【終】染まって
本編はこれで最後です。
静かだ。
とっても静かです。
行ってしまったのでしょうか。
気配はあるので、いなくなった訳ではないのは分かるのですが…。
気になります。
気になる…。
好奇心というのは、危険なのだとあの旅で何度も遭って、学習したはずなのに、学べてないのだと思います。
こ〜っそり目を出します。
!
目が合いました。じっと見詰められてました。射竦められました。
固まって動けません。
「奥さんは居ませんよ? 誰が言ったんです? 私に奥さんがいるような事…」
あ、圧が……。苦しい…。
「い、言われてません。聞いてしまって。奥さまも早くこちらで暮らせばいいのにとか、なんとか…」
もう誰がどうのとか言いません。言ったら、その人が酷い目に遭いそうな、そんな感じがヒシヒシと。。。
僕がビクビクしてるのに、とってもいい笑顔で抱きついてきました。
????
「執事長に相談したんです。あなたを奥さんにしたいって。初めは渋ってましたが、あなたの助言でなんだか色々上手くいき出して、周りはあなたを奥さんだと思ってたのかも知れませんね」
いやいやいや……助言って何さ。
あの時は、好きも、奥さんに、だとかなんも言われてないし。回復要員のお仕事をしてたつもりでしたよ?
「奪われないように、周りに威嚇する魔力を擦り込んでたのに、変な魔力の匂いをさせるようになるし、不安だったんですよ」
おいおい、僕は何も聞いてないぞ。何もしてない。仕事をしてただけだ。
「でも、消えてしまった前のあの夜、私がどんなに嬉しかったか分かりますか?」
なんの事ですか???
軽くパニック。
「あなたが初めて、私の為に贈り物をしてくれた。されるだけだった交わりも積極的に誘ってくれて。やっと受け入れてくれたんだと思って、舞い上がって、少し激しくしてしまいました」
えーと、あのスライムの事でしょうか?
あの過去最高に激しかったのはそういう事?!
少しって、あれ、少しなの?!
「変な薬の匂いをさせてましたが、あれも私の為かと思えば、滾るものがありました」
事前にへばらないように飲んでただけだ。
スライムだって、さっさと終わらせて、寝て欲しかったんだよ。
あがぁーーーーーーッ、おい!
「ヴィクトルさんよぉ〜」
何かが切れた音がした。
胸ぐら掴む。
「好きな相手に対する行いとしてどうなんですかねぇ? こちとら、仕事だと思って全て受け入れてたんだよ」
「エミル?」
男前が顔を引き攣らせてるが知った事か。
更に掴み直して、巻き舌気味に言葉を繋いだ。
「そもそも、お前がはっきり言ってたら、僕だって考えるところもあったかも知れんだろうがぁあ。それがぁあ、なんだよ、散々結構な事してくれてたよなぁあ? 腰が立たない事なんてさぁああ、度々だったんですけどぉお? 僕が薬師として一流だったから良かったけど、まじに殺されるレベルだっちゅーの!」
完全に頭に血が昇ってます。
出来立ての血管を酷使してます。
僕史上初の感情をぶつけてます。
一流なんて言っちゃうくらい気が大きくなってます。
「反省してます!」
大きな声でスパンと言われた。
赤い瞳が揺れてる。
あー……。
ちょっと頭が冷えた。
えーと、初めの方に謝罪を受けた気がする。。。
「んー、なんだ。……僕も、あの頃だったら、はっきり言われても、形式だけ受けてたかも的な、感じだったしな……」
手を離して、皺になった襟を整えてやる。
バツが悪い…。
「僕も悪かった」
何が悪かったのか頗る疑問だが、ここは謝っておこう。
やらかしたなぁと思ってました。
なんだか気持ちを理不尽にぶつけてしまいました。
襟をナデナデ。
「キスしてくれます?」
ヴィクトルさまが、なんだか狡い大人な顔をしてます。
「なんで?」
手が止まった。
「お詫びに」
「あー……」
ちょいちょいと指で手招きした。照れ隠し。
両手で頬を挟んで引き寄せ、唇が掠るようなキスをした。
「これで……いい?」
いい大人が真っ赤なのは自覚してます。
あつ〜。
「あのう……」
ヴィクトルさまも赤いです。
「なんですか?」
まだなんかあるんですか?
「していい?」
耳元に唇を寄せて囁いてきました。
セクシーボイス!
お前は、なんちゅう技を持ってるんだ!
