後談】精霊たちの騒めき(5)
ヴィクトル視点です。
準備がいる。
要は、いつ行っていいですか?のお伺いである。
いきなり行くには、手紙を出した時と今の状況が違いすぎるだろうと云う事である。
ギルド便で来た手紙は何年前に出したのか定かではない。
手紙の日付が正しければ、私と別れて、1年もしない内だ。なんだってグラントリーは荷物を持って帰ってしまったのだ?
あの男、荷物の事は、一言も言わなかった……な。
そういう奴には感じなかったのだが…。
手紙の内容は教えて貰えなかった。
殿下宛に来た手紙だし、致し方ないが。
会って訊くか。
エミルは楽しいそうに支度をしてる。
「北は雪の国らしいけど、今、雪降ってるかな?」
と訊いてくるが、知らん。
「厚手のを持っていって丁度いいんじゃないか」
気のない返事ですまん。どうにも気持ちがザワついて落ち着かない。
窓辺で白い小鳥がきゅるんとこちらを見てる。
どの道お前も私ではなく、エミルだろ?
パタパタと私のところにやってきた。
小鳥が愛おしくなる。
なんだか気持ちが末期な気分だ。
何が?とツッコミたいが、自分でも訳が分からん。
撫でようと手を出すとすぐに解けて紙になってしまった。
ムシュンと文字を辿る。
ふぅと息を吐いて、気持ちを立て直す。
目処が立った。
先方はいつでも良いそうだ。今からでも良いと言ってもいい感じらしい。
それなら早い方がいいだろう。
エミルに知らせるべく向かう。
明日朝イチでココを立てば、午前中には入国できるだろう。ゆっくりして午後イチにでも伺うかな。
王太子殿下とのお茶会は負担になったようで、暫く寝込んでしまった。
今度の移動は、徒歩と馬での移動もある。ゆっくり向かうか。
「エミルさん、ドラゴンの鱗を鞄に入れて。準備が出来たら、近くまで跳んで、徒歩と馬で移動し……ーーーエミルさん? 旅してたんだよね? 荷物多いです」
荷物の選定から手伝う事になった。
「これで大丈夫? アレも持って行こうかな」
「要りません。ちょっと行って、荷物回収したら帰るだけです。なんなら手ぶらでもいいんですよ? 途中馬を使うけど、泊まりは確定じゃないです。もっと要らないぐらいです」
「んー、手土産持った。鱗入れた。……やっぱり、採取道具、もう1セット持って行きたい」
何やら不穏な事を言ってますね。
「国外からの植物の持ち込み、及び持ち出しは禁止されてます。いつ入れたんですかぁ。出して下さい」
膨れっ面で試験管やなんやかんやと次々出てきて、鞄の膨らみがスッキリした。
いつ入れたんだ……。
『小柄な絵描きさんなら見たよ』
ふと思い出した。
「スケッチブックならいいですよ」
「ああ! そうだねッ」
机に向かって小走り。
やはり彼だったんだ。ちゃんと旅をしてたんですね。
小柄な文官について行く。
先触は出して置いたので、会合はスムーズに行われそうだ。
久方ぶりに会ったグラントリーは青臭さは消えて、王族然とした雰囲気が漂っていた。
「お久しぶりです。ーーーー申し訳ない」
中身は変わってなさそうだ。
「ーーー詳しくは聞かない事にする。鱗と交換でいいか?」
王族相手に申し訳ない態度だが、冒険者のグラントリーしか知らんしな。
そのつもりで来ている。肩書など知った事か。さっさと返せ。
「ありがとうございます。交換ではないんです。荷物はすぐ持ってきます。鱗は別件で……」
歯切れが悪い。
入ったらすぐにはしゃぎ出しそうな人物は何故か私の後ろの隠れている。挨拶も小さく『こんにちは』ってどうした?
「あのー、グランさん…」
さっきよりは大きな声にはなっているが、まだ弱々しい。
前に出てきたエミルを見て、グランが驚いている。
どうした?
「ドラゴンの鱗ね。ほんの、ちょっと、なんだけど、削っちゃって…。ごめんなさいッ」
エミルさんがぺこりと体を思いっきり折って、手を突き出し鱗を差し出してる。
え? ええ?! もう実験してたの?
時間が止まった?
