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男女六人殺人事件  作者: 落川翔太
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 翌朝。外で発砲音が聞こえた。その音で、貴紀は目が覚めた。

 もしかして、と貴紀は嫌な予感がした。また誰かが殺されたのではないか。一体、今度は誰なのだろう。

 貴紀はすぐに部屋を出た。貴紀が廊下に出ると、そこに壮介がいた。

「貴紀、お前も聞こえたか?」

 彼がそう言った。

「ああ……。」

「今度は一体誰が……。」

 おそらくここにいない亜衣か香奈のどちらかであろうと、貴紀は思った。

「確認しに行こう」

 貴紀がそう言うと、「ちょっと待て」と壮介が言った。

「なんだい?」

「二人の部屋をノックすればいいだろう。そうすれば、どっちが殺されたか分かるだろう」と、壮介が言った。

「ああ、そうか」

 貴紀が頷くと、二人はまず香奈の部屋の扉をノックした。

 コンコン。コンコン。

 壮介が香奈の部屋の扉をノックしたが、返事はなかった。

 その後、亜衣の部屋の前まで行き、扉をノックした。

 コンコンと貴紀が亜衣の部屋の扉をノックするが、返事はなかった。

 もう一度、貴紀はノックをした後、「はーい」と、部屋の奥から亜衣の掠れた声が聞こえた。

「亜衣?」

壮介が呼びかけた。

「なに?」

「入ってもいいか?」

 壮介がそう言うと、「ちょっと待って」と彼女は言った。しばらくして、彼女が扉を開けてくれた。

「どうしたの、壮介君? それと、貴紀君も」

 亜衣は眠い目を擦って、二人にそう訊いた。

「どうしたのって、今さっき外でまた発砲音がしたんだよ!」

 壮介がそう言うと、「え!? うそ!?」と、亜衣がビックリした顔をした。

「今度は誰が殺されたの? ……ってもしかして、香奈?」と、亜衣はそこで香奈が殺されたことに気付いたようだった。

「香奈の部屋をノックしたんだけど、返事がないから多分……。」

「うそ……。そんなあ……。」

 亜衣が悲しむように言った。

「亜衣ちゃん、悪いんだけど、三人で外へ出て見に行こう」

 それから、壮介が亜衣にそう言った。

「いや!」

 それから、亜衣が嫌がるように言った。

「うち、嫌だよ。見たくない! 二人で見にいってくればいいでしょ!」

 亜衣はどうしても見たくないようだった。亜衣の気持ちも分からなくはないなと貴紀は思った。貴紀も正直に見たいとは思わなかった。

「……分かった。じゃあ、亜衣ちゃん。ここで待っててくれる」

 その後、壮介が優しく言った。

「うん、分かった。待ってる」

 亜衣が言った。

「よし、じゃあ、貴紀、見に行こうか」

 壮介が貴紀にそう言って、階段を降りて行った。貴紀は彼の後に続いた。

 外へ出ると、日差しが眩しかった。昨晩の雨はもうすっかりと止んでいた。

 玄関を出て、二メートルほど先に香奈は倒れていた。

「ああ……香奈……。」

 香奈は死んでいた。みゆきや瞬太郎と同じように銃で撃たれているのが確認できた。

 壮介が倒れている香奈の前にしゃがみ込み、合掌をした。まるで自分がお坊さんであるかのようにして、なむなむと唱えていた。彼にとってのせめてもの供養なのだろうと貴紀は思った。それから、貴紀も香奈を見て手を合わせた。

「よし、戻ろう」

 壮介はそれを終えると、そう言って立ち上がった。

「香奈にも毛布を被せてあげよう」

 それから、壮介がそう言った。

「そうだね」

 貴紀がそう言うと、壮介は玄関まで歩き、別荘に入った。貴紀も別荘に入る。

 壮介が別荘に戻ると、すぐに二階へ上がった。彼は香奈の部屋へ入り、彼女のベッドから毛布を取り上げた。そして、廊下へ出ようとした時、壮介はあるものを見つけた。小さな紙きれである。それは、前にみゆきの部屋で見たものと同じもののように見えた。

「何だろう?」

 一度、毛布を床に置き、壮介はその紙を拾った。見ると、それはみゆきの部屋で見たものと同じような手紙であった。

「何々?」

 壮介はその手紙を声に出して読んだ。

「香奈へ 朝起きたら外へ来てください。話したいことがあります。……貴紀より……。」

 壮介は、はっとした。そうか。香奈はこの手紙を読んで……。

 じゃあもしかして、みゆきや瞬太郎、それに香奈を殺した犯人は、貴紀……?

