【1】出会い
よろしくお願いします。
僕は今日も乳鉢でゴーリゴーリとすり潰して、薬を作る。
傷薬に胃薬、風邪のお薬、頭痛薬に回復ポーションなどなど。
民間薬に冒険者用のポーションなど、薬に分類される物なら何なりと取り揃える田舎の薬屋を営なんでおりました。
僕の作るお薬は評判がよろしいのか、S級の冒険者もやってきてくれるお店。
田舎のお店としたら凄いでしょ?
王都から離れたところの補給地点としては丁度良いだけかも知れませんが、治りが良いとか効きが良いとか言われると気分が良いものです。
なので、田舎の薬屋としては、割と、大分、そこそこ、ゆとりのある暮らしをしておりました。元が慎ましいので、派手な事はしておりませんというか、儲けは投資と言いますか、珍しい素材の入手に使ってしまうので、トントンな生活です。貧乏って程じゃないって事で幸せな感じで暮らしておりました。
それがひっくり返る出来事が起きて、生活が一変してしまいました。
店を畳み、僕は領主さまの離れで囲われの情夫をする事になったのです。
はい!
疑問はわかります。
斯く言う僕もよく分からない状態で今ここにいる訳です。
天蓋付きの広いベッド。
座り心地のいいソファ。
華美ではない落ち着いた色合いと質感の家具たち。
落っことしたらどうしようと思う高級な茶器セットでお茶中の僕。
もう、ため息しか出ません。
これしかないって言われたら、使うしかないんですが、お茶飲むだけなのに緊張します。
えーと、遡る事数年前。
ここ数年の記憶が曖昧なので、こんな表現ですみません。
僕は店に現れた教会の神官さまに、店のポーションを片手に微笑みながら、『ご一緒に』と連行されたのです。
後から聞かされたけど、ポーションには特殊な魔力が入ってたとか。治りが良かったのはその所為だとも言われました。
店は商業ギルドが上手く畳んでくれたらしく、後日精算された残りという事でお金が届けられたのですが、受け取るのも面倒で、額面も見ずに、ギルドに寄付しました。
この時、既に領主さまとのあれこれで本当にどうでも良くなってたんです。
別の時だったら受け取ってたかもですが。
店を畳んで精算まで時間を要して、今頃ってタイミングも悪かったのかも知れません。
突然畳むのですから、色々大変でしたよね。
突っ返されたお金は、迷惑料としてお納め下さったようです。
神官さま曰く、僕は光魔法を操れる光属性を発現させたらしいのです。
この属性は特殊です。
傷を治したり、病気も治したりするとも言われる治癒魔法を使えるんです。
特殊なので、神官になったり、国の保護対象になったりするのです。
15の成人の頃に属性が安定するので、皆その辺りで教会で鑑定します。
水、火、風、土の属性を各々が持ってます。
これがベースとなり、そこに稀に光属性が加わるのです。
光属性が認められると、能力の高低も測られ、国の監視下の置かれるのです。
神官としての素質があるものは、教会に。
高すぎる能力者は王室が、その他は、各領主たちが監視という名目の保護をするといった感じです。
こんなに監視下などと言われるのかというには、この光属性は反対の闇属性も同時に保有するというのだそうです。
祝福も呪詛も起こり得る存在。
光が強ければ、闇も深い。
きちんと導く必要があるという訳です。
大きな光属性を持った子供は生まれ落ちた時から分かると言われています。
輝くばかりの美しい存在なのだそうで、すぐに分かるのだとか。
だから、大事に保護されるそれらの子たちは、間違いが起こる事なく一生を終えるのです。
大昔に何か大事があったらしいのですが、その辺の詳しい事は教会なりが知ってるのでしょうが、僕は知りません。
そこまで説明は受けませんでした。
受けたかも知れませんが、言われない事に混乱しつつ教会にいたので、右から左だったかもしれません。
説明してくれた神官さんには申し訳ないですね。
偶に僕のような、後発発現の中程度の光属性を持つ者が現れたりすると少々面倒なようです。
ご迷惑をと謝った記憶があります。
そんなこんなの光属性の人間は珍しいのです。ただ、数は少ないが、極端に少ないという訳でもなく、いるなぁ的な数です。
探せば、その辺にいるかも知れません。
僕のようにのほほーんと過ごしてる事もあるのです。
高い能力の者が見つかれば、それも保護対象なのですが、大抵その地域の教会が預かる流れになり、各集落へ慰問的な感じで巡行の旅に出ると言われてて、それに向けてのレクチャーを受けるとかなんとか…。
それまで待機と教会の一室でのほほーんと過ごしておりました。
こんな事は滅多に起こらない事らしいので対応が難しいのでしょう。
巡行に同行調節すると言われたのが、変更になったとか言われて、もうしばらく待機となり、教会の片隅で薬やポーションを作って教会に納め、販売はしないだけで、今まで通りの生活をしてたら、ある日突然、行き先が決まった告げられたのです。
荷物を纏め、連れて来られたのは、領主さまの屋敷。
『領主さまのいう事に逆らわないように』と言い含められ、首を傾げつつも、離れに自分の部屋があるというので、案内され、荷解き。
ここで薬でも作るかと思っていたのが、平和な自分でした。
僕は元来呑気なのです。
両親は流行病で相次いて亡くなりましたが、成人まであと数年といった感じだったので、教会が運営している孤児院の片隅で衣食住を貰って、今まで通りの生活をし、学校を出、鑑定を受け、土属性が強く出ていたので、動植物が好きで植物学を取っていた事にあり、薬師から師事を受け、薬師となりました。
まずまずの順調人生。
店も持って、それなりに店も繁盛。
呑気に流れるままに過ごしてきたけど、良い感じの人生だった…。
このまま嫁さんでもできて、子供が生まれて、家族が増えてなど、婚活も恋愛もせずに考える程に呑気だったのです。
巡行の旅だってワクワクしてたんですよ。
生まれてからずーっとこの土地から離れた事はなく、文献でしか見た事がない動植物の生きた状態が見れるかもと期待してたのに。
なのに、どうしてここにいるんだろうってな感じで過ごしていたんですが、余り気にせず、その日もゴーリゴーリと乳鉢ですり潰しておりました。
「君が光属性のか?」
部屋の出入り口に若い男が立っていました。
身なりと態度から、多分領主さまだと思います。
確か先代が倒れたか何かで、若くして継いだとか言われてたなぁとぼんやり見遣って、ハッとして立ち上がり、ご挨拶。
呑気の上にぼんやりさんをやってしまいました。
このところ色々あり過ぎてね…。
じろじろ見られて、お前はウチに居ろと言い残し、去って行かれました。
そして、その夜、領主のモノになったのです。
次回も、もう少しこの主人公の語りでお話が進みます。
エッチな表現をソフトに変えて、こちらに転載してみようかなと思って投稿を始めました。
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