風見魚
「ふう。今回も無事に帰ってこられた。」
今俺が転移してきたのは、拠点としている西の街の近くにある森。ここから5分ほど歩けば、街門にたどり着く。本当は街中に・・・もっと言えば、宿の中に転移したいところだけど、流石に不法までは行かないけど、入出管理の門兵に迷惑はかけられないからな。
「あっ!クオン殿!お帰りなさい」
「ただいま。隊長さん。今は・・・暇そうだね?」
「ええ。午前中は、帝都からの小隊が引っ切りなしで大変だったのですが、昼を過ぎてからはこの通り」
門兵の隊長が言うとおり、街門周辺は巡回の兵士が居るのみで、商人やら庶民の姿はない。ただ、皆疲労困憊の表情をしているので、相当忙しかったんだろう・・・。
「みたいだね・・・。お疲れ様です」
「いやぁ。クオン殿に比べれば、モンスターも来ないこの平和な街で血を流さずにすんでいるのですから、全然!ただ・・・少々たるんでおりますので、明日からは訓練をキツくしなければ・・・」
「あはは・・・お手柔らかにね」
そう隊長に伝え、入街手続きを簡単に済ませると、俺と体調の話が聞こえていた兵たちは、疲労の色を一層濃くしていた・・・。お疲れ様です・・・明日からまた頑張ってね・・・。
街門を潜ると、目抜き通り!道を行き交う人や馬車。両脇に広がる出店の数々!うぅん!人が沢山居る!良い匂いもする!いいね!やっぱり人が生活してるって言うのは!っと・・・それよりも風呂だ風呂!宿の風呂が俺を待っている!
「ただいまー」
「おかえり!クオン!長旅お疲れ様!そろそろ帰ってくる頃だと思ってね・・・お風呂。沸いてるから入っちゃいな!今なら貸し切りだよッ」
「さっすがー!ありがとー!おばちゃん!」
「上がったら晩ご飯出してあげるから、ゆっくり疲れを癒やしてきな!」
「あーい!」
ここは風見魚という俺がずっと拠点にしている宿。2食風呂付き!大浴場ながらも、露天風呂がある。正直言って、この大浴場に惚れてここを拠点にしているんだけど、1人で切り盛りしてる宿の主人のおばちゃんにも感謝が尽きない。居心地が良すぎて他の宿に変えることが出来ないんだよねぇ・・・。転移魔法様々だよ。
階段を登って、2階の廊下の突き当たりか俺の借りてる部屋。
「流石だな。いつ来ても部屋は綺麗。さてと・・・着替えをもって、いざ行かん!貸し切りの大浴場へ!」
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貸し切りと言っても、身体を先に洗ってから湯船へ。マナーは守らないとね。
「ふいぃー・・・やっぱ風呂だよね・・・。命の洗濯!」
湯船につかりながらのんびり過ごしていたら・・・陽がいつの間にかオレンジに・・・。
「んおっ!入りすぎた!」
俺は急いで、身体の水分を拭って着替え、食堂に行くと嬉しそうだが、呆れた様子のおばちゃんが待っていた。
「お風呂が気持ちいいって顔に書いてあるのは嬉しいけどね、流石に3時間は入りすぎじゃぁないかねぇ・・・」
「たはは・・・ここのお風呂が気持ちよすぎるのがいけないんだよ」
「はいはい。クオンの風呂好きにも困ったもんだけど・・・まぁ今に始まったことじゃないからね。さて、腕によりをかけた料理。たぁんとお食べ!」
「ありがと!いただきまぁす!」
こうして、旅の疲れを癒やし、満腹になった俺は重しの載ったまぶたに逆らえず、別途に横になった途端に、意識を手放すのであった。
「にもつのせいり・・・あした・・・やろ・・・う・・・」