 そう考えると、壮介はイラッとした。

 すぐに貴紀に問い詰めようと思い、壮介は毛布を置いて一階へと降りた。


 リビングに行くと、貴紀はソファに座って暢気にテレビを観ていた。

「なあ、貴紀」

「なんだ?」

「訊きたいことがある」

「訊きたいこと?」

「今さっき、香奈の部屋に行ったら、こんな手紙を見つけたんだ!」

「手紙?」

「ああ。これだよ」

 壮介はそう言ってソファに座り、先ほど香奈の部屋で見つけた手紙を貴紀に見せた。

「どれどれ……」

 貴紀はそう言って、その手紙を読み始めた。

 その手紙を読んだ貴紀は驚いた。その手紙は、香奈に宛てられた手紙であった。そして、この手紙を送ったのは、自分の名前になっているのである。

「なあ、貴紀。その手紙、お前が書いたものなのか?」

 それから、壮介がそう訊いた。

「いや、僕はこんなの書いてないよ」

 貴紀は香奈にこのような手紙を書いた覚えはなかった。

「本当に?」

「ああ、本当だ」

「ふーん。じゃあ、誰か別人が貴紀に成りすまして、書いたってことかい?」

 壮介が訊いた。

「そうだと思う」と、貴紀は言った。「あ、そうそう。僕もそれと同じ手紙を、瞬太郎の部屋でも見つけたよ」

 それから、貴紀がそう言った。

「それは本当かい!?」

 壮介は驚くように言った。

「うん、ほら」

 貴紀はそう言って、ポケットから一枚の紙を取り出した。「はい」と、貴紀はその手紙を壮介に渡した。

 壮介はその手紙を受け取ると、「何々……」と言って、読み始めた。

「瞬太郎へ 話したいことがあるの。夜、寝る前に外に来てほしい。待ってるね。 亜衣より、か。なるほど……。」

「おそらくその手紙は、亜衣が瞬太郎に宛てた手紙だと思う。そして、この手紙と香奈に宛てた手紙、そして、みゆきちゃんに宛てた手紙を書いたのは、亜衣ちゃんなんじゃないかな?」

