【6】アーベン国
えーと、今回も痛ーい感じなんで、薄目でお願いします。
焼印を更に焼き切ってしまおうと思っています。
麻痺系の魔法をかけて欲しんです。
教会でして貰ったのと同じものをして欲しいと持ちかけたんですが、断られてしまいました。
使えませんねぇ。おっと失礼。
麻痺は薬でなんとかしましょう。
AプランがダメならBプランです。
ただ、この薬の効きが、今からする事に効果が得られるのかどうなのか疑問なのです。
薬的はいい出来なんですが…。自分を信じましょうか。
夕暮れはまだなのですが、外が暗いです。
雨でも降るのでしょうか。
振られる前に宿屋に入れたのはラッキーでした。
用意して貰った荷物を受け取り、自分の部屋に移動します。相談があると言ったので、冒険者もついて来てくれました。
夕暮れまでには済ませたい。
取り敢えず、宿屋の主人に火かき棒を借りて来ました。何が適切か分かりませんので、ご相談がしたいのです。
「改めてご挨拶を。エミルと申します。旅は初めてなので、御指南よろしくお願いします。ーーーこちらは、回復ポーションの詰め合わせです」
ご挨拶と魔力回復や体力回復などの回復修復ポーションのセットをお渡します。
田舎で薬屋をしてた時にS級の冒険者がお求めになっていたチョイスです。多分間違いはないでしょう。
よし! 受け取りましたね。
「よろしく。俺は、グラントリー。リーでもグランでも好きにどうぞ。ーーーえっ? いいの?」
小瓶のセットを嬉しそうに受け取ってくれたので、さっさと麻痺系の魔法をかけて欲しい話をしたら、断られたのです。
粗品作戦は不発ですかね。
耳の状態を見て貰ったりした時も、若干引き攣ってましたね。
冒険者ですよね?
いい人なのでしょうね。
どういった魔法がお得意で?などと雑談をしつつ、手早く耳の処置をして、最初のお願いを断られたので、プラン変更なのですが、どうしましょうかね…。
炎系の魔法を得意としてるので、攻撃系魔法しか習得してないとの事でした。
おや、不発でもなかったようです。使えます。
このお人は元々面倒見の良い方なのかも知れませんね。
火は使わせてもらいましょう。今の僕はなりふり構ってられない感じで、ちょっと焦ってます。早くどうにかしたいのです。
荷物の中身の衣服を確認して、着てる服を脱ぎ出した僕にグランさんは慌ててます。
ん?
あー、この小さく幾つも散ってる痣ですか?
気持ち悪いですよね。僕も変な病気か虫刺されみたいで嫌なんですよ。仕事でついた痕です。仕方がないじゃないですか。
「この印を消したいんです」
見て貰った方が早いので脱いだのです。赤い顔のグランさんはサッと真面目なお顔になりました。
「これは……魔法陣か?」
「よく分かりません。切り取った方がいいでしょうか? 剥ぐのはどうしたらいいですかねぇ。生きてる状態で、自分にするのは、どうしたら一番いいのかと思いましてね。焼いて剥がれたらラッキーかなとか思ったんですが…」
灰などを掻き寄せる為についた平たい部分を使えば広い面で焼けると思って、火かき棒を借りて来たのです。
ジュッと焼いて、皮がべろーんと鉄板についてくれればいいかなってね。
もっといい方法があればそれに乗りたいです。
「んー、何かを抑えるって意味だと思う。ダンジョンで似た感じの見た事あるよ」
顎に手を当てて何か考えているのか、ぶつぶつ言っておられます。
「これが外の誰かと繋がってるとかないですか?」
自分の仮説を確認したいです。僕はこういうのは詳しくないのです。
「魔力の繋がり? 失礼。ーーーーそんな感じはしないなぁ」
ケロイドのボコボコした歪な皮膚に指が添えられます。気分のいい感じのしない代物に躊躇なく触れるものですね。
そういえば、領主さまはコレを触ったりしておられましたね。凸凹が面白かったのでしょうかね。
「では、焼いて誤魔化せればいい感じですかね」
この模様のような記号が分からなくなれば良い訳ですね。
「そうなるかな…。ソレで焼くの?」
顎で指された方を見ます。火かき棒が転がってます。
はい、あれで焼くつもりですよ。
「そのつもりです。魔法で焼いたら、魔力残像みたいなのが残るのは、なんとなく………嫌?」
上手く言葉に出来ません。
魔力には匂いのようなものがあるらしいのです。自分は魔力が弱い所為か全く感じません。でも、自分以外の匂いが残るかもと思うとあまりいい気がしないのです。
ん?
