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虹魔学院の紅と蒼  作者: なまこ
体育祭

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17/19

体育祭開幕

■開会式

体育祭の日はあっという間に訪れた。


校庭に集合の号令が響き、全学年が整列していく。

朝の空気は少しひんやりしているのに、どこか熱を帯びていた。


A組の生徒は赤い鉢巻を着け、B組の生徒は白い鉢巻を着けている。

異なる色が並ぶだけで、すでに火花が散っているように見えた。


やがて、生徒たちの前に体育祭担当の赤沢が歩み出る。

赤沢「これより体育祭を開会する」


その一言で、ざわめきがすっと引き締まった。

赤沢「優秀な魔法使いは魔法だけでなく心身ともに優れている。今日はその力を、仲間とともに存分に見せてくれ」


開会式が終わり、蒼紫は赤い鉢巻を押さえながらA組のテントへ向かった。

テントの中は、すでに仲間たちの熱気でむんとした空気が満ちている。


紅莉がぱっと振り向き、明るい声を上げた。

紅莉「頑張ろうね、みんな!」


澪「う、うん……が、頑張る……!」

夜宵「ええ。やるべきことをやるだけ」

土屋「おっしゃー!燃えてきたぜ、A組いくぞー!」

玲奈「私の走り、しっかり見ておきなさいよ?」


蒼紫はその様子を見て、自然と口元が緩んだ。

蒼紫「……みんな、気合い入ってるな」


紅莉がにこっと笑い、蒼紫の腕を軽くつつく。

紅莉「蒼紫くんも、ね?」

蒼紫「……ああ」


赤い鉢巻が風に揺れ、A組の空気がひとつにまとまっていく。

まるで、これから始まる戦いに向けて鼓動が揃っていくようだった。


■借り”色”競争

蒼紫たちは最初の個人種目を行うため校庭に並んでいた。

ルールは赤沢先生により当日発表となる。


赤沢「個人種目は――『借り”色”競争』だ!」

聞き慣れない単語に、列のあちこちでざわめきが起こる。


赤沢「まずは中継地点まで一人で走る。そこに置いてある紙を一枚取れ。紙を取ると色が変わるから、その色の生徒を探し、走るように」


ざわめきがさらに広がる。

赤沢「つまり、借り物競争の“色”バージョンだな。誰と走ることになるかは運次第だ。しっかり探せよ!」


生徒たちは一斉に紙の色を想像し、周囲を見回し始めた。

赤と白が入り混じる校庭に、緊張とわくわくが同時に走る。


蒼紫は額の鉢巻を軽く押さえ、息を整えた。

スタートの合図を待つ空気が、じわりと熱を帯びていく。


種目はすぐに始まり、まずは一年生女子から順に走り出した。


生徒が紙を取るたびに、紙は鮮やかに色を変える。

周囲にも、どの色が求められているか一目で分かった。


やがて、紅莉と玲奈が走り出す。

紅莉と玲奈は同じ列だったため、蒼紫は二人の走りを見守っていた。


二人はほぼ同時に紙へ手を伸ばし、触れた瞬間、どちらの紙も青に変色した。

(青か……)

蒼紫は小さく息をつく。


紅莉と玲奈が猛スピードでこちらへ駆けてくる。


先に到着したのは玲奈だった。

玲奈「蒼紫! 力を貸しなさい!」

玲奈は迷いなく蒼紫の手をつかむ。


続いて紅莉が駆け寄ってきた。

紅莉「蒼紫くん、一緒に走ろっ!」

優しい笑顔で手を伸ばしてくる。


蒼紫は一瞬、どちらを選ぶべきか迷った。

この場での選択の”意味”を蒼紫は理解していた。

蒼紫「……」


その逡巡を断ち切るように、玲奈がぐいっと手を引いた。

玲奈「いいから早く!」


紅莉も慌てて蒼紫の反対側の手をつかむ。

紅莉「ま、待って! わたしも!」


蒼紫は引っ張られるまま、仕方なく走り出した。


右手は玲奈、左手は紅莉とつながれたまま。

美少女二人と三人で走る姿が目立たないはずもなく、周囲からは盛大なブーイングが飛んだ。


なんとかゴールにはたどり着いたものの、三人で走ったせいで結果は最下位だった。


玲奈は悔しそうに息をつきながら言い放った。

玲奈「まったく……紅莉のせいでビリよ」


紅莉はむっと頬をふくらませる。

紅莉「玲奈ちゃんが悪いよ!」


蒼紫「……勘弁してくれ」

蒼紫は肩をすくめながら男子の列へ戻った。

まだ自分の番も来ていないのに、すでにどっと疲れが押し寄せていた。


そして、蒼紫の番はすぐにやってきた。

中継地点で紙をつかむと、紙は鮮やかな赤に変色する。

(……赤か)


その瞬間、紅莉は蒼紫の紙の色を見て、胸の奥がきゅっと強張った。

紅莉「……蒼紫くん」


蒼紫は一年生の列の前に戻り、少し生徒を見渡した。

すぐに、目的の生徒を見つけ、声をかける。


蒼紫「俺と走ってくれ」

暁「おお!任せろ蒼紫!」


蒼紫は紅莉ではなく暁熱志を選んだ。


玲奈「残念だったわね、紅莉」

玲奈は嬉しそうに挑発した。


紅莉「蒼紫くん、どうして……」

紅莉は泣きそうな声で顔を覆い隠した。


蒼紫と暁はすぐに走り出した。


二人の足の速さはほぼ同じで、呼吸も自然と合う。

二人は瞬く間にゴールし、一位を獲得した。


蒼紫「ありがとう、暁。助かった」

暁「おう!俺も蒼紫と走れて楽しかったぜ!」

暁は満面の笑みを見せ、親指をグッと立てた。


周囲からは歓声と拍手が上がり、校庭の空気が一気に明るくなる。


最初の個人種目は、生徒の緊張をほぐすには十分だった。

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