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後談】精霊たちの騒めき(7)

ちょっぴりエッチ。



「寝てしまいましたね…」

冒険者装備のグラントリーが、私の背でスヤスヤ寝ているエミルを見遣っている。


城下から馬で途中の町まで移動。転移可能地点まで徒歩で移動途中、さっきまで陽気に話しながら歩いていたエミルが口数が少なくなり、ふらついた思ったら、崩れるように倒れた。


地面に突っ込む前に抱き上げたが、抱えた彼はスヤァ〜と寝ていた。


えーと、道のど真ん中で寝ます?


そして、今、私の背中で眠っている。

荷物はグラントリーが持っていてくれてるが、なんとも気まずい。


「こちらに戻ってきてまだ間がないんだ。自分でもどこまで動けて、どこまで出来るのか分かってない部分もあるのだろう…」


無言も気まずいので、エミルの行方不明から今までのざっくりとした経緯を話す事にした。


書面にすると言ってた内容だったが、話すのに大した事ではない。

内容は大した事だが。


「信じられん事だが、こうして彼は還って来てくれたのは事実だ。ーーーー本人が順応し過ぎてて、摂理から考えたらどうなのかなど忘れてしまうが…」


「信じます。エミルさんがここに存在(いる)んですから」


もうすぐ転移可能地点。


グランの国は転移魔法が制限されているから、こういう移動になってしまう。


一度オアシスで準備してから火山島で落ち合う事になった。場所は、ギルドでいいだろう。

一緒にと誘ったが、腕が鈍ってるから鍛錬しながら向かうという事だった。

この男もマイペースだ。

転移魔法も使えるらしいから、3日後辺りに落ち合う感じか。


この時行動を一緒にしておけば良かったと後悔したのは後の話だ。






「僕が寝ちゃったから、こうなったの?」


ドラゴンダンジョン近くまで来ていた。


準備をし、エミルの目覚めを待って即出発した。

3日と掛かっていない。彼は居なかった。

火山島の冒険者ギルドでグラントリーについて尋ねると既にダンジョンに入ったとの事だった。

上級ダンジョンは申告制なのが助かった。

隣のエミルの視線が痛い。


ドラゴンダンジョンは上級ダンジョンの中でも危険という事で、A級でも上位クラスしか入れない。厳密には入ってもいいが、自己責任で。命に保障は出来ないが入る事は出来る。


私はA級なのだが、規定は満たしていない。


「グランさんてS級なんだね。ヴィクトルさまは、何故A級なの?」

貶してる訳ではないのは目を見れば分かるが、胸に刺さる。


「あなたを探す為に冒険者になりましたが、行動の自由度が上がるというだけで、A級にしてただけで。その後は、依頼やダンジョンクエストはしてません。なので、上がってないだけです」


ふーんと納得した感じだが何か考え始めた。


「ヴィクトルさまなら大丈夫だと思うけど、僕、何にも出来ないし。冒険者二人だったらって思ってたのに…」


「とりあえず入りますかね」

手を取ると、抵抗があった。『待て』という事らしい。


「グランさんの性格からして、一人で解決しようとしてるんだと思うのですよ。で、ブランクはあるとは言え、S級だから追いつくにはすっ飛ばす勢いが必要だと思うんですよね」


「まぁ、そうですね」


ムフフと言いたげな表情で見上げてくる。

ちょいちょいと指で呼ばれた。

「何ですか?」

疑いもなく顔を寄せる。耳打ちか?


