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虹魔学院の紅と蒼  作者: なまこ
水色の季節

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13/18

夏休み(前編)

■海

夏休みのある日、蒼紫たちは学院近くの海に来ていた。


青い空がどこまでも広がり、潮風が肌を撫でていく。

波の音が絶え間なく寄せては返し、夏の匂いが胸いっぱいに広がった。


紅莉「ど、どうかな……? 水着」

紅莉は照れくさそうに身じろぎしながら、そっと感想を求めてきた。

桃色の水着が、彼女の柔らかな体つきを優しく包んでいる。


蒼紫「……似合っているよ」

蒼紫は少し視線をそらしながらも、正直に答えた。


紅莉「えへへ……蒼紫くんに言われると、なんか嬉しい……」

紅莉は胸の前で指をもじもじさせながら、頬をほんのり赤く染めた。


すると、すかさず玲奈が身を乗り出す。

玲奈「じゃあ蒼紫、わたしはどう? 感想は?」

黄色の水着は、玲奈の明るく元気な性格をそのまま映したようだった。


蒼紫「……玲奈も似合ってる」

目のやり場に困りながらも、蒼紫はなんとか言葉を返す。


玲奈「ふんっ、まあ当然よね! 似合ってるに決まってるじゃない!」

強気な口調とは裏腹に、玲奈の耳はほんのり赤く染まっていた。


二人のやり取りがひと段落したところで、紅莉はふと海の方へ視線を向けた。


紅莉「わぁ……海、きれい……!」

紅莉は砂浜に足を踏み入れた瞬間、ぱっと表情を明るくした。


玲奈「よし、泳ぐわよ! ほら蒼紫、早く来なさい!」

玲奈はもうサンダルを脱ぎ捨て、波打ち際へ駆けていく。

金髪が太陽の光を受けてきらきらと輝いていた。


澪「わぁ……なんだか、ちょっと緊張するね……」

澪は足元の砂をつま先でそっと踏みしめながら、海を見つめた。


夜宵は少し離れた場所で、海を眺めながら静かに言った。

夜宵「……眩しい」


土屋は紅莉たちの水着姿を見て、目を輝かせていた。

土屋「いやぁ蒼紫さん……あれは眼福ってやつですなぁ……!」

蒼紫「……」


蒼紫は青くきらめく波を静かに見ていた。

海に来たのは久しぶりだが、騒がしい仲間たちのおかげで不思議と悪くない。


紅莉が振り返り、蒼紫に手を振る。

紅莉「蒼紫くんも行こ? 水、気持ちいいよ!」


蒼紫「……分かった」

蒼紫が歩き出すと、波が足元をさらい、ひんやりとした感触が広がった。

その瞬間――


玲奈「えいっ!」

玲奈が勢いよく水をかけてきた。


蒼紫「……おい」

玲奈「ふふん、油断してるからよ!」


紅莉「わっ、ちょ、ちょっと玲奈ちゃん……!」

紅莉にも水しぶきが飛び、慌てて笑いながら逃げる。


夏の海に、蒼紫たちの笑い声が響いていった。


玲奈と紅莉の笑い声が波に混じって響く中、ふいに紅莉が「あっ」と小さく声を漏らした。

紅莉「……え、ちょ、ちょっと……!」


紅莉は肩に手を当て、慌てて体を縮める。

桃色の水着の肩紐が、波に揺られてずり落ちかけていた。


紅莉「ご、ごめん……ちょっとだけ、見ないで……」


蒼紫「……ああ」

蒼紫はすぐに視線をそらした。


紅莉「……玲奈ちゃん、助けてぇ~」

紅莉は玲奈に泣きそうな声で助けを求める。


玲奈「まったく仕方ないわね」

呆れたように言いながらも、玲奈はすぐに紅莉の元へ駆け寄った。


その時、紅莉が玲奈の方へ体勢を崩した。

紅莉「わっ!」

玲奈「ちょっ……!」


二人はそのまま水に倒れ込み、すぐに顔を出した。

玲奈「ちょ、ちょっと待って! 蒼紫と土屋は絶対こっち見ないで!」

紅莉「もしかして……玲奈ちゃんも?」


二人の水着の紐が、どちらも緩んでいた。

紅莉「澪ちゃん、夜宵ちゃん、お願い……!」

澪「う、うん……! 今行くね!」

夜宵「落ち着きなさい。動くと余計ほどけるわよ」


澪と夜宵が駆け寄り、水着の紐を直しにかかる。


土屋と蒼紫は反対側の砂浜をまじまじと見ていた。

土屋「なぁ蒼紫、ここで俺が振り返ったら俺の人生は変わるのだろうか」


蒼紫「……やめておけ」

土屋「……それでも俺は」


蒼紫「仲間でいられなくなるぞ」

土屋「……耐えるか」

土屋は一人、究極の選択に迫られていた。


波の音と笑い声が混じり、夏の海はますます賑やかになっていった。


蒼紫たちは一通り水遊びをした後、海の家で昼食を取ることにした。


潮風が吹き抜ける店内には、焼きそばの香ばしい匂いが漂っていた。


それぞれが好きな料理を頼み、いつものように同じテーブルを囲む。

蒼紫は迷わず、定番の焼きそばを注文した。


それぞれが注文した料理を前に、蒼紫たちは潮風に吹かれながら、思い思いに箸を進めていく。


玲奈「まったく、紅莉のせいで酷い目に遭ったわ」

紅莉「ごめんね、玲奈ちゃん……あれは本当に偶然で……」


玲奈は焼きとうもろこしをかじりながら、ため息をつく。

玲奈「まあ、紅莉だから許すけど」

紅莉「えへへ……ありがとう」


夜宵は麦茶を口にしながら、静かに言った。

夜宵「……あなたたち、食べる時くらい落ち着きなさい」


澪は冷やしきゅうりを大事そうにかじりながら、くすっと笑う。

澪「でも……なんだか、こういうのって夏って感じだね」

土屋「分かる! 海の家のカレーってなんでこんなにうまいんだろ!」


蒼紫は焼きそばを口に運びながら、騒がしい仲間たちの声を聞いて、ふと小さく息をついた。

蒼紫(……悪くないな)


潮風と笑い声が混じり、海の家は心地よかった。


午前中にはしゃぎすぎた紅莉たちは、午後は砂浜でごろごろと過ごし、気がつけば太陽は沈もうとしていた。


紅莉「今日は楽しかったね!」

澪「うん!」

蒼紫「……ああ、楽しかった」

夜宵「……悪くなかった」

土屋「いやぁ~今日はいい物が見れました」


玲奈「まったく、相変わらずバカね」

玲奈が呆れたように肩をすくめる。


そして、ふっと笑って言った。


玲奈「次は夏祭りね」

紅莉「お祭り! 楽しみ!」

土屋「浴衣姿楽しみだな~」

玲奈「あんたはそういうのしかないわけ?」


玲奈のツッコミに、一同の笑い声が夕暮れの浜辺に広がった。


ゆっくりと沈んでいく太陽を眺めながら、蒼紫たちの夏の一日は、穏やかに幕を閉じていった。


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