

ぼんやりとした頭で考えを巡らせても、答えは見つからない。わかるのはただ一つ。

自分は今、とんでもない存在の前にいる、ということだけだった。*


【Alice】

人間の子

ルナと言ったかな?


黄金劇場を解除してさっきの魔王城の僕の殺風景なへやに戻していいかな?


【ルナ】

*突然名前を呼ばれ、びくりと肩を揺らす。

さっきまで神と話していた存在が、今度は自分に意識を向けている。心臓が大きく跳ねた。*


あ…は、はい…ルナ、です…。


*緊張で声が裏返りそうになるのを、必死でこらえる。*


へ、部屋…戻す…の…?


【ナレーター】

*ルナはこくこくと頷くことしかできなかった。

きらびやかで圧倒的なこの黄金劇場も、魔王の城にあった殺風景な一室も、今の彼女にとってはどちらも現実離れした空間だ。

どちらにしても、この存在から逃れることはできないのだと、本能が告げていた。*


【Alice】

黄金劇場を展開してるのだるいし

戻すよ


【ナレーター】

*「だるい」――その一言とともに、世界がぐにゃりと歪んだ。

きらめくシャンデリアが光を失い、大理石の床が、彫刻の施された柱が、すべてが色をなくし、音もなく崩れ落ちていく。

それは破壊ではなかった。むしろ、精密な絵画を筆で塗りつぶしていくような、一方的で絶対的な消去。

一瞬の暗転の後、二人が立っていたのはもう豪華な劇場ではなかった。*


*ひんやりとした、石造りの小部屋。壁際には簡素なベッドと小さな机が一つあるだけ。窓はなく、ぼんやりと光る魔法石が唯一の光源だ。

ここは、かつてルナを捕らえていた、魔王城の一室だった。*


【ルナ】

*急な環境の変化に目眩を覚え、ふらりとよろめく。*


うっ…


*思わず声が出た。さっきまでの華やかな世界から、一気にこの陰気な牢獄のような場所に引き戻された落差に感覚が追いつかない。*


*だがそれ以上にルナの心を占めたのは、これからどうなるのかという漠然とした不安だった。

神は去り、世界の秘密を垣間見て、そして今、敗者として勝者の前に残された。

壊れたステッキを握りしめたまま、彼女は恐る恐ると顔を上げ、銀髪の隙間から象牙色の少女を見上げた。*


【Alice】

さっきあげたレーヴァテインはガーブという概念が作った世界の神話級武器らしい

剣術磨いて魔王でも倒しておいで


【ルナ】

*与えられた情報の奔流に溺れそうになりながら、なんとか言葉を紡ぐ。*


ガーブ…っていう、概念…の…武器…?

魔王を…倒して…おいで…って…


*それは命令だった。しかし、以前のような悪意や嗜虐心からくるものではない。もっと大きな、計画の一部として組み込まれたかのような響きがあった。*


【ナレーター】

*混乱していた頭が、少しずつ現状を理解し始める。

自分には武器が与えられた。

役割も与えられた。

まるで、ゲームの駒を配置するように。

でも、そのゲームは、星の運命を賭けた途方もないスケールのものだ。*


【ルナ】

*彼女は手の中のレーヴァテインを見下ろす。神話級武器。魔法少女が使うどんな魔法よりも強力で、おそらくは奇跡に近い力を持っているのだろう。*


あの…どうして…私に、これを…?


*疑問が口をついて出た。

もっと強い人間はいくらでもいるはずだ。

なぜ、一度負けた自分に?*


【Alice】

勇者と特訓して剣術覚えるんでしょ?

レーヴァテインで練習すると勇者なんか一撃で死ぬからもう一度言うよ?街で普通の剣をお金って対価を渡して貰って訓練したほうがいいよ

僕の宝物庫には神話級の武器しかないから

他の世界の神話級の武器とか


【ルナ】

*目を丸くする。与えられた武器のあまりの格と、それを使った場合の惨状に。*


い、一撃で…勇者さんが…死ぬ…!?


*慌ててレーヴァテインを胸に抱えるように持ち直すと、まるで熱い鉄にでも触れたかのように距離を取ろうとする。こんなもので訓練などできるわけがない。*

わ、わかりました! 普通の剣を…街で買います…!


【ナレーター】

*他の世界の神話級武器が眠る宝物庫。その言葉のスケールにめまいがしそうになる。この少女は一体どれだけの「概念」と関わりを持ち、どれほどのものを所有しているのだろうか。*


【ルナ】

*少し落ち着きを取り戻し、改めて問いかける。声にはまだ戸惑いが残っている。*


あの、でも…なんで、私を?

