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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私を迎えにいく話。

北斎エレクチアス

私のトラウマを浄化していくため書いたので、誰かのトラウマを刺激する可能性があります。

気を付けてください。

波に飲まれて死にそうになる。

水面がキラキラと輝いていて、透明な膜越しに感じる太陽は優しい。


ほんのり笑顔で目が覚めた。

窓から木漏れ日が差し込んできている。

死なずに済んだ安堵感ではなく、これはきっと夢の中で死ねたことへの安堵感。

淀んだ空気をかき分けるように差し込む光。

埃が踊っている様はまるでアンティーク家具を見ているようで時間の流れがわからなくなる。


一階から階段を登ってくる足音で内臓が強張る。呼吸の仕方が途端にわからなくなる。


「いつまで寝ている」


鬼のような顔で父が胸ぐらを掴む。

首も肩も力が入りガチガチだ。

昔から朝が苦手で、気持ち悪くなるから夜中の仕事をしている。けれどそれを言ったところで言い訳をするなと言われるだけなので言わない。

後頭部にじんわりと熱を感じる。感覚のシャッターを閉じていれば平気だと言い聞かせて時間が過ぎるのを待つ。


せっかく良い気分だったのに…。

台無しだ。

ポケットをまさぐりレキソタンのシートを取り出す。ボリボリと噛み砕きながら部屋のガラクタをかき分ける。探しているのはお気に入りの貝印のピンクのカミソリ。スパっと勢いが大事だ。


パックリと開く。


意外と赤くないんだよね。


白みがかっていて黄色っぽい脂肪だろうか、丸いものが見える。ちょっと勢いがつきすぎたようだ。

時間差で赤い液体がこぼれ出して来る。


流れていく液体を眺めていると、心がだんだんと穏やかになってくる。風のない凪いだ海のよう。

体の中を暴れ回る何かが液体と共に流れ出ていくようで、少しだけ自分の汚れが払われたような感覚になる。


そろそろ止血しなきゃ。


サージカルテープで数箇所止めてその上から強めに包帯を巻く。指がベタベタして少しだけ不快に感じた。頭が少しふわふわしてきて、多分薬が効いているのかもしれない。手を洗ってバイトの準備をしなきゃな…。


大丈夫。

私は今日もちゃんとやれる。

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