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虹魔学院の紅と蒼  作者: なまこ
虹魔学院

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3/18

”色”と魔法


■色魔法基礎学

翌朝。

一年A組の教室には、登校したばかりの生徒たちの声が軽く響いていた。蒼紫たちの机には、昨日転入してきた紅莉も自然に混ざっていた。


紅莉「それでね、玲奈ちゃんが——」

玲奈「言わなくていいから!」

土屋「ははっ、仲良くなってんじゃん」

澪は微笑み、夜宵は静かに紅莉を観察している。そんな和やかな空気の中——


ガラッ。

黒いローブを翻し、灰原迅が教室へ入ってくる。


灰原「席につけ。……授業を始めるぞ」

その言葉に、教室がざわりと揺れた。


この授業は、”色”と魔法の仕組みを体系的に学ぶ、学院でも重要な科目だ。

灰原は黒板にチョークを走らせる。


灰原「まずは色についての復習だ」

灰原「色は魔法と深く関わっている。色によって扱える魔法の傾向が大きく変わる。例えば——赤は炎。青は水。これは基本中の基本だな」

生徒たちが一斉にノートを取る。


灰原「そして色は、魔法だけでなく“性質”にも影響する。

赤は情熱、青は冷静……見た目や性格に反映されやすい」

灰原の視線が蒼紫に向く。


灰原「湊なんかは分かりやすい例だ。水と氷の魔法が得意で、髪は青。性格は……冷静そのものだな」

教室に小さな笑いが起きる。

蒼紫は無表情のまま、淡々とノートを取っていた。


そのとき——

土屋「せんせー! 紅莉ちゃんの魅了が蒼紫に効かなかったのって、色と関係あるんですか?」

教室が一瞬静まり返る。


紅莉はビクリと肩を揺らし、灰原を注意深く見つめた。

灰原「……青色が魅了に強いという根拠はない。現に青色の水谷や水町は魅了されていただろう」

紅莉の胸がドキリと鳴る。


灰原「色とは関係ない魔法を扱う者——あるいは、()()()()の持ち主が存在することは覚えておくといい」

“特別な色”という言葉に、教室の空気がわずかに張りつめた。


灰原「お前たちが入学して二ヶ月経ったこと、そして神崎が転入してきたことを踏まえ——本日、色の再測定を行う。今から測定室に移動してもらう。」

教室がざわめいた。


玲奈「再測定って……今さら?」

澪「……でも、紅莉ちゃんの魔力、すごかったし……」

夜宵「……面倒なことになりそう」


紅莉は不安と期待が入り混じった表情で、そっと蒼紫を見た。

蒼紫もまた、静かに紅莉を見返す。

二人の“色”に隠された秘密が、少しずつ動き始めていた。


■色の測定

虹魔学院で行われる“色の測定”には、三つの道具が使われる。


ひとつは——色水(しきすい)

透明な液体だが、魔力を与えると持ち主の色へと染まる、特別な魔法水。


もうひとつは——色紙(しきがみ)

薄い白紙のように見えるが、魔力の波長を吸収し、色を変化させる性質を持つ。


そして最後に——色測定器(いろそくていき)

色水の濃度を数値化し、魔力の強さを “cH値” として示す測定器だ。


cH(Chromatic Index)は、魔力色の純度と濃度を表す学院公式の指標で、

数値は 0〜7 の範囲で測定される。


測定の手順は単純だが、厳粛でもある。

まず、色の持ち主が色紙を舌先で軽く湿らせる。

それだけで、白かった紙はゆっくりと色づき始める。

まるで、その人の“心の色”が浮かび上がるように。


次に、その色紙を色水へと沈める。

透明だった液体が、じわりと染まり、その人の魔力の色が、鮮やかに広がっていく。


最後に、色測定器を色水へと差し込む。

魔力の濃度が数値として現れ

cH0は魔力を持たない者。

cH7は学院でも滅多に現れない、特別な才能の証。

というように、その者の“現在地”が示される。


灰原の指示で、教室の机が六人一組になるように並べ替えられた。

蒼紫・紅莉・玲奈・夜宵・澪・土屋——

紅莉を加えたいつものメンバーがひとつの島に集まる。


灰原「色の測定は前回と同じだ。手順を守り、正確に行え」

測定室は白い床に大きな黒い机がいくつも並び、その上には透明な色水、白い色紙、細長い測定器が整然と置かれていた。


部屋全体には、魔力を抑えるようなひんやりとした静けさが漂っている。

その静けさを破るように、土屋が声を上げた。


土屋「前より色濃くなってるといいなぁー!」

玲奈「アンタはいつも楽しそうね……」

紅莉(……緊張する。湊くんの前で変な結果になりませんように)