「い、いいですよぉ……」
片やこちらは、しどろもどろの消え入りそうな声で頼りないです。
お互いの気持ちは確かめられました。
彼は僕が好きで、僕は彼が好きです。
奥さまはいなくて、障害は無いようで…。
互いに好きだって分かったら、あれだけしていた、ナニをしたくなるのは分からなくもない訳で…。
裸で寝てる僕の身体は、さっきから僕の意志を無視して、彼を求めてる有り様で…。
なんで裸?!と抗議もしたいところですが、ここに僕が着れるような服もないので……。
ん? あれ? れれれ…?
ヴィクトルさまのでも良かったのでは……?
気づいたけど。
気づかない方向で、そっとしておきましょう。
ま、そこはそれなりに、キスから始まってしまう訳で。
昼間の明るいお部屋ですが、なんならもうどこでも抱き合う勢いもありまして。
要は、二人とも余裕がありませんのです!
もうめちゃくちゃキスしてますよ。
恥ずかしいなんて思っても止まりませんね。
あの夜以来の熱烈なキスです。
あの夜は、彼の舞い上がった行為でしたが、今は、僕も積極的でしてね。
つまり、収拾がつかない状態ですね。
えーと、僕は寝てたので、ほんの数年の感覚なのですが、感覚ではちょっと寝てた気分です。
一方、彼は十数年ぶりですよねぇ〜。
やはり、蓄積したものがあると申しますか。
ハイ、ウダウダ言ってるのは、ここまで!
流されさせて下さい。
仕事とかそんな行為じゃない本心のぶつかりです。
この気持ちの波に思いっきり乗りたい!
素の僕でヴィクトルさまを感じたいのです!!!
キスで忙しく、言葉を紡ぐ暇もありません。手は互いを感じたくて、忙しなく抱きしめて…。
もう二人とも忙しいの。
ムードとかないね。
「んー、ん、んぅ…ぅふぅ…ん…」
キスの合間の声だって、性急さが滲み出てきてて、自分でも切ない。
お布団だってどっか行っちゃってるし。
彼のシャツの前を肌蹴させて、全て脱がす間も惜しんで、肌を密着さえようとシャツの隙間に手を入れ、素肌の背に手を回し、引き寄せるように、ベッドから浮きそうな勢いでしがみついた。
ヴィクトルさまが、察して体重をかけてきてくれる。
重みが嬉しくって、息苦しいのも苦にならない。
ベッドと彼に挟まれた圧迫感は心地よくて…。
早急に彼を受け入れたくキツく抱きつきキスを求めたが、急に恥ずかしさに泣きそうになった。
我にかえちゃったよ。このタイミング?!ってなったけど、恥ずかしくなちゃったんですッ。
逃げたい…。
積極的に求めていたのに、逃げに転じていた。
すると、ヴィクトルが逃すかと追いかけてくる。
「んーーーーッ」
!!!!!
「ん! んーーーーッ」
ペシペシ叩いてもびくともしない。
「逃げないで下さいよ」
やっと口が解放されたら、そんな事を言われた。
言葉がきちんと頭に届いてるか怪しい。
酸欠なのか、この刺激から発生する諸々のキャパオーバーな衝撃に頭がぼんやりしてる。
口は解放され、出てくる声は、言葉の形を取れずに、堪らず発せられる言葉にならない声と呼吸音が絶えず押し出されてる。
彼の頭が、胸から鎖骨、首に移動して、顎に感じて、視線を向ければ、赤い目と出会った。
ハァ、ハァと息が上がったままで、昂りが抑えられない。
激しく唇が重なった。
やっと求めていた人がいる。
目尻から涙がツーっと流れ落ちる。
「辛くはないか?」
訊く彼が辛そうだ。
「早、くぅ…してぇ」
吐き出される呼吸に合わせて、言葉を押し出す。霞がかかったどうにかなりそうな頭は強い刺激を求めていた。
「あなたは…」
熱を孕んだため息に言葉がのるが何が言いたいのか分からない。
「ーーーーッ!」
視界がグラグラ揺れて、思わず目を閉じた。
開いた口からは悦びの叫びが上がる。
彼と何もかもひとつに成れた。
首を振り涙が散る。
どうにかなりそうだ。
激しい求めに、僕も求めて。
互いに互いを求めて、深く沈んだ。
真っさらな身体は、ヴィクトルさまに染まっていった。
主人公のエミル(薬師)視点これで終わり。
次に【補足話】を2話投稿していきます。
ヴィクトル(領主さま)視点の話です。
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