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虹魔学院の紅と蒼  作者: なまこ
クラス対抗戦

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代表決定戦

■実技演習室

澪の特訓から一週間が過ぎた放課後――。

担任の灰原仁とA組生徒は実技演習室(じつぎえんしゅうしつ)に集まっていた。


実技演習室――。

そこは、影ひとつない純白の空間だった。

壁も床も天井も、すべてが白。まるで“創造前のキャンバス”のようだ。


中央には黒い台座がひとつ。

その上に、淡く光を放つ“白のオーブ”が浮かんでいる。


虹魔学院には、魔法を制御するための特別な魔導具――()()()が存在する。

色の適性に関係なく、その色の魔法を扱える。

触れられるのは、学院に認められた教師だけだ。


灰原が無言で歩み寄り、指先でオーブに触れる。瞬間、オーブが脈打つように光り、空間に波紋が広がった。

白い床に赤い光が走り、やがて正方形の枠線を描き出す。

枠線の表面には薄い膜のような結界が張られ、淡く揺らめいていた。


灰原「この結界はあらゆる魔法を無効化するが、人の出入りは自由だ」

灰原「“しっぽ取り”のルールに加え、この結界から出たら敗北とみなす」

灰原は静かに結界へ足を踏み入れ、淡々と続けた。


灰原「相手を傷つける行為は禁止だ。危険だと判断したら即座に制止する。」

淡々とした声が、白い空間に静かに響いた。


■澪vs水町

灰原の説明が終わると、学級委員長・白馬翔が口を開く。

白馬「まずは翠川さんvs水町くんだね」


水町「うっす!」

澪「はいっ!」


澪の返事に、仲間たちが次々と声をかけた。


玲奈「頑張りなさい」

紅莉「澪ちゃん、ファイトっ!」

土屋「応援してるぜ!」

夜宵「澪ならできる」

蒼紫「大丈夫」


澪「私、頑張るね!」

澪は決意を固めて結界の中へ入っていった。

澪と水町が向かい合うと、空気がわずかに張りつめた。


灰原「準備はいいな」

澪・水町「はい!」


灰原「それでは、試合開始!」

灰原の声が、静寂の空間を鋭く切り裂いた。


試合開始と同時――

水町は水のベールで体を覆い、守りを固める。


水町の行動に対し一同が驚きの表情を浮かべる。

玲奈「すごっ蒼紫の言った通りじゃん!」

紅莉「蒼紫くん……すごい!」

土屋「さっすが蒼紫だぜ!」

夜宵「予想通りね」


盛り上がる一同とは対照的に、蒼紫だけは冷静だった。

水町裕也(みずまちゆうや)。色は自分と同じ“青”。 cHは俺より低いが……水魔法の扱いだけなら、俺を上回る可能性がある)


それを見た澪は、静かに飛行魔法を発動する。

澪の身体がふわりと浮き上がる。


「飛行魔法!?」

「推奨cH4.5だろ、あれ……!」


驚いたのは水町も同じだった。

(これじゃ……水で足場を奪えない!)


