団体戦(前編)
■蒼紫・夜宵vs暁・黒崎
昼食を終えた蒼紫は、代表戦が行われる闘技場へと足を踏み入れた。
午前とは違う、張りつめた空気が肌に触れる。
観客席にはすでに多くの生徒が集まり、ざわめきが波のように広がっていた。
蒼紫の横には夜宵が静かに立っている。
紫の瞳はいつも通り落ち着いているが、その奥には確かな闘志が宿っていた。
夜宵「……行くわよ、蒼紫」
蒼紫「ああ。準備はできてる」
結界の外から、赤い気配と黒い影が同時に現れる。
暁「おーい蒼紫!ついにこの時が来たな!」
黒崎「……よろしく」
暁はいつものように明るく、黒崎はいつものように静か。
だが二人の周囲に漂う魔力は、午前とは比べものにならないほど鋭かった。
蒼紫は二人を見据え、胸の奥が熱くなるのを感じた。
(暁と黒崎……この二人が相手か)
暁の炎は爆発的で、黒崎の影は読みにくい。
対して蒼紫と夜宵は、制御と精密さを武器にするタイプ。
審判役の赤沢が中央に立ち、声を張り上げた。
「これより――一年代表戦、A組vsB組を開始する!」
観客席が一気に沸き立つ。
夜宵は蒼紫の横で、そっと蒼紫に視線を向けた。
夜宵「蒼紫。まずは作戦通り行くわよ」
蒼紫「夜宵に合わせる」
暁は拳を握り、炎をまとわせる。
暁「行くぞ、黒崎!」
黒崎「……始めよう」
合図と同時に、二人の魔力が重なった。
暁の炎が黒崎の影に飲み込まれ、瞬く間に色を変える。
赤いはずの炎は、影の中で黒く染まり、禍々しい輝きを帯びた。
次の瞬間――
闘技場の中央へ向けて、巨大な黒炎が放たれた。
蒼紫「来るぞ、夜宵!防御魔法だ」
夜宵「分かったわ」
蒼紫の青い魔力が流れを整え、夜宵の紫光がそれを包み込むように重なった。
青紫色のバリアが瞬時に形を成し、迫りくる黒炎を正面から受け止める。
轟音とともに炎がぶつかったが、バリアはびくともしなかった。
暁「なかなかやるな!」
黒崎「油断するな」
夜宵「反撃よ」
蒼紫「ああ」
攻撃を防いだ二人はすぐに反撃に転じる。
魔力の波長を合わせ、青紫色の光束を放つ。
強大なエネルギーは暁と黒崎を呑み込んだ。
光束が消えるとそこには赤黒い影が存在した。
蒼紫「やはり効かないか……」
暁「それだけじゃないぜ!」
影の中から暁の声が聞こえる。
蒼紫と夜宵の真下に赤黒い影が出現する。
蒼紫「夜宵!」
蒼紫と夜宵は即座に赤黒い影から距離を取った。
すると、赤黒い影から黒炎が吹きあがった。
(協力することで影の中からも攻撃を可能にしたか……)
二人は次々と吹き出す黒炎に防戦一方だった。
(黒崎の影を攻略する必要があるな……)
蒼紫「夜宵、力を貸してくれ!」
二人は黒炎を避けながら距離を詰め、魔力を重ね合わせた。
波長が一致した瞬間、蒼紫の周囲に青紫色の魔力が集中する。
蒼紫は結界内の空間を、青紫色の水で一気に満たした。
奔流のように広がった水は、赤黒い影を呑み込み、形を奪っていく。
黒崎「……影が出せない!」
暁「まじかよ!」
影を失った二人の姿が、水中に露わになった。
蒼紫はさらに水流を操り、暁と黒崎を渦のように巻き込みながら場外へと押し流す。
赤沢「そこまで!勝者、一年A組!」
青紫色の水が引いていくと同時に、観客席から大きな歓声が上がった。
その中で、土屋が勢いよくガッツポーズを掲げる。
土屋「二人とも流石だぜ!」
澪も胸に手を当てながら、目を輝かせていた。
澪「ほんと……すごかった……」
玲奈は腕を組んだまま、満足そうに頷く。
玲奈「まあ、これくらい当然よね」
紅莉は勢いよく玲奈に抱きついた。
紅莉「やったね、玲奈ちゃん!」
玲奈「ちょ、ちょっと……紅莉!」
普段は蒼紫をめぐって火花を散らす二人だが、
この瞬間だけは勝利の喜びが勝り、互いに笑顔で抱き合っていた。
会場では蒼紫たちが互いの健闘を称え合っていた。
暁「また負けちまったが、楽しかったぜ!」
蒼紫「ああ、俺もだ」
黒崎「……次は負けない」
夜宵「望むところよ」
四人のやり取りに、観客席から再び拍手が起こる。
熱気の残る闘技場に、心地よい余韻が広がっていった。
仲間たちの笑顔、観客の歓声、そして戦いの高揚感。
そのすべてを胸に刻みながら、蒼紫はゆっくりと仲間の輪へ歩み寄った。
こうして一年A組の代表戦は、鮮やかな勝利で幕を閉じた。