誰も動かなかった。
「コホン。」
案内してきた文官が咳払い。
時が動いた。
「あっ。ありがとうございます。削ってるのは問題ないです。お手数を掛けまして。贈った物を返してなど非礼を」
受け取って、ホッとした表情で鱗を見ている。
「良かった〜」
やっといつもの音量になったエミルが、くるるんと嬉しそうにしている。
「ところで、えーと、エミルさんで合ってますよね?」
「だよ? どうかした?」
上機嫌だ。
「なんだか、小さくなった? 髪の色も…」
あー! そっか!
説明しようと割って入ろうとしたら、エミルさんが、キッとこちらを見た。
な、何? ちょっと怖いッ。
「やっぱり小さくなってんじゃん! ヴィクトルさまが変わらないって言うから。あなたが育ったと思ってたのに!」
プンスカ怒っておられます。
怖さも忘れて、可愛いさを愛でていた。
グラントリーに向き直ると、嬉しそうにハイテンションに話し出した。
見惚れて、出遅れた。
「話せば長くなるんだけど、簡単に言うと、寝てたら何年か経っててね。起きたら、身体がコレになってて。そうそう、耳もあるよ。見る? 火傷ももうないんだよ」
グラントリーに近づきながら、ボタンを外して見せようとしてる様子に慌てて、抑える。引きずるように引き離す。
「コレは、ほんと長くなるから、手紙書くよ」
早く荷物を回収して帰ろう。
腕の中で暴れてるのを抑えながら、笑って誤魔化す。
「エミルさんだとは分かるんですが。では、手紙待ってます」
よく分かってないだろうに、柔らかく笑って流してくれた。
中身は変わってないなッ!
「グランさんはどうしたの? ドラゴンの鱗どうするんですか?」
スルッと腕から暴れてた勢いのまま突進して行く勢いで抜けて行った。
危ない!
掴み損ねて空を手が空を切る。
グラントリーが受け止めてくれた。
ナイスキャッチ!と言い掛けて、やめた。
ニヤけるな!
「やっぱりちょっと小さい」
引き剥がすタイミングを逸した。
「グランさんも成長したんじゃないんですか?」
胸にむきゅっと抱きしめられてる。
あー、引き剥がしたいのに、まったりしてるエミルさんの様子に躊躇してしまう。
「背は伸びたかな? キース、伸びたかな?」
文官に訊いてる。
「伸びても数ミリでしょう」
突き放したような口調。
なんだか親近感を感じていた。
この空気感はなんなんだぁ。
手がワキワキしてしまう。引き離し難い。様子を見るしか無いのか。
「そっかぁ…。だそうです、エミルさん」
「じゃあ、前がこのくらいだから……うわぁ、縮んでるッ」
ちょっと背伸びして頭の位置を調整している。胸に顔がついてるので声はくぐもってる。
「それぐらいだったら誤差範囲じゃないかなぁ」
「そう?」
パッと顔が上がる。顔近い!邪魔したい!
そもそも『前は』って何ですかぁ?!
「そうですよ」
「そうか。誤差範囲か。うん、分かった」
何だよ、そのほわほわした空気感はッ。
「誤差範囲だから、許す」
抱きついたまま振り返ってそう言われた。
誤差範囲が……墓穴になりそうなのでやめます。
「ありがとう」
釈然としないまま返したが、機嫌が直った。私は何故『ありがとう』って言ってるんだぁ〜。
離れてくれ…ッ
「グランさん、何か困ってるんでしょ? 前に助けてもらったから、手伝うよ?」
「え……、でも、、、大丈夫です」
この男も分かりやすいな。困り事なんだろう。
トトトとエミルさんが戻ってきた。
下を向いたまま、私の服をきゅっと握って、じっとしている。
暫くして、顔が上がった。見つめてくる。
自分でなんとかしたいが、無理なのかもで、私に助けて欲しい……かな。
あー、お願いですね……。ああああ、分かったよぉ。
「エミルさんの想いに添いますよ」
よく分からないという顔。
「力になります」
言い直した。
パッと顔が明るくなった。
抱きついて来そうな感じになったのに、キースというのが声を掛けてきて、エミルの気が逸れた。
「立ち話も何ですので、あちらに…」
促される。
「『荷物』をお持ちします」
お茶席を整えると消えた。
帰りはすぐとはならなくなった……な。
みんな、顔合わせになりました( ̄∇ ̄)
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そろそろ息切れが…。
元気(MP)下しゃい_φ( ̄ー ̄ )
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