澪は風を操り、一気に距離を詰める。

――瞬間。

澪の右手が水のベールに触れた。

そこへ気流を流し込む。


水町「なにっ!?」

想定外の連続に水町は対応できない。

水町「制御が効かない!」

次の瞬間、水のベールは一気に崩れ落ちた。


澪は油断しない。

左手に魔力を込め、黄緑色の風を弧を描くように放つ。

風が水町の“しっぽ”をとらえ、そのまま澪の元へと運んだ。

澪はしっかりとしっぽを掴み取る。


灰原「そこまで。勝者、翠川澪」


澪の鮮やかな動きに、会場がどよめいた。

「すごっ……!」

「かっけぇ……!」

「いいぞ~翠川!」


澪は蒼紫の方へ向き、満面の笑みを浮かべた。

蒼紫は小さく頷いた。


水町が澪の元へ近づく。

水町「完敗だったぜ、翠川」

澪「蒼紫くんたちが練習に付き合ってくれたから……」


水町は驚きつつも納得したように頷いた。

水町「湊が……?……なるほど、そういうことか」


澪の勝利で、最初の試合は静かに幕を閉じた。


■白馬vs山田

水町戦を終えた澪は蒼紫の元へ合流する。

紅莉「澪ちゃん、ナイスっ!」

土屋「すごかったぜ!」

夜宵「やればできる子」

蒼紫「……その調子だ」

玲奈「蒼紫の作戦がハマったわね」


澪は少し照れくさそうにしていた。

澪「次も頑張るね!」


一通り盛り上がったところで、玲奈が話題を切り替える。

玲奈「で、2戦目はどうするの? 対策する暇なかったでしょ?」


蒼紫は顎に手を当て、少し考えるように視線を落とした。

玲奈「ちょ、ちょっと黙らないでよ!」


蒼紫「白馬も山田も優秀な魔法使いだ。厳しい試合になるかもしれない」

玲奈「……やっぱりそうよね」


蒼紫は澪の方へ視線を向け、静かに続けた。

蒼紫「でも、澪なら大丈夫。練習通りやれば勝てない相手じゃない」

澪「……うん!」


白馬は澪vs水町の試合が落ち着いたのを感じ前に出た。

白馬「じゃあ、次は僕たちだね」


白馬に黄色い声援が飛ぶ。

「頑張って!白馬くーん!」


山田「うおおおっ、やってやるぞ白馬!」

「白馬なんかに負けんなよ山田!」

山田への声援は野太く、力強かった。


白馬が結界へ向かう。

山田も拳を握りしめて前に出る。


蒼紫は静かに山田へ視線を向けた。

山田大地(やまだだいち)。土屋と同じ茶色の魔法使い。

cHは4.2……土屋よりも扱いが安定していて、土魔法の威力も高い)


(どちらが勝ってもおかしくないな)

蒼紫「澪。……この試合、参考になる」

不意に向けられた言葉に、澪は少し驚いたように瞬きをした。

澪「う、うん……」


白馬と山田が結界の中央へ歩み出る。

向かい合った瞬間、場の空気がじわりと重くなる。


灰原「準備はいいな」

白馬・山田「はい!」


灰原「それでは、試合開始!」

灰原の声が、白い空間に低く響いた。


開始の合図と同時に、山田の魔力が床を走る。

山田の足元には平らな土台が形作られたが、

白馬の足元だけは荒々しく盛り上がり、複雑な凹凸が生まれる。


山田「地形戦で有利を取るのは戦術の基本だぜ」


白馬は足元を一瞥し、すぐに動いた。

右腕を静かに掲げる。

白馬「……創造」


白馬の右腕に、淡い光をまとった白い"破壊のガントレット”が形成された。

装飾はなく、ただ破壊のための機能だけを追求した簡素な形。


白馬は右腕に力を込め地面を叩きつけた。

瞬間、盛り上がった大地に白い亀裂が走った。

次の瞬間、隆起は光に包まれ、音もなく崩れ落ちる。


山田「なっ……!」


白馬は続けて足元に魔力を流し込む。

白馬「創造」


白馬の足に、白い"高速の靴"が瞬時に形成される。

それは速度だけに特化した、軽量な創造物だった。


白馬の身体が風を裂くように前へ走り出す。

山田「速っ……!?」


白馬「……もらうよ」

山田が気づいた時には、白馬はすでに背後にいた。

白馬は迷いなく、しっぽを掴み取る。


灰原「そこまで! 勝者、白馬翔」


圧倒的な白馬の力強さと素早さに黄色い声援が沸き上がる。

「キャ~!」

「白馬くんかっこいい~!」


蒼紫は静かに白馬を見つめていた。

(白馬翔。動きに無駄がないな)


澪「私……勝てるかな」

蒼紫は静かに澪へ視線を向けた。

蒼紫「……大丈夫。策はある。」


澪が不安そうに目を伏せると、蒼紫はわずかに身を寄せた。

そのまま、誰にも聞こえないほど小さな声で何かを告げる。


蒼紫の言葉を受け、澪はそっと頷いた。

その仕草だけで、覚悟が固まったことが伝わった。

澪「……じゃ、行ってくるね」


一同は澪の後ろ姿を暖かい目で見守った。


■澪vs白馬

澪が結界に入ると、白馬はすでに静かに位置についていた。


澪が構えたのを確認し、灰原が口を開く。

灰原「準備はいいな」

澪・白馬「はい!」


灰原「それでは、試合開始!」


開始の合図と同時に、澪は飛行魔法を発動した。

澪「飛行!」


ふわりと浮き上がる澪を見て、白馬が小さく目を細める。

白馬「……やっぱり“高速の靴”は警戒しているみたいだね」


白馬は続ける。

白馬「この短期間で飛行魔法を習得するとは思わなかったよ」


その声音には、確かな賛辞が含まれていた。

白馬「おかげで僕も本気を出せる」


白馬は静かに呟く。

白馬「……創造」

淡い光が走り、白馬の背中に“天使の羽”のような白い翼が形成された。

白馬の身体がふわりと浮き上がる。


澪は驚きつつも、すぐに右手へ魔力を込めた。

黄緑色の風が白馬のしっぽを狙って走る。


白馬はさらに高度を上げ、華麗に風を躱した。


白馬が澪へ接近を試みる。

澪は風魔法を放つが、白馬の展開したシールドに弾かれる。


無駄のない白馬の動きに、誰もが白馬の勝利を予感した――その瞬間。


灰原「そこまで。勝者、翠川澪」


場が静まり返る。

白馬は結界の外に出て――

敗北した。


予想外の展開に、周囲は言葉を失った。

だが、澪と蒼紫だけは静かに状況を受け止めていた。


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