幕間 ─ギルドマスター─
俺は西街の冒険者ギルドのマスターだ。
この辺りは遺跡も遠く、魔獣も少ない。襲ってくるのは農民崩れの夜盗や盗賊の類だ。それったって、防壁は高く衛士も多いこの街を襲おうなんていう奴らは、命知らずか余程の間抜けだ。帝都の西にある2番目に大きな街だからな。
おっと。長話が過ぎたが・・・いやぁ昨日は肝が冷えた。あの嬢ちゃん。シュリって言ったか。普通の奴らには目にもとまらぬ早さで、俺の首筋に小刀を振ってくるんだもんな。俺じゃなきゃ止められなかったが、ありゃ確実に俺を殺りにきてた・・・。しかもなんだ?、5年前からこの街で活動してたクオンのことを『殿下』なんて呼びやがった。確かにあいつは珍しい黒髪黒目だが、まさか皇族とはな・・・。
クオンもクオンだ。そんな大事なこと何時までも伏せてるなんてな・・・。俺ぐらいには行っておいても良かったんじゃねぇか?なぁんて後の祭りだが・・・。しかもあの圧。有無を言わさねぇとはこのことか。ってな。あんときゃ流石に寿命が縮んだ思いがしたぜ。
しっかし、シュリ嬢が言ってた『第三者の目』あれってのは、第三者の目が無いところで。の間違いじゃねぇのかなぁ・・・。まぁいっか。墓場まで持っていく情報には違いねぇからな。
願わくばもう二度とこの街で騒動を起さんでほしいがなぁ・・・。まぁあまり期待しないでおくか。
「マスター。失礼いたします」
おっと秘書が仕事を持ってきた。これでもおらぁ仕事の出来る優秀なマスターなんだぜ!
「またくだらないことを考えて・・・マスターお仕事ですよ。予算の編成、明日までにお願いいたします」
「え゛!予算かぁ・・・それはよぅ」
「仕事が出来るマスターなんですよね?だったらお願いしますね。優秀なマスター」
「なっなっなっ!?」
「声に出ておりましたよ。それでは、私は私の仕事に戻ります」
「なっ!あっ・・・おい!ったく・・・いっちょやるかぁ。はぁ・・・」
俺は西街の優秀なマスターだ。ただ、たまに考えていることが口から出ているらしい・・・。まっ仕事が終われば結果オーライってやつだ。
・・・数字の仕事は眠くなるんだよなぁ・・・。