顔を傾けると両手で顔を挟まれ、唇を重ねてきた。

油断した。深い口づけ。


姿勢が辛いので、エミルを抱き上げるが、何だってこんなところでキスなどせねばならないのか、疑問に思いながらも、その行為を受け入れていた。


しかし、可愛らしい行為に、イタズラ心が刺激される。

ちょっとこちらから仕掛けたら、驚く勢いで引っ込み、唇に噛みつかれた。


痛ッ


錆の味に血が出たのを自覚する。

舐めようとすると、エミルが透かさず舐めとった。


「んー、傷は治ったね。ヴィクトルさま、イタズラはいけないのです」

呑気な声音に、微笑んでしまった。


腕の中のエミルはなんだか偉そうです。可愛いけどね。


腰のポーチから小刀を出すと指先をチョンとついて私の口に突っ込んだ。

「舐めて」

舐めますが…。

道具を仕舞い、スルリと腕から降りる。

ポーションで傷を治し、魔法の詠唱を始めた。


エミルの魔法を本格的に見るのは初めてで、柔らかな魔力が纏わりついてくるのは、擽ったい気分で、なんとも愛おしくなる気配に抱きしめてしまいそうだ。


実際は自重した。

詠唱中の横槍は生命の危険も意味する愚かな行為だ。


「よし! コレで、中ボス程度までのダンジョンモンスターには気づかれずに中を進めるよ。それから、僕は探査魔法が得意だから、レーダーになる」


クピクピとポーションを飲んでる。


私の後ろに回るとぴょんと飛び乗って、私の背にピッタリくっついた。


「さぁ、出発ッ。最短ルートでグランさんに追いつくよ」


愉快ですね。

エミルさんの馬になった気分で、ダンジョンに踏み込んだ。




モンスターにほとんど遭遇せずに奥に進んでいく。遭遇してモンスターの横を通り過ぎても何の反応もない。


随分とショートカットしたと思われる。


「ヴィクトルさま、そこの奥に小部屋がある。緩衝エリアみたい」

耳元で囁き。

指示通り入り込む。確かに不穏な気配は何もない。

背中からポンとエミルが飛び降りる。


床に手を置くと何か探ってる。


ここまでほぼ駆けて来ている。ダンジョン攻略としては邪道な気がしてならないが、ダンジョン攻略が目的でないのだから大目に見て欲しいところではある。


「2/3程進んだね。まだ追いつかないって事は、もうラスボスなんだろうか…。どう思う?」

キリリとしたエミルを見遣りながら、座り込む。

はて…抜かしたか?


「探査はどこまで伸ばせる?」


暫く黙ってたが、「最深部にあと少しってところまでしか届かない感じ…」と返ってきた。

割と広範囲だな。


「エミル、少し休もう」

おいでと手を広げる。

腕の中にすっぽり入ってきた。


ドライフルーツを口に入れてやる。

幸せそうにもぐもぐしている。

ポーションも飲んでる。


グラントリーが今、最深部にいるとしたら、勝負がつくまで扉が閉まってるだろう。間に合わなかったか。

どうしたものか……。


「ヴィクトルさま……ここって森でもないのに、キラキラがなんで多いんだろう…」


自分のポーチの中も探りながら、ぽやぽや喋ってる。

まだ甘いのが欲しいのか?

追加のドライフルーツを出すと口に持っていく。

「キラキラ?」


そう言えば、城から帰ってきてから、『キラキラが…』と話す事が多くなった。訊こうと思っていたが、なんだか楽しそうにしてるのを邪魔するのも悪い気がしてそのままだった。


「殿下が言うには、コレって妖精さんや精霊さんの感情とかの欠片なんだって」


ふ〜ん……。。。それがなんだと???

何も言えず、見返してしまった。

ほら、ブシュンと不服そうにしている。

困った。


「もういいですよ。キスしておく? ここから上位モンスターだから、繋がり強くしておかないと」

ーーーーなんならもっと深く繋がるか?

なんて思ってたら、ベチッと両頬に衝撃。勢い良く両手で顔を挟まれました。


「えっちな事考えてたでしょ? 今繋がってるからよくわかるんですヨォ〜」


え? 今、頭の中が筒抜けですか?

それはなかなかなエロくないか?

じっとエミルを見てると、みるみる赤くなってきてる。


面白い。


「はっきりとは分からないけど、変な事考えないで下さいねッ」

照れ隠しだろうか。唇を重ねてきた。

場所と行為の目的を忘れそうな程、互いを感じていた。





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