後談】精霊たちの騒めき(6)
まだヴィクトル視点。
「火山島に行く…」
グラントリーがポツリと溢す。
暗い。
コイツこんなに暗かったか?
記憶の中の彼は、明るい人好きしそうな好青年だった。冒険者としては心配になる程のお人好しだった。
黙ってエミルの荷物を猫ババした事で、認識が揺らいだが、第一印象から感じたものは何も変わっていないようだった。
「行きたくなさそうですね?」
エミルが心配そうに、グラントリーの横に移動して、手を握ってる。
恋愛感情云々は無いのは分かっている。
素で心配してるだけなんだが…。
あなたはマイペース過ぎる。相手の様子も見てやってくれ。
「顔赤い。熱ある? 道具あるし、何か作ろうか? ポーション幾つか持ってきてるよ」
見てはいるが、『そこじゃないんだ』と言いたい。言ったら面倒な画しか見えないので放置の方向でいる事にした。
目の前の茶器を手を伸ばす。平常心…。
「だ、大丈夫です。ーーー離れて下さい」
「そう?」
斜め掛けの鞄の中からポーションを掴み出してるエミルは、キョトンとしながら、戻してる。
私の隣りに戻って座る。
そのポーションいつ入れた? 結構な数だな。
「ドラゴンのところに……嫁に行くかもしれない。俺、嫌だから、断りに行く。前の時にちゃんと断ったのに、『来い』って訳が分からない。返しに来いって事かもって、キースが言うし…」
「ドラゴンの嫁?」
思わず聞き返してしまった。
傍観者で居ようと決めていたのに。あくまでもエミルの手助けのポジションでいたかったが。
ドラゴンが気に入った人族を攫っていくのは、今はお伽話だ。
大昔はちょくちょく問題が起きてたのは文献に残るのみ。
絶対数が少なくなったドラゴンが棲む国はあの火山島。
「ドラゴンダンジョンの攻略で、ラスボスの火竜に求婚された。あっ、勝負は手加減されてないよ?
ドラゴンが負けたって偉そうに言ってたし。ちゃんとダンジョンが勝敗を判定してくれたし」
「「へー」」
並んだ私たちは揃って変な反応をしてしまった。
各々頭の中が忙しくて、外への反応が希薄だった。
そこに『荷物』を持ったキースが戻ってきた事で、話を分かりよく纏めて伝えてくれた。
ーーーー要するに、
1年ほど前にドラゴンダンジョンの管轄のギルドにグラントリー宛の手紙が届いたのが始まりだったらしい。
その頃、グラントリーはギルドに全く出入りしていなかったので、周り回って、登録したギルドに届けられ、やっと手元に来たのが、つい1ヶ月ほど前。
火竜からの手紙だった。
そこには『来い』の一言。
考えられるのは、求婚と鱗の事。
話が纏まり、鱗を返そうとなったらしい。
2枚はココにあったが1枚の行方が分からない。
グラントリーに何とか思い出して貰ってる時に、王太子殿下から手紙が来て、思い出したと顛末である。
荷物の存在は『隠匿の布』が隠してて、キースは把握できてなかったらしい。こちらが引く程の猛然の謝罪だった。
苦労が垣間見えた……。
ーーーー
なるほどね。
周りがどんよりしてる中、呑気にエミルの声がした。
「『来い』って言うんだから、行ったらいいのでは? 手ぶらでもいいんじゃないかなぁ。僕、ドラゴンに会ってみたいッ」
喋りながら段々とはしゃぎ始めた。
ドラゴンのところ辺りで、目がキラキラし出した。
「ドラゴン怖いって前に…」
グラントリーが呆然としている。
『フフ〜ン。新生エミルはちょっと逞しくなってるんだよ、グランくん』なんて事を言ってやりたいが、これは私のだけのにしておこう。
後で、手紙に書くけどね。
「んー、ヌシさまと一緒にいたからなぁ。大丈夫になった。それに『来い』なんてフレンドリーな感じじゃん。ね?」
こっちに振らないで欲しい。
みんな注目しないでくれ。
「そうだな」
頷くしかないじゃないか。
エミルは、鼻歌を歌いそうにふわふわと楽しそうだ。
エミルの事はなるべく全肯定してやりたい。
確かに、エミルが言うように裏も悪意も何もなくストレートな気がする。
ただ来て欲しいだけなような…。
エミルは横で、キースさんから受け取ったリュックを背負ったりして、中身を見ていた。
中から布を出す。
「コレすごいんだよ」
不意に布が広がった。
消えた。
エミルの存在、気配が消えた。布が広がったと思ったのに、布もどこだ?!
「凄い…」
言葉を発したのはキースだった。
「リーが被った時は存在が分かったのに、全く分かりません。布だって。存在が薄っすらとしか」
「あっ、ちょっと加減間違えたかな。これぐらいでどお?」
エミルが魔法の強度を変えたらしい。
面白い魔法を使うな。
エミルが魔法を使うのを初めて見た。
「露店の時と同じぐらいですね」
グラントリーは、懐かしそうにしている。
「それでも注目してやっと、そこに居るにが判る程度ですよ」
キースがエミルの周りをぐるぐる回ってる。
「それが『幻の露店』の正体ですか」
ぼやっと私は呟いていた。
「そう!」
ひょっこり顔を出した。得意気だ。
「またしようかなぁ」
「その話は帰ってからね」
グラントリーとエミルと私の3人でドラゴンに会う為に火山島に向かった。
解決編へ。
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