後日談】王子としての日常(グラントリーのお話)
グラントリーの帰国後の様子です。
ヴィクトルと砂漠の国から分かれて、数ヶ月あたりかな。
よろしくお願いします。
この紗は良く出来た布だ。
綺麗に畳んだ布を広げて被る。
ーーーー落ち着く……。
「それ、返しておいでって、何度も言ってるよね…?」
『隠匿の布』なのに、この男は真っ直ぐここに来る。
どうして分かるんだろう…。
布があるだけだぞ?
布だって存在は希薄なはずなのに。
俺はちゃんと布に入ってるぞ。
仕方なく顔を出すが、不満だ。
「嫌だよ」
不満を全面に、言い切る。
「珍しく粘るね…。元の場所に戻して……無理か。そうだ。持ち主の里にでも返してあげようね?」
しゃがみ込んで、諭してくる。
この男は昔っからこうだ。
嫌じゃないけど、今回はとってももやもやしてしまう。
んー、干渉しないで?
「あー…あの男にとか?ーーーーーヤダ」
「リー、わがまま言わないの。未練たらしく、というか、なんで持って帰って来てるの? 人の物を勝手に持って来ちゃダメだよね?」
俺はもう子供じゃないんだ。
少ししか歳が変わらないのに、お兄さんポジションなんだよなぁ。
「だって、アイツに渡したくなかったし、コレが俺の手元にあったら、彼が取りに来てくれるかも知れないだろ?」
「その彼は、行方不明なんだろ? 遺族に返さないと」
「エミルさんは死んでない!」
布を被った。
「あー、ごめん…」
似たような事を幾度となくやり合ってる。
幼馴染みで、今は俺の側近として配属されたキースは、エミルさんは死んでると思ってる。でも、悪気があって言ってるんじゃないのは分かってる。俺の為を思って言ってくれてるんだ。
「彼さんがここにコレがあるのは、その砂漠で別れた人なりに知らせないと分かんないよ?」
そう! そこなのである。
あの時、ヴィクトルさんに渡そうと思ったんだけど、土壇場で何も言わずに持って来てしまった。
始めての衝動。
こんな意地悪な事して、初めて過ぎて対処が分からない。
『ごめんね』って渡すには時間が経ち過ぎてしまった。
言い訳さえ思いつかなくて、道具類を綺麗に手入れしたりして、エミルさんが取りに来てくれるのを思い描いていた。
「それに、彼さんに正体明かしてないんでしょ?」
「むー。S級に昇格したら、もう一度告白しようと思ってたんだよ。その時に明かすつもりだった。お嫁に来てって言うつもりが、ドラゴンダンジョン出て来たら、居なくなってるんだもん!」
あーっ! 自分が子供っぽい事を言ってるって分かってるんだよ!
「で、ドラゴンに嫁に来いって言われてるんだよね?」
「断った」
「鱗貰ったんでしょ?」
「だって、ギルドへの攻略報告に必要だし…」
「それって1枚で良かったんだよね? なんで4枚も貰ってるの?」
ドラゴンの話題に移って、気分が落ち着いて来た。
「あのドラゴン野郎が、俺が『何言ってるんだ?』って考えてる間に、手の上に鱗を積み上げただけだよ。痛いだろうから1枚で良いって言ったよ? 傷が付いたら、生え変わりで取れるからって。俺いっぱい切り込んだし〜。自分で剥いでたけど、大丈夫じゃないの?」
ニコニコと鱗を積んでたドラゴン野郎を思い出す。
「ーーーーそれって、ある種の求愛行動だと思うが……。断ったんなら大丈夫か?」
キースは、リュックの中を見てる。
スケッチブックを出すとペラペラ捲って、あのページで止まる。
「この人に返すべきだって。リーも分かってるんだろ?」
「ーーーーー分かってるよ」
俺が会ったヴィクトルよりは数倍柔らかな表情の彼が描かれてる。
エミルさんがどんな気持ちで描いたか……見れば分かるさ。
「キース、『グランさん』って言ってみて?」
自分でも情けない声だと思ったが、言っていた。
「ーーーーキモッ」
布から出て来て、キースを抱きしめてみる。
背格好はエミルさんと同じ感じ。弱々な感じも同じ。でも違う。
「あー、あー…『グランさん』? これでいいか?」
「ーーーーーーやっぱり違うんだよなぁ」
「当たり前だろ」
胸に顔を押し着けて不貞腐れたキースが唇を尖らせて、されるがまま抱きつかせてくれてる。
「私が留学から帰ったら、お前が武者修行及び国外視察に行ったと聞かさせた時の驚きを知らしめたいわ。
