【7】国外へ
旅〜♪
乗合馬車の停車場に行くものだと思ったら、道を逸れて、荷馬車の停車場へ。
グランさんが、小柄だけどガッチリした男のところへ真っ直ぐ向かい何か話してます。
ニコニコと握手を交わしています。
僕はそれを横目に入ってすぐ横の厩にいる生き物に誘われまして…、クリッとした濡れた大きな黒い目がじっとこちらをですね、誘われて、ふらふぁら〜っと近寄ってしまいまして……。
鼻面撫でて、首を撫でて、お隣さんに催促され、手を伸ばして、撫でてると、更にお隣さんが催促……。
撫で疲れて、否、堪能して?高い体温のお馬さんの首に抱きついてまったりしてると、肩を叩かれました。
「何をしてる。出発だ」
グランさんの呆れ声。
名残り惜しいですけど、お馬さん達に手を振ります。なんだか色艶よく陽光にキラキラしております。
僕はちょっとヨレヨレです。
馬達はなんだか上機嫌です。
勝手に撫で撫でしてて、怒られると思ったら、馬主さんは首を傾げるだけで、怒られませんでした。
僕は、ササッと何か言われる前にグランさんの近くに寄っておきます。威を借ります。
「元気そうだな…頑張ってくれよ」
さっきの男ともう一人、若い背の高い男の人がにこやかに作業をしてます。
「この荷馬車に便乗させて貰う。用心棒兼荷物番」
グランさんがざっくり説明してくれました。
彼らは王都から国境近くの村に帰る途中なのだとか。途中いくつか街を経由するらしいです。適当なところで別れるつもりだったようですが、方角がいいので、最後まで一緒に向かうとの事でした。
その辺りの話をしていたようです。
グランさんが昨夜の内に探し当ててくれてたらしいです。僕が寝てる間に頑張ってくれたようです。お金も稼げて、融通も利くとの事。もしかすると出発もズレても良い方たちだったのでしょうか。
この人は、こうやって渡り歩いていたのでしょうね。旅の方法は色々ですね。
改めて輓獣のお馬さんにご挨拶。
どっしりがっしり丈夫そうなお馬さん。
可愛いお目め。
ぎゅっと抱きつく。
ムヒンと愛嬌のある鼻息のような嘶き。
よろしくね。
町を出て、暫く街道を進む。
初めての旅。
初めての景色。
初めての荷馬車の旅。
振動も風も新鮮です。
全てが色鮮やかに目に飛び込んできます。肌に感じます。匂いも。
素晴らしい世界。
昨夜の雨に濡れた道も植物も何もかもがキラキラしてて美しい。
虹なんか出たら最高じゃないかと思ったが、そこまでは流石に揃いませんね。当たり前か。
若いノッポさんと小柄な親父さんは親子でした。
途中幾つか街を経由して、行商をしながらの移動だけど、幾つも領地境の森や山を抜けるのに用心棒がいるのは心強いから、こうやって雇うのは当たり前なのだとか。
魔獣が出るのだろうかと思ってたら、笑われた。魔獣より人が怖いって言われました。
盗賊が厄介なのだそうです。
出会うか出会わないかは運だとか。
この出会いも運だろうか。
僕の運もいい感じだと思いました。
というのも、街道を暫く行くと、すれ違う馬が多くなって、騒がしくなってます。
グランさん曰く、町を出る頃、ギルドに魔獣狩り募集がかかってたらしいのです。それに向かってる者達だという事でした。
うん。運がいいです。
混み合う前に出発できて。
多分自分の死体を探してるんでしょうね。耳と荷物で手を打ってくれる事を願います。
魔獣さん達には可哀想な事をしました。領地の国境の山の裾野の森が魔獣さん達の住処ですけど、広いですからね…。
森伝いに狩りを行ったところで魔獣も野生の勘で逃げてくれるでしょう。
小さなスケッチブックに野草をスケッチしながら、旅を続けます。
愛読書のポケット野草図鑑が手元に無いには寂しい限りです。
全ての持ち物をあそこに捨ててきたのですから、仕方がないのです。
血塗れのズタボロになってますよね。
これからの新しい人生にワクワクします。
「エミルさん、耳の傷もすっかり治ったし、髪染めしちゃうか」
ん?
傷は自作の薬で早々に治りました。
髪染め?
スケッチの手を止めて、グランさんを見上げます。首を傾げるばかりです。
パッとしない燻んだ茶色の毛でしたが、最近色が抜けてきてて、年齢的なものですかね。童顔なので、まだイケてると思ってましたが、白いものが混じってきたのです。
旅先で侮られるのも良くないですね。
行商人の方に同行してるんですから、ちょっとは身綺麗な方がいいですよね!
流石、グランさんです。
染めて貰いました。
暗めの茶。白髪染めにしてはいい感じではないでしょうか。
耳も髪で覆えば、目立ちません。
行商のお手伝いをしながら、初めての旅を楽しく過ごし、親子と別れ、徒歩と乗合馬車で移動して、漸く国境の街にやってきました。
入国手続き、商業ギルドへの加入手続き、道具の入手などなど、グランさんとは入国と同時に別れるはずが、色々助けして貰いました。
有難いのですが、ご迷惑を掛けし通しで申し訳ないです。
そんな僕の気配を察知したのか、ここで別れると話し始めました。
グランさんは暫くこの国のダンジョンを巡るつもりだという事でした。
新しく仕入れた道具で作ったポーションを渡しました。
試作品なので、代金はお礼も込みでサービスです。
効き目は保証します。
笑顔で別れました。
新しい耳介を手に入れました。
無くても聞こえるには聞こえるので、無くてもいいかなぁとも思っていたのですが、集音って必要なんですね。
片耳ではこれからのしたい事を考えると不便なんで、作ってみました。
なんだか自分の細胞から作る方法もあるとかで、面白そうだと説明を聞いてたら、適応するかどうか検査すると血を採られました。
まだ作るって言ってないのにぃ〜っと思いましたが、採血とか面白いなぁって眺めて、流されていました。
まぁ、いいかと…。
実際は自分の細胞からは作りませんでした。
理由は時間です。バイヨウとかなんとかをして、自分の細胞を増やして、耳にするんだとか。
時間が掛かるんですって!
そんなに待てません。今ので十分です。
道具は全て揃いました。
さて、やってみましょう!
ワクワクです。
まずは近くのダンジョンに向かいましょうか。
足取り軽く、背中の荷物も苦になりません。
移動薬屋さん開店です(^-^)
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魔獣の設定的な?》
野生動物が魔石を体内に取り込んで、定着した個体が変態した生き物。なので、数は少ないようなそれなりにいたりします。凶暴種もいたり、のんびり種もいたり、色々です。
猫又みたいな感じかな?(^-^;
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