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後日談】殿下の日常(王太子殿下のお話)


「これは、これは……。やっと連れてきたら、また…随分と…様変わりしましたね」


ヴィーが連れてきたエミルの様変わりに、なんと言えばいいか、言葉が見つからない。


白く輝くようなオーラが消えている。

髪は茶。目だって。これは、平々凡々。


入れ墨の提案から、改善案件であったので、研究院に丸投げしておいた。

研究院から図案を幾つか上げてきたので、それを見せようと呼び出したのだが。

手にしていた図案を落としかける程、驚いた。


「なんやかやあってですね……元に戻りました。あっ!背は縮んでたんですよぉ〜」


エミルが驚く俺を見て、驚いているようだ。

気まずさをなんとかしようと言葉を並べている。

後半はなんだか不満そうだ。


自分の容姿の変化にそれ程困っていないようだ。むしろ、こちらの方が本来の自分なのだと主張している。


これは、そうだな……再鑑定が必要なようだ。

益々、研究院から隠さねばなるまい。


ーーーー面倒臭ッ!


「報告はざっくり聞いてたが、エミルからも聴くとするか」

面倒臭いが致し方ない。


研究院が関われば、確実に二人が一緒にいるのは無理だ。然すれば、ヴィーが悲しむ。否、荒ぶる。


ん? エミルが研究対象としてココにいる事になれば、ヴィーがココにいる事になるのか?

それは、いいなぁ……。イカンイカン!


そんな事になれば、精霊付きの火力で城がマズイ事になるのが目に見えてるだろう。しっかりしろ、俺!

先程、自分でも『荒ぶる』と言ってただろう。


危なかった。私欲で危機を招くところであった。


茶の用意をしながら、考え事をしてたら、ちょっと渋めになってしまった。

んー、まぁ…いいかッ。


図案を渡して、再鑑定の器材を取りに部屋を出た。

言い訳は…適当にするか。


なんだって、あの平々凡々なおっさんがヴィーを虜にするんだ。小柄なだけで、童顔のただの地味面のおっさんではないか。

釈然としない。

光属性だって、今のアレでは、ほぼないのではないか?

癒し効果もなかろう?

薬師としての腕は確かなものの様だが、特筆すべき事柄でもない。

何がいいんだか……。


さっぱり分からん!


ヴィーは、領主など継ぐ事にならなければ、近衛としてココに居たはずなのに。

俺も一人っきりでストレスに晒される事なく、アヤツを揶揄って過ごせたのになぁ。


アイツは、そこそこ優秀なのにサボり癖が玉に瑕だった。

剣の腕ももっと真剣にすれば、学院トップも夢ではなかったはずだ。魔法も。


剣技と魔法を合わせるなどという事を、事も無げにやるものだから、俺が評価科目を新設する様に手を回したな。

本人は皆が出来るものだと思っていた様だが……。


そうだ。アレも面倒臭かった。


アレで、騎士団への就職もすんなりなるはずだったんだよなぁ……。


領主なんてものになりやがって。

呼びつけるにも、気を使う。

家の事だから、仕方がない事だ。


ゴネても致し方ないではないか。

しかも、あの領地は隣国との防壁だから、丁度良いというのが、父の言い分だったな。

兄たちも亡くなって、三男のヴィーにお鉢が回ってくるとはな…。

アイツに領主など向いてないのだ。


まぁ、なんでもやれそうだがな。

そうそう、色々してくれて、部下から上がってくる報告書を読むのが楽しかった。


しかし、突然荒ぶりやがって何をしてくれるってのもあったが。


見てて飽きないんだよなぁ。


揶揄い甲斐のある男を…取られてしまったよ…。





「やはり、光属性は無し。ーーーエミルは、成人の時もコレと同じ結果だったんだね?」

だから、見落とされて、後発発現で見つかった。

石板に表示されてる属性割合に光属性は無いと表示している。


「そうです」

「ーーー放出が原因か? 以前は何で放出したんだ?」

「僕、成人前に死にかけました」

明るく何か言った。


呑気に渋めの茶を飲んでる。


ーーーー今なんて言った?


「エミル、さっきのを、もう一度」

手をプリーズと向ける。

「ん? あー、死にかけました」

「死にかけたの?」

聞き間違いじゃなかった。


「流行病で。両親は死んでしまいました。僕はなんとか持ち直して。教会のお陰で、学校も出れたし、仕事も出来て、死ななくて良かったです」


茶を飲みつつ、菓子を摘んでる。その仕草のなんというか…のんびりとした空気が漂ってる。


「あー……」

明るく言ってくれてるが、軽い口調だが、重いんですけど!

「そうか…」


自分自身しか救えなかったという事か?

コレは伝えない方がいいな。


こちらの反応に不思議そうに見遣ってくる。

ヴィーは知ってるって顔で、頭撫でてるし。

よく言えたねって感じか?

おっさんだぞ。童顔だけど、子供じゃないぞ。小さいけど、おっさんだ!


お前、なんちゅ甘い顔してやがる。

見た事ないよ、そんな顔。


ーーーーお前は分かってるのか。


「また発現してくるのかね…。入れ墨はその時でいいか。魔道具でもいいし、考えといてくれ」


「分かりました」

元気にニッコリ応えてくれた。


ーーーー嗚呼、コレか。


俺も、時々茶に呼んでいいかな……。


癒しはしっかりあるよ。

呑気なのが玉に瑕だ。


ホント玉に瑕。

お似合いの二人じゃないかね。


ーーーー俺もパートナー欲しい!

癒してくれるのを所望!


政略結婚の話しかないけどな!


二人を見送って、仕事に戻った。




ーーーーーー

おまけ。



「お姉さん! お久しぶり」


「おや? アンタ変わらないね。なんかいい薬でもあるのかい?」


「覚えてくれてた?」


「あんだけ話に花が咲いたお客さま忘れる訳ないだろ? で?」


「仕事の話。この図案どう思う?」


「ーーーーダッサ」


「だよね〜」


「アタシならこうするねッ」


赤鉛筆でガリガリ書いていく。


「ありがとう! 採用されたら、デザイン料たんと出して貰うから」


「この宝石貰えただけで十分だが、期待せずに待ってるよ」


その後、たんと入ったデザイン料でお店を改装した。




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