生きた心地がしなかったぞ…。
無事で良かったが、こんなに筋肉つけまくった体にして、逞しくなったのはいいが、王室の剣技を忘れるような双剣って。父が嘆いていた。戻しといてくれ」
近衛騎士団の団長が彼の父で俺の剣の師匠。
兄たちもだが、俺はまだ免許皆伝まで行ってない。
その上、冒険者仲間に双剣の達人がいて、一目惚れ。切り替えてしまった。
S級の冒険者になった今は超がつく腕前である。が! 王室の剣とは違うのが問題で…。
「父や兄たちは好きにしていいって言ってくれたよ?」
強請ってみる。双剣気に入ってるんだよねぇ。
「甘いんだからなぁ。王様も王太子殿下たちも…。胸筋って気持ちいいな…」
キースがもそもそとなんか言ってる。
「え? そう? どんな感じ?」
「んー、ふかふか? 張りもあるし…。弾力がちょっとクセになりそうな…」
胸に顔をフニフニ擦り付けてくる。
仕草は可愛いんだ。
エミルさんぽい感じもするんだが、キースは何故か誰も呼ばない『リー』と昔から俺を呼ぶ。
『グランさん』って呼んでくれたら、エミルさんぽい感じで幸せ気分だけでも味わえるのに…。
「私を代替にしてないで、返す算段をしなさい」
スイッと腕の中から離れて行った。
第3王子といっても何もしないでいい訳ではなく、それなりにお仕事がある訳で、これのスケジュール管理や何やらをキースが仕切ってくれてる。
その勉強の為と見聞を広める為に、4年程留学してくると旅立ってすぐに、俺も旅立った。
父も母も兄たちも笑顔で送り出してくれた。
キースが居たら間違いなく止められていたので、楽勝の旅立ちだった。
そして、俺は運命の人に出会ったと思う。
ハァァ、エミルさんどこに行っちゃったんだろう。大事な荷物置いたまま。
宿屋の女将さんがなんとなく取っておいてくれていた荷物。
返さないとなぁ……。
返したくないなぁ……。
なんとか時間を延ばしたい。手元にもう暫く置いときたいが、キースとこのやりとりをするのも少し飽きた。罪悪感もある。
なんとかはしたい……。
!!!
いい事を思いついた!
早速お手紙を書く。
ちゃんと正式な王子としてのお手紙。
俺の印章の封蝋もする準備もした。
宛名はエミルさんのお国の王太子殿下。
以前兄のお供で行った時に顔見知りになってる。ちょっと浮世離れしたふわふわした印象だったが、噂ではちゃんと王太子をやってるようだ。
その手紙にドラゴンの鱗も入れる。
手元に一枚しか残らないが、記念品としては一枚で充分だ。
ちなみに、鱗の行き先は、1枚はギルド、1枚は王様にお土産のひとつで渡した。
そして、残った片方を手紙に入れ、封蝋。
更に厳重に包み、ギルド便にする。
各地のギルドをリレーしながら、冒険者の手を介して目的地のギルドへ到着した後、包みが開けられ、そこから宛先に届けられるのんびりとした便である。しかも時折り行方不明になったりするちょっとリスキーな郵便システムである。
さっさと出してこよう。
部屋の窓から外に飛び出した。
3階の窓から人が飛び出したら、びっくりされるが、指を口の前に当てて、ニッコリ笑えば、引き攣った笑顔で皆許してくれた。
キース以外は皆こんな感じだ。
なんで小さい頃と同じように接するのか。もう守って貰う必要はないんだけどなぁ。
「お手紙出して来たから」
書類を手に戻ってきたキースに笑顔で報告。
「誰にですか?」
眉間に皺!
何でだよ〜。
「エミルさんの国の王太子殿下宛」
パッと明るい顔になった。小春日和の笑顔。そっちの方がいい。
「それはいいですね」
これで、あの不毛なやり取りはなくなる。
いつ届くかなぁ〜。
番外編スタートです。
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◆今回のグラントリーの補足情報〜(^-^;◆
ちょっと拗らせ気味ですが、彼とっても若いんです。
エミルは初恋になるのでしょうか。
昔は小さくて力も弱くて風邪をよく引いたような子どもでした。今は筋肉でパツパツです。立派に育ちました。
まだ筋肉は育ちそうですが、式典などの服が着れなくなりそうなので、キースから筋トレ禁止を言い渡されてます。
仕方がないので、剣のお稽古頑張って、筋肉育ててます。
ドラゴンの話は後日になります。