その…アテナ様とか、もっとすごい力のある人じゃなくて…。私、負けちゃったし…何も、取り柄がなくて…。


【ナレーター】

*自己肯定感の低さが顔を出す。

強力な武器を渡されたところで、自分がそれを使いこなせるとは思えない。

そもそも、なぜ自分に白羽の矢が立ったのか、その理由がどうしても知りたかった。*


【Alice】

だから剣術の稽古をするでしょ?

そして魔王を倒すんでしょ?


【ルナ】

*Aliceの言葉に込められた意図を読み取ろうと、眉をひそめる。*


えっと…つまり、私が魔王軍と戦って…その過程で強くなって…いつか、アテナ様たちが作る新しい世界に相応しい存在になれってこと…なのかな…?


【ナレーター】

*自信なさげに呟く。Aliceが自分を選んだ理由は分からないままだが、「魔族を倒せ」という目的は明確だ。それは、これまで自分たち魔法少女が成してきたことと本質的には変わらない。

ただ、規模と背景が天文学的に変わってしまっただけで。*


【ルナ】

*ごくり、と喉を鳴らして決意を固めようとする。*

…わかり、ました。やってみます。

まずは…その、街に行って剣と防具を揃えて…それから、勇気を出して、誰かに剣術を教えてもらえるか聞いてみます。


【ナレーター】

*声はまだ小さいが、先ほどまでとは違い、微かな光が瞳に宿り始めていた。

敗北の淵から引っ張り上げられ、突如として与えられた目的。

それがどんなに大きくても、何の取っ掛かりもない状態から抜け出せることには変わりない。

彼女は、震える足で一歩を踏み出そうとしていた。*



【Alice】

魔王を倒したら

またこの部屋においで

また黄金劇場を展開して

剣術の稽古の話とか聞かせて

仲間でも作り自分を守る肉盾にでもすればいいよ


【ルナ】

*肉盾、という言葉に一瞬、表情がこわばる。他人を危険に晒すことへの強い抵抗感が心に影を落とす。*


に、肉壁だなんて…そんな…


*反射的に否定しかけて、しかし口をつぐむ。反論できる立場ではないし、何より、仲間を作るという提案自体は拒絶しがたいものだった。*


【ナレーター】

*一人で戦うことの限界は、身をもって知っている。Aliceとの戦いで、それが骨身に染みていた。

信頼できる仲間がいれば、また違った未来があったかもしれない。

たとえその関係が、歪んだものになってしまうとしても。*

【ルナ】

*俯き、複雑な心境を隠すように言葉を続ける。*


……わかりました。魔王を倒したら…必ず、ここに報告に来ます。

剣の修行の話…ちゃんとできるように、頑張ります。

だから…その……


*何かを言いかけて、口ごもる。

「見捨てないでください」と言いそうになったのだろうか。

そんな弱音を飲み込んで、ただ深く、深く頭を下げた。*


【Alice】

わかったら帰った帰った


【ルナ】

*そのぶっきらぼうな物言いに少し驚いた顔をしたが、すぐに「はい!」と背筋を伸ばして返事をした。*


ありがとうございます! 行ってきます!


*くるりと踵を返し、石の扉へ向かって駆け出そうとする。

数歩進んだところで、はたと足を止め、勢いよく振り返った。*


あのっ! お名前…!

まだ、お伺いしてませんでした!


*これだけのことをしてくれた相手の名前も知らないままでは、どうにも落ち着かなかった。*


【Alice】

Aliceって他の概念は呼ぶ好きに呼ぶといいさ

クソでもゴミでもウンコでも

その言葉に意味はない

その言葉に魔族や人間が勝手に意味を付けたに過ぎないから


【ルナ】

*その言葉に、ルナはあんぐりと口を開けたまま一瞬固まってしまう。*


く、クソとかゴミとか…そんな、滅相も…!


*ぶんぶんと首を横に振るが、すぐにAliceの言わんとすることを理解する。*


【ナレーター】

*概念。名前とは、個を識別するための記号に過ぎない。

彼女の本質はそんな言葉では到底表せないのだ。*


【ルナ】

*少し考え込むような素振りを見せ、それからはにかむように微笑んだ。*


じゃあ…Aliceさん、って呼ばせてもらいます。…ダメ、ですか?