今、ふと思いついた事がありましたが、あり得ないので振り払います。
馬鹿馬鹿しい。領主さまがこの冒険者の匂いを感じてたのではなんて。同じ火属性ですね…。それがどうしたというのか。はい、ここまで!
今は関係ない事です。
「あー、分かったよ。強い火力が必要?
その助力なら大丈夫だろ?」
やはりこの方はいい人です。色々察してくれます。
「ありがとうございます。種火を作るので、よろしくお願いします。これから、麻酔を打ちます。弱い麻痺剤も飲もうと思うのですが…」
痛いのは嫌なので、あの実などから作った麻痺剤を使います。ただ問題が…。
「が?」
先を促されました。
「初めての使用なので、効き方が理論値だけなのです。効きが浅い事はないと思うのですが、手に力が入らなくなったりして、アレを落とすような事になったら……サポートをお願いします」
火かき棒を指さします。
火傷はここだけにしたい。部屋の損害は避けたい。
「了解した」
針に麻酔液を毒を塗る要領で添付して、焼印の周りに打ちます。焼かれたところの表面の神経は殆ど死んでしまってるようなので必要はないのです。
触られても触られてるなぁ程度でしたしね。
内部はさっき飲んだ麻痺剤でなんとかなるでしょう。
先ほどから火かき棒の先端が赤々と熱せられてます。熱そうですねぇ。
脱ぎ捨てたシャツを捻り巻きつけて手と火かき棒を固定します。
フッ、フッ、フッ……と短く息を吐いて、気持ちとやるタイミングをみます。
フーっと思いっきり吐いて、息を止めると一気に押し当て、全消ししたかったのでズラしながら全体に焼いていきます。
焼ける臭いは、慣れません。
慣れたくもないッ。
もうやられるのは嫌です。できる事は全部、自分でしたいのです。
ズルッと火かき棒がズレ落ちた。
固定が甘かったようです。やはり手には力が入らなくなりました。
グランさんが素早く助けてくれます。
いい人です。出会えて良かった。
消毒しないと……
やばい…気が遠くなる。薬が効きすぎた。
結果は上々でした。
気づいたら朝でした。
グランさんにはお手数をお掛けしましたが。ほんといい人です。よく冒険者としてやってますね。心配になってしまいます。
事前に用意してた消毒セットで対処してくれたようです。
火傷の状態も上々です。
あー、あとは、下着つけない主義?とか変なことを訊かれました。
下着も無事入手でき、旅支度バッチリです。
地図を広げて、朝食のサンドイッチを食べながら、レクチャーを受けます。
行き先も決まりました。
『アーベン国』
魔道具の最先端技術産業の国。
道具類の技術が進んだ国です。
欠損した肢体の義肢を作る技術も発達してるそうです。
薬作りの道具など仕入れたい物もありますしね。
そして、お隣の国というものいいですね。
行きましょう!
気を失って、よく寝てしまいました。
麻痺剤にちょっぴり麻酔系を混ぜたのが思いの外、効いてしまいましたね。
久々に調合したからでしょうか。加減は今までと同じだったんですが。
あはは…。
笑い事ではないのですが、翌日になってます。
後ろも気になりますし、さっさと旅立ちましょう。
自分は夕方には屋敷に帰ってるはずなのです。探されてる事でしょう。
あの森の状態を見つけてくれれば、獣に襲われ死んだと結論づけて欲しいものです。そうなれば大成功です。
足取り軽く出発です。
国外まであと少し。
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