平和な日常
■放課後
授業が全て終わり、蒼紫らは学生寮に向かおうとしていた。
玲奈「ったく、なんで私がこの子と同じ部屋なわけ?」
紅莉「私は玲奈ちゃんと同室になれて嬉しいけどね!!」
玲奈「っ……!」
土屋「照れてる?」
玲奈「照れてないわよ!」
夜宵「分かりやすい」
紅莉「じゃあ蒼紫くん、わたしたちこっちだから」「またね!」
別れ際の挨拶と同時に蒼紫に投げキッスをするが、蒼紫は動じない。
蒼紫「……ああ」
玲奈は蒼紫と別れたあと同室の部屋に入り紅莉に部屋の説明をしていた。
玲奈「いい?ベッドは私が上だからね」
紅莉「いいよ!じゃあわたしが下だね!」
虹魔学院の学生寮は2人1部屋であり2段ベッドが備え付けられている。
紅莉「そんなことより、今からタノシイことしない?」
玲奈「な、何よ楽しいことって?」
玲奈に対し紅莉がクスリと微笑む。
■来訪者
蒼紫は紅莉らと別れたあと同室の土屋とくつろいでいた。
土屋「今日の夜飯はどうするよ?またいつもの学食?」
蒼紫「そうだな」
蒼紫と土屋がだらだらしていると扉の向こうから甘酸っぱい声が聞こえる。
紅莉「湊くーーん!」
土屋「あ、紅莉ちゃん!?」
土屋が慌てて扉を開けるとそこには紅莉と玲奈の姿が。
紅莉「遊びに来ちゃった!」
玲奈「部屋、入れなさいよ」
照れくさそうにする玲奈に対し蒼紫は
蒼紫「……構わないけど」
むさ苦しい男部屋が甘い香りに包まれる。
土屋「トランプでもしよーぜ!」
紅莉「賛成!」
土屋の一言でトランプをする流れに。
結果は——
蒼紫→紅莉→土屋→玲奈
という順位がほとんど。
玲奈「土屋にも勝てないの悔しぃぃ!」
紅莉「それにしても湊くんは強いね!一回も勝てなかった」
土屋「蒼紫は意外と賢いんだよなぁ」
蒼紫「人の考えを読むのは得意だ。特に玲奈とかは分かりやすいね」
玲奈「何よソレ!ムカつく!」
玲奈はポカポカと蒼紫を攻撃する。
玲奈に対し笑いが起きる中、紅莉だけは笑わなかった。
紅莉(人の考えが読める?……もしかして私のことも)
魅了で落とせなかった相手に、“本心を見抜かれるかもしれない”という不安が胸を締めつける。
土屋「紅莉ちゃん、どうかしたの?」
紅莉「ううん、なんでもない!」
紅莉「ところで、つっちーと湊くんは晩御飯どうするの?」
蒼紫「……学食かな」
紅莉「……ふーん、じゃあ特別にわたしと玲奈ちゃんで作ってあげようか!」
土屋「マジで!?やったぁぁーー!!」
蒼紫「……助かる」
土屋「てか玲奈って料理できるんだ」
玲奈「ぶん殴るわよ!」
紅莉「じゃあキッチン借りるから二人はお喋りしてて待っててねっ」
土屋「はーい!」
紅莉と玲奈は食材を持ち込み、すぐに調理を始めた。
紅莉「玲奈ちゃんはサラダとスープを作ってくれる?」
玲奈「なんであたしが副菜と汁物なのよ……まあいいけど」
紅莉「わたしはカレーを作るねっ」
二人は手際よく包丁を動かす。
紅莉「そういえば湊くんっていつもあんな感じなの?」
玲奈「あー、アイツは人が多いとあんまり喋らないんだよね。でも1対1だとちゃんと喋るし、ちゃんと見てくれるよ」
紅莉「……そうなんだ」
紅莉「玲奈ちゃんは湊くんのどんなとこが好きなの?」
玲奈「っば……あんなやつ好きじゃないわよ」
紅莉「じゃあわたしが貰っちゃうね」
玲奈「ま、待って!言う、言うから!」
玲奈の慌てぶりに紅莉はニマニマと笑みを浮かべる
玲奈「アイツはいつも冷静で、困ってる人がいたら助けてくれるの」
玲奈は少し視線を落とした。
玲奈「口数は少ないけど、言葉は優しいし……ちゃんと目を見て話してくれる」
少し息を吸い、言いづらそうに続ける。
玲奈「……わたしね、両親に愛されてないんだ。必要最低限のことはしてくれたけど、必要以上の愛はなかった」
玲奈「だから……ちゃんと見てくれる蒼紫のことが、スッ——」
そこまで言って、玲奈は真っ赤になった
紅莉「……見てくれるんだ」
気まずい空気が流れたところで、紅莉が鍋を見て口を開く。
紅莉「もうカレーができるみたい」
紅莉がご飯とカレーを手際よく盛り付ける。
紅莉「できたよー!」
一同席に着き手を合わせる
一同「いただきます」
土屋「カレーもスープもサラダもほんっと美味いな」
蒼紫「……ああ美味い」
紅莉(男の子を落とすにはまずは胃袋から!!)
玲奈「それにしてもこの子料理もできるなんて弱点はないのかしら」
皆の視線が紅莉に集まる。
紅莉「弱点はー……」
紅莉は胸を押さえながら頬を赤らめると玲奈が
玲奈「弱点ってそういう意味じゃないわよ」とツッコミを入れる。
当然土屋の目にはハートが浮かんでいたので玲奈が叩いて現実に引き戻す。
食事が終わり後片付けは男子が行うことに。
紅莉と玲奈は早めに解散。
解散する間際、紅莉はメモ用紙のようなものを蒼紫に渡す。
「2人きりでお話がしたいです。21時天文台の前で待ってます。紅莉」
■天文台にて
土屋の長話に付き合わされた蒼紫は、約束の時間に遅れてしまった。
蒼紫「遅くなってごめん」
紅莉「もう来ないかと思ったよ」
紅莉は寂しそうで、でも少しだけ安堵した表情を見せた。
蒼紫「話ってなに?」
紅莉「わたしね……魅了の魔法が効かなかったことって、今まで一度もなかったの」
蒼紫「俺と灰原先生?」
紅莉「そう。灰原先生はどうでもいいけど……湊くんは、気になっちゃって」
紅莉「湊くんは……ちゃんと、わたしのことも見てくれる?」
首を傾け、少しだけ色っぽく言うと——
蒼紫「見るよ」
蒼紫の碧くて澄んだ瞳が見つめ返してくる。
魅了で見つめれば一瞬で落ちるはずの男子が、“普通の目”で見つめ返してくる。
紅莉は一瞬で目を逸らし、頬を赤く染めた。
紅莉「きょ、今日はありがとうっ! おやすみ!」
紅莉はいたたまれなくなり逃げ出してしまった。
蒼紫「おやすみ」




