体育祭準備
■体育祭準備
夏休みはあっという間に終わり、蒼紫は新学期を迎えていた。
教室の前に立つ灰原は、いつもと変わらぬ無表情で出席簿を閉じる。
その仕草だけで、ざわついていた教室がすっと静まった。
灰原「夏休みは終わった。気持ちを切り替えろ。9月には体育祭がある」
教室がざわつく。
1年生にとっては初めての大きな行事で、2年生や3年生にとっても気合いの入るイベントだ。
灰原「体育祭は全学年合同でA組対B組だ。種目については配布した用紙を見るように」
蒼紫は配られた用紙に視線を落とした。
8:30〜9:00 開会式
9:00〜10:00 個人競技(内容は当日発表)
10:00〜11:00 クラス対抗リレー
12:00〜13:00 昼休憩
13:00〜16:00 全学年合同団体戦
16:00〜16:30 閉会式
蒼紫(……全学年合同か。上級生の実力も見られるってことだな)
灰原が出席簿を軽く持ち上げ、補足を加える。
灰原「クラス対抗リレーは魔法禁止だ。魔法だけでなく、心身ともに磨いてもらう」
“魔法禁止”の一言に、教室がざわりと揺れた。
「え、魔法なしってマジかよ……」
「走るだけとか、ちょーだるいんだけど」
灰原は無言で出席簿の端を机に“コツン”と当てた。
その小さな音だけで、ざわめきが一瞬で消える。
灰原「学年合同団体戦は、クラスから代表を二名出してペアを組んでもらう。これは連携魔法以外、使用禁止だ」
淡々とした声だが、どこか容赦がない。
灰原「今からリレーの順番と、団体戦の代表二名を決めてもらう」
灰原が白馬に視線を送ると、白馬翔が前に出てクラスを見渡した。
白馬「まずは団体戦の代表を決めよう。湊くんと紫条さん、お願いできるかな?」
白馬の言葉に、教室の空気がわずかに引き締まる。
クラス対抗戦で副将・大将として勝利を引き寄せた二人だ。
誰も異論を挟むことなく、自然と視線が二人へ向けられた。
夜宵「任せなさい」
蒼紫「……やれるだけやってみる」
そのやり取りを見ながら、紅莉は小さく頬を膨らませた。
(わたしも蒼紫くんと出たかったのに……)
白馬「次にリレーの順番を決めよう。まずはアンカーから決めようか」
白馬はクラス全体を見渡し、迷いなく名前を挙げた。
白馬「アンカーは黄瀬さんでいいと思う。うちで一番速いし、最後を任せられる」
玲奈は軽く頷き、周囲からも異論は出なかった。
白馬「第一走者はどうしようか。そこそこ速くて、勢いをつけられる人がいいかな」
玲奈「土屋とかでいいんじゃない?」
順番がすでに決まっている玲奈は、どこか余裕の表情だった。
土屋「おいおい、決まったからって適当すぎだろ!」
白馬は少し考え、土屋に視線を向ける。
白馬「……土屋くんか。悪くないな。お願いできるかな?」
土屋「まじかよ!?まあ、そういうことなら引き受けるぜ!」
第一走者とアンカーが決まると、残りの順番もすぐに固まった。
後半に速い走者を集める作戦で、白馬の次に足の速い蒼紫は後ろから三番目に入った。
リレーの順番が無事に決まったところで、休み時間の鐘が鳴る。
蒼紫は喉の渇きを覚え、飲み物を買いに席を立った。
売店で飲み物を買い終えたところで、ちょうどB組の暁熱志と鉢合わせた。
暁「よぉー! 蒼紫じゃねーか。買い物終わったのか?」
蒼紫「……ああ」
暁「奇遇だな。俺も戻るとこだ!」
暁が自然と横に並び、二人は同じ方向へ歩き出した。
歩きながら、話題は体育祭へと移っていく。
暁「蒼紫は何番目に走るんだ?」
蒼紫「……後ろから三番目だ」
暁「そうか。なぁ蒼紫、俺は今回第一走者なんだ。お前も一緒に走らないか? また勝負がしたい」
暁の言葉に、蒼紫は顎に手を当てた。
蒼紫「……考えておく」
暁は満足そうに笑い、教室へと戻っていった。
歩きながら、蒼紫は前を行く暁の背中を見て、ほんのわずかに口元を緩めた。
(……面白い体育祭になりそうだ)