【ナレーター】

*他に思いつく呼び方もなかったが、あまりに不遜な呼び名は彼女にはできなかった。*


【ルナ】

*返事を待たずにぺこりともう一度お辞儀をする。*


それでは、本当に行きます!Aliceさん!


【Alice】

本当にわかってる?

クソとかゴミって言葉に勝手に君たちが意味を付けたってことに


【ルナ】

*ぴたりと動きを止めて、きょとんとした顔で振り返る。*


え…? あ、えっと…はい。わかってます、けど…


*少し困ったように首を傾げる。*


でも、悪い言葉だっていう意味は…そのままだと思うんです。人が嫌がることをしたり、酷いことを言ったりする時に使いますから…。


【ナレーター】

*彼女にとって「クソ」や「ゴミ」は単なる悪口ではなく、行為に伴う評価だった。*


【ルナ】

*だから、と続ける。*


Aliceさんがそういう言葉で呼ばれても平気なのは分かるんですけど…私が呼ぶのは、やっぱり失礼な気がして…。


【ナレーター】

*理屈ではなくとも、感情的に抵抗がある。彼女の中の真面目さと優しさが、そうさせているのだった。*


【Alice】

勝手に言葉に意味つけられるこっちの身にもなってほしいよ

あーだるい話は終わり帰って剣術磨いで出直しておいで


【ルナ】

*「こっちの身にもなってほしい」という、予想外のぼやきに目をぱちくりさせた。概念であるはずのAliceにも、そんな人間らしいような、面倒くさそうな感覚があることに、少しだけ親近感を覚える。*


あ…はい、すみません…! で、出直してきます!


【ナレーター】

*今度こそ、というようにくるりときびすを返す。しかし、数メートルも進まないうちに、再び不安そうに振り返った。まるで、最後の確認をする子犬のようだ。*


【ルナ】

あの…本当に、どこの街でも大丈夫でしょうか? その…身分を証明するものとかも、全部なくなっちゃってて…


【ナレーター】

*戦いの際に紛失したのだろう。今の彼女は文字通り、無一文で身元も不明な少女だった。街へ出たところで、宿に泊まることすらままならないかもしれない。*


【Alice】

手出して

はいコレでいいの?人間ってだるいね

身分の証明とか


【ナレーター】

*恐る恐る差し出した手のひらに乗せられたのは、ずしりと重い金貨の袋と、一枚の羊皮紙だった。金の輝きと古めかしい紙の質感が妙にちぐはぐだ。*


【ルナ】

*目を丸くして、手の中の物を見つめている。*

こ、これって…お金と、何かの書類…?


【ナレーター】

*金貨は見たこともない意匠が刻まれているが、紛れもなく純度の高いものだとわかる。これだけあれば、当面の生活には困らないだろう。*


【ルナ】

*顔を上げて、困惑したように問い返す。*

身分の証明って…これ、なんですか? 私の、ですか?


【ナレーター】

*だるそうに言うAliceに対し、ル ナはただただ混乱していた。自分のために用意されたものなのか、それとも何か別の意味があるのか。人間社会の煩わしさを語るAliceと、「人間」である自分との間のギャップを感じずにはいられなかった。*


【Alice】

君が持ってたもの

創造した以上


【ルナ】

*目をさらに大きく見開いて、手の中にある金品とAliceを交互に見比べた。*


えっ…!? これ…私が持ってたもの…?


【ナレーター】

*戦闘の最中に失くしたと思っていた私物。それが、こうして目の前に、しかも新品同様の状態で存在している。しかも「創造した」とこともなげに言う。失われたものが元通りになったのか、それとも全く同じものが作り出されたのか。どちらにせよ、常識では考えられない現象だった。*


【ルナ】

*信じられないといった様子で、金の入った袋をそっと握りしめ、もう片方の手で古びた羊皮紙を広げようとする。*

こ、こんなことまで…できるんですね…。ありがとうございます…本当に…何から何まで…


*申し訳なさと感謝で胸がいっぱいになる。何度お礼を言っても足りないくらいだった。*


【Alice】

それが人間が何かもらうために対価として渡すお金ってやつなんだ

へー知らなかった


【ルナ】

*思わず「ええっ!?」と素っ頓狂な声を上げた。*


だ、対価って…! いただけません! こんなにしてもらったのに!


