後日談】ドラゴンの日常(火竜視点)
「たのもう!」
ビリビリと早朝の空気に美声が響く。エミルが住んでいるオアシスの屋敷に来た。
太陽が薄っすらと光を滲ませている。
明るくなって来ているのだから、人の活動時間であろうと来たのだが、返答がない。
屋敷の中を探ると動く人の気配。
寝ておったのか。
人の子とは、寝坊助なのだのう。
辺りは朝靄で煙って、白い光が乱反射し始めた。太陽が顔を出し始めたのだろう。
グランのところへ行く前に、懸案の事を頼みに来たのだが、暫し待つ事にした。
ダボっとした服を着て、髪をぼさっとした小さな光の子が来た。
最近は光の力は弱く、色々変化しておるが、本質は変化しておらん。面白い者だ。
「どうしたの? ドラゴンさん」
「寝ておったのか。寝坊助だの」
「ドラゴンさんが早いだけだから」
そうか、早いのか。
グランを怒らせそうなので覚えておこう。
「中入って。お茶用意するから。お話があるんでしょ?」
「お前は話が早くて良いのう」
尻尾が揺れてしまう。この子は我の事をよく分かるようだ。
大きい方が茶を用意しておった。こっちはどうも苦手じゃ。側にいる精霊の声が騒々しいのが原因なのだが、精霊は楽しいそうなので、邪険にはしておらん。
「僕、顔洗ってくるぅ〜」
エミルがペタペタと離れて行く。
此奴と二人っきりなのか?
気まずいのぉ。
茶を勧められる。
此奴も気まずそうだ。
無言で茶を啜り、焼き菓子を摘んで待つ事にした。
ヴィクトルと言ったかの。奴は調理の準備をし始めた。互いに顔を合わせる必要なくなって良い良い。
戻って来たエミルが、呆れた声で話し始めた。
「暇なの? ダンジョンはどうしたんですか? 貴方ラスボスですよね?」
なんだ、あれか。
もう幾年もやってると飽きるので、人の子がしてるという当番制というのを導入してみたので、今日は自由じゃ!
「暇ではないぞ。ダンジョンは黒竜に任せて来た。ギルドにも伝えたから、ラスボス欄もそう書かれてると思うぞ」
胸を張って言い切れる。
やましい事は何もない。
グランのところに行くから忙しいのだ。
で?という顔をしておる。
そうじゃった。
「グランがの、全裸で歩くなと申すのだが。服はのぅ、飛ぶにしても尻尾を動かすにも不便で、外向きの用事や式典ぐらいしか着んのだ」
コレは、相談というヤツじゃの。
人の事は色々調べてるからよく知っておるぞ。
「式典?」
「我はコレでも長じゃ。外交など色々面倒な仕事があるのじゃ」
番が顔を見合わせておる。
何か変な事を我は言ったか?
「で、僕たちになんの用?」
そうじゃった!
エミルと話しておると、ゆったりまったりしてしまう。
「エミルは、面白い布を持っていたであろう? あれな布を作れるところでは、動きやすく耐久性のある服ができるのではないかと思ってのぉ〜」
羽を緩くクニクニと動かして見せる。
「あー、あれね。アーベン国で購入したんだよ。あの国は魔道具とか進んでるから……。あー、グランさんと勝負し易い服が所望なんですね」
話が早い。相談して良かった。楽しくなって笑顔を作ったら、怖がられた。
「お前は、ほんと話が早い。頼む」
話は終わりじゃ!
さて、グランのところに行くとしようか。
「えっ? 頼まれるんですか? 自分では? 自分の服ですよね?」
エミルが捲し立てておる。そうか。自分の服だから自分で。当たり前じゃのう。だが……
「んー、我が国を跨ぐと色々と五月蝿いのじゃ」
はっきり言って面倒臭いのじゃ。頼まれて欲しいのう。
顎先をカキカキ悩む。
「ーーーー分かった。引き受けるが、サイズが分からん」
ヴィクトルが引き受けてくれるらしい。
番なら同じ事だな。こっちに乗ろう。
「あー、細く採寸して作ったのがあったのぅ。明日持ってくる。今からグランのところに遊びに行くから忙しいのじゃ」
アレは、国の者が我の身体を測りまくって作ってくれた物だ。気に入っておるのだ。民の者の気持ちが篭っておる。
肩を回して準備運動をする。
ここを往復してから、グランのところでは、勝負が時間切れで引き分けじゃ。
なので、明日で良いであろう。
急がねば。
シタシタと尻尾が揺れる。
「分かった。探してみるから。明日か…留守ならここに置いて行ってくれ」
ヴィクトルが手を差し出して来た。
おお! 締結というヤツだの。
手を握る。火属性の強い魔力が流れてくる。
気持ちのいい魔力じゃ。
こちらも流してやった。
暫く魔法が使いやすくなるじゃろう。
エミルが頷いている。
良き物が手に入りそうじゃ!
シタシタと尻尾が揺れた。
気分爽快じゃ!
グラン待っとれッ。
次は、この話の対です。エミル視点です。
次ので最後にしようかなと思ってます。
思ってる辺りは書いたかなぁと思うので。
また書きたくなったら、連載中になるかと思います。
そうそう、エミルがドラゴンの事がなんとなく分かるのは、動植物大好きだから。動物の機微に聡い。人に対しても発揮するけど、例外が居ましたけどね。恋ってヤツはッ! はっ!脱線。
ドラゴンはエミルにかかると動物って事です。神聖魔獣なんですけどねぇ。
感想や星やいいねを頂けたら嬉しいです。
感想欄の↓下の方にスタンプや匿名でメッセージ送れるの設置してあるので、使ってみて下さい(๑╹ω╹๑ )