土屋「順番はどうする?」

玲奈「アンタからでいいよ」

土屋「では遠慮なく!」


■土屋の測定

土屋は色紙を舌で湿らせる。紙はすぐに茶色へと染まった。

澪「……ちゃんと土屋くんの色だね」

土屋「“ちゃんと”ってなんだよ!」

色水に沈めると、瓶の中がゆっくりと土色に濁る。測定器を差し込むと——


《cH3.3》


土屋「前と一緒じゃん!」

玲奈「平均ってとこね」

紅莉「つっちーらしいよ!」

土屋「褒められてるのかこれ!?」


■澪の測定

澪「じゃ、じゃあ……次、わたし……」

澪は胸に手を当て、深呼吸してから色紙を舌に触れさせた。

紙はふわりと柔らかい緑へ染まる。


紅莉「わぁ……綺麗……」

蒼紫「……いい色だ」

透明だった液体がゆっくりと 淡いエメラルド色 に広がった。

測定器を差し込む。


《cH3.7》


澪「……っ、上がってる……!」

紅莉「澪ちゃん、すごいよ!」

玲奈「努力の成果ね」

土屋「澪はもっと伸びるぞ、絶対」

澪は頬を赤らめ、嬉しそうに微笑んだ。


■玲奈の測定

玲奈「次はあたしね!」

色紙は瞬時に鮮やかな黄色へ。

色水に沈めると、瓶の中が一気に 光を弾くような黄金色 に広がる。


《cH4.6》


土屋「おおっ、強い!」

紅莉「玲奈ちゃん、かっこいい……!」

玲奈「べ、別に普通よ……!」


玲奈「蒼紫、私にはなんか感想ないわけ」

蒼紫「……玲奈も綺麗だよ」

紅莉「玲奈ちゃん、綺麗だって~」

玲奈「う、うるさい!」

紅莉が小馬鹿にしたように笑うと玲奈は顔を赤らめてしまった。


■紅莉の測定

紅莉「つ、次……わたし……」

紅莉が色紙を湿らせると、紙は深い赤へ染まった。

色水に沈めると——赤の中に、ほんのり桃色が混ざったような色が広がる。


《cH4.4》


紅莉「……よかった……」

紅莉は安堵した表情をこぼす。

土屋「すっげー綺麗な色!この水、高値で買います!」


即座に玲奈に叩かれる。

紅莉「……私も湊くんから感想欲しいな」


紅莉が照れくさそうに言うと蒼紫は

蒼紫「……神崎さんも、いい色してる」

紅莉「っ……」


玲奈が肘でつつく。

玲奈「良かったじゃない、紅莉」

紅莉は真っ赤になった。


■蒼紫の測定

蒼紫「……次、俺か」

色紙は静かに深い青へ染まり、色水は澄んだ碧へと変化する。


《cH5.0》


土屋「おおおっ! さすが蒼紫!」

玲奈「……ムカつくほど安定してるわね」

澪「綺麗……すごく綺麗な碧……」

紅莉(……綺麗な色……)

紅莉は碧く染まった色水に見とれていた。


■夜宵の測定

夜宵「……最後は私」

色紙は淡い紫に染まり、色水は静かに深い紫へと変化した。


《cH5.6》


夜宵「当然の結果」

土屋「さっすがナンバーワン」

玲奈「やっぱ夜宵って天才よね……」

澪「すごい……本当にすごい……」

紅莉「夜宵ちゃん、かっこいい……!」

蒼紫「……流石」


周囲の机からも、抑えきれないざわめきが漏れた。

一年でcH5台は滅多に出ない。ましてcH5.6など——。


その空気を切るように、灰原が歩み寄ってくる。

灰原「cH5.6なら上出来だ。上級生相手にも引けを取らない数値だろう」


灰原「一年のうちにcH4を超えていれば優秀だ。……土屋はもう少し頑張れ」

土屋「いやいや、平均ですから! 周りと比べないでくださいよせんせぇ〜!」

教室に笑いが広がる。


だが、灰原はすぐに表情を引き締めた。

灰原「——さて。今回の再測定で、二ヶ月前と比べて大きく変化があったのは一人だけだ」

五人の視線が自然と澪へ向く。


澪「えっ……わ、わたし……?」

灰原「魔力の濃さは、努力と心の状態で変わる。翠川、お前はこの二ヶ月で確実に成長している。胸を張れ」

澪は驚いたように目を瞬かせ、次の瞬間、ふわりと笑った。


澪「……はいっ」

その笑顔は、緑色の魔力のように柔らかく、どこか眩しかった。


灰原「以上で測定は終わりだ。結果は後日まとめて返す。——だが、覚えておけ」

灰原は六人の机を見渡す。


灰原「色の数値は、魔力の強さだけではなく“日々の積み重ね”が反映される。この学院で心身ともに磨け。以上だ」

その言葉を最後に、色魔法基礎学の授業は静かに幕を閉じた。



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