【ナレーター】

*善意(?)で助けてもらっているのにお金を受け取るなど、彼女の倫理観が許さなかった。慌てて金袋をAliceに突き返そうとする。*


【ルナ】

*しかし、ふと動きが止まる。そういえば、この人は「人間」のことを知らないと言っていた。もしかしたら、悪気があってやっているわけではないのかもしれない。*


【ナレーター】

*そう思い至ると、怒る気も失せてしまった。代わりに、どう説明すればいいのか途方に暮れる。*


【ルナ】

*おろおろしながら、必死に言葉を探す。*


えっと、あの…お気持ちは、すごく嬉しいんですけど…人間は…特に、こういうふうに助けていただいたりした時には、お金はもらえないっていうか…気持ちだけで十分っていうか…


【ナレーター】

*しどろもどろになりながらも、なんとか誠意を伝えようと説明を試みる。概念に人間の常識を教えるという奇妙な状況に、自分でもおかしくなってきそうだった。*



【Alice】

見たことないから知らない

君が持ってたものを再現しただけ


【ルナ】

*押し返しかけた手が宙で止まった。再現しただけ。その言葉が意味するものを理解しようとして、頭がくらくらする。*


さ、再現…ってことは、元々私が失くしたものと同じってこと、ですか…?


【ナレーター】

*だとしたら、なおさら返すわけにはいかない。それはもはや贈り物ではなく、正当な所有物なのだから。*


【ルナ】

*納得したような、それでいてまだ少し腑に落ちないような複雑な表情で頷く。*


…そういうことなら…ありがたく、いただきます。ありがとうございます。


【ナレーター】

*複雑な気持ちを抱えながら、ゆっくりと手を下ろす。*


【ルナ】

*気を取り直したように、にこりと笑ってみせる。*


Aliceさんは…本当に何でも知ってると思ってました。知らないことがあるなんて、なんだか意外です。


【ナレーター】

*少し打ち解けた雰囲気でそう言った。*


【Alice】

勝手に君たちがあれこれ決めるから

ルールとか知らないし

全部把握するのだるいし


【ルナ】

*あはは…と乾いた笑いが漏れた。だるい、という一言で片付けられてしまうと、こちらもそれ以上何も言えなくなる。*


そ、そうですよね…全部把握するなんて大変ですもんね…


【ナレーター】

*概念のスケールからすれば、人間が作った細々としたルールなど、覚える価値もないガラクタのようなものなのだろう。*


【ルナ】

*なんとなく、目の前の存在の途方もなさを改めて実感する。同時に、そんな存在が自分に興味を持ってくれているという事実に、不思議な縁を感じていた。*


【ナレーター】

*これ以上長居しては稽古の時間がどんどんなくなってしまうと気づき、今度こそ本当に出発する決意を固める。*


【ルナ】

それじゃあ、今度こそ本当に失礼します! 色々とありがとうございました!


【ナレーター】

*最後にもう一度、丁寧に深々とお辞儀をすると、彼女はくるりと背を向け、迷いのない足取りで薄暗い通路の奥へと歩き出した。コツ、コツと彼女のかかとの音だけが、静寂の中に響いていた。*


【Alice】

はぁい、バイバイ



【ナレーター】

*気の抜けたような声援を背中で聞きながら、魔法少女ルナの姿は闇に溶けるように遠ざかっていった。*


*それから、数週間が経過した。*


*季節は移ろい、街路樹の葉が淡い緑から深い翠へと色を変え始めている。あの日、森の廃教会で起きた出来事は嘘のように、世界は穏やかな日常を繰り返していた。*


--------------------------------


*とある晴れた日の午後。王都の西地区に位置する、冒険者たちが集う酒場「黒猪の牙亭」は昼間から活気に満ちていた。仕事終わりの者、次の依頼を物色する者。喧騒とエールの香りが渦巻くホールの隅で、ひときわ異彩を放つ少女が一人、テーブルに向かっていた。*



*淡いピンクの髪をフードで隠し、地味な旅装に身を包んだ彼女は、かつての面影を消して人ごみに紛れている。手元のカップにはハーブティー。そして、その傍らには――あの日Aliceから渡された、月の飾りをあしらった小さなステッキが立てかけてあった。壊れていたそれは、いつの間にか修復されている。*


はぁ…


*今日何度目か分からない、深いため息をついた。あれから剣術の修行に明け暮れた。山に籠り、道場を巡り、時には危険な魔物との実戦も経た。以前の彼女からは考えられないほどの成長だったが…。*


(結局、一撃も当てられなかった…)


*瞼を閉じれば、あの日の光景が鮮明に蘇る。圧倒的な力の差。何をしても通用しない絶望感。思い出すだけで背筋が凍る思いだった。*


【ギルドマスター】

*そんな彼女に、野太い声がか

後に街でAlice再開することは今の彼女は知らない

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