 それから、貴紀がにやりと笑ってそう言った。

「おい、貴紀、それ本当か!?」

 壮介が慌てるように言った。

「おそらく……の話だよ」と、貴紀は言った。「けど、直接本人にも訊かないと分からないけどね」

 貴紀はそう言うと、ソファから立ち上がり、二階へと向かおうとした。

 その時、ちょうど二階から亜衣が一階に降りてきた。

「ねえ、二人ともお腹空かない? うちは空いたんだけど」

 それから、亜衣がそう言った。

「ああ、腹減った」と、壮介が言った。

「僕も」と、貴紀も言った。

「だよね。今から焼きそばでも作るから、ちょっと待っててね」

 亜衣はそう言ってキッチンに立ち、冷蔵庫から焼きそばの材料を取り出した。

 貴紀は再びソファに座り、テレビを観ていた。

「そういや、香奈に毛布はもう掛けてあげたの?」

 テレビを観ながら、貴紀が壮介に訊いた。

「あ、そうだった」

 壮介はそれをすっかりと忘れていた。壮介はソファから立ち上がると、すぐに二階へ行き、香奈の部屋に置いた毛布を取りに行き、外へ出て香奈にその毛布を掛けてやった。


「できたよ」

 亜衣がそう言って、ダイニングテーブルに三人分の焼きそばを運んだ。

「おお、うまそう!」

 湯気が立った焼きそばを見た壮介はそう言って、席に着いた。

「ね」と貴紀が相槌を打ち、席に着く。

「でしょ?」と亜衣は言って、彼女も席に着いた。

 それから、「いただきます」と亜衣が手を合わせた。貴紀や壮介も手を合わせ、「いただきます」と言ってその焼きそばを食べ始めた。

「うん、おいしい」

 壮介がその焼きそばを一口食べて言った。

「そう? 良かった」と、亜衣が笑顔で言った。

「うまいね」

 貴紀も一口食べて、頷く。

 亜衣も自分の作った焼きそばを食べた。

「本当だ。おいしいね」と、彼女も言って笑った。

 その後も、三人は黙々とその亜衣の作った焼きそばを食べていた。

「ふー、美味しかった」

 焼きそばを食べ終えた亜衣が、満足そうに言った。

「ホント美味しかったよ」

 壮介も満足したように言った。

 貴紀も頷いた。

「……やっぱり香奈も死んじゃったんだ」

 ふいに、亜衣が呟いた。

「うん……。」と、貴紀は頷いた。

「そんな……。やっぱり、この中の誰かが犯人なの……かな?」

 それから、亜衣がそう言った。

「その可能性はある」と、壮介が言った。「か、もしくは、部外者の仕業か……。」

「部外者……じゃあ、やっぱり、この別荘の管理人さんが言っていた、不審者の仕業なのかな……?」

 亜衣がそう言うと、「その可能性もあるね……。」と、貴紀が言った。

「……しかし、もしそうだったとして、その人物の狙いって何なんだ? 第一、そいつが貴重品を盗むとしたって、わざわざ殺すまでして盗むのかい?」

 それから、壮介がそう言った。

「確かにそこまでして盗むんだとしたら、それは奇妙だと思うよ」

 貴紀がそう言った。

「俺は多分、その人物ではないと思うんだ。もっと違う別人か、もしくは、俺らの中の誰かだと思う」

 壮介がそう言った。

「そうそう。そういや、さっき貴紀にも話したんだけど」

 それから、壮介が口を開いた。

「何?」と、亜衣が訊いた。

「香奈の部屋に行ったら、こんな紙を見つけたんだよ」

 壮介はそう言って、先ほどの手紙を亜衣に見せた。その手紙は貴紀が香奈に宛てたようにみせたものである。

「うそ……。」

 その手紙を見た亜衣がそう驚くように言った。

「貴紀君が? 貴紀君が香奈にこの手紙を書いたの?」

 それから、亜衣が貴紀に訊いた。

「いや、僕はこの手紙なんて書いていないんだ」

 貴紀がそう答えると、「え、そうなの?」と亜衣が再び驚いた。

「じゃあ、誰が書いたの?」と、亜衣が訊いた。

「亜衣ちゃん、君じゃないのか?」と、壮介が亜衣に訊き返した。

「うち? なんで。うちじゃないって!」

 亜衣は反論するように言った。

「本当に貴紀君じゃないの?」

 亜衣が再び貴紀に訊いた。

「うん」と、貴紀は頷く。

「じゃあ、壮介君じゃないの?」

 それから今度、亜衣が壮介に訊いた。

「俺でもないよ」と、壮介が言う。「それとさ……。貴紀、お前も手紙持ってるんだろう?」

 それから、壮介が貴紀に言った。

「うん、僕も。これを瞬太郎の部屋で見つけたんだ」

 貴紀はそう言って、ポケットから例の手紙を取り出して亜衣に見せた。

 その手紙は亜衣が瞬太郎に宛てた手紙のようである。

 貴紀は亜衣にその手紙を手渡した。亜衣はその手紙を読み始めた。

「瞬太郎へ……話したいことがあるの。夜、寝る前に外に来てほしい。待ってるね……亜衣より……。」

「…………。」

 貴紀と壮介は黙って亜衣を見た。

「……って、何この手紙? うち、こんな手紙書いてないよ!」

 それから、亜衣がそう言った。

「本当に?」と、貴紀が訊く。

「うん。本当に! だってあの時、瞬太郎の後に、うち、お風呂に入ったもん。もしうちがその手紙を書いていたなら、うちだってお風呂に入らないで瞬太郎と一緒に外にいたことになるでしょ?」

 亜衣がそう弁明した。

「……確かに」と、貴紀が言った。

「そうなるね」と、壮介も言った。

「だから、うち、そんな手紙を書いてなんかいないって。貴紀君か壮介君のどっちかじゃないの?」

 それから、亜衣がそう言った。

「俺でもない」と、壮介が反論した。

「僕も違うよ」と、貴紀も言った。

「じゃあ、誰なの……?」

 亜衣がそう言うと、貴紀も壮介も黙ってしまった。

「ねえ、壮介君。みゆきちゃんの手紙って持ってる?」

 しばらくして、亜衣が口を開いた。

「ああ、あるけど」

「ちょっと見せて」

「あ、部屋にある。ちょっと待ってて」

 壮介はそう言って、二階へ上がり、自分の部屋へと向かった。ややあって、壮介が二階から降りてきた。

「これがどうしたの?」

 壮介が亜衣にそう訊くと、「その手紙の裏に、アルファベットが書いてあったよね?」と亜衣が言った。

 うんと頷いて、壮介はその手紙の裏側を二人に見せる。

「MAだね」

「この手紙の裏は――」

 亜衣がそう言って、持っている手紙をひっくり返す。瞬太郎の部屋にあった手紙である。

「M……O……ね」

「MOか。それで、こっちの香奈の手紙は……」と言って、壮介がその手紙をひっくり返す。「RUだ」

「MA、MO、RUのつく名前の奴っていたかな?」と、貴紀が訊いた。

 うーん、と三人で考えた挙句、「いないなあ……。」と、壮介が言った。

「そっか……。」と、亜衣が残念そうに言った。

「いや、待てよ」

 その後、壮介が何かを思い出したように言った。

「イニシャルじゃないとしたら、そうだよ。香奈が言ってたじゃないか。『MA』で、『ま』とも読めるって!」

「そっか。すると……そうか! MOは『も』。RUは『る』とも読める!」

 貴紀は閃いたように言った。

「本当だ!」と、亜衣も驚いたように言った。

「そして、それらを順番に読むと、『ま・も・る』、まもるとも読めるね!」

 それから、壮介が得意げに言った。

「まもる!?」

 その言葉に貴紀は聞き覚えがあった。

「守って、もしかして、我孫子くんのこと?」

 それから、亜衣が思い出したように言った。

「我孫子!?」

 貴紀が驚くように言った。

「我孫子守……ああ、思い出した」

 壮介も思い出したように言った。

 貴紀も彼のことを思い出していた。

 我孫子守は、貴紀たちの高校時代の同級生であった。彼も貴紀たちとよく一緒に居た。しかし、ある日、彼はいじめられて、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのである。彼をいじめた犯人は複数いた。貴紀を除くこの中の五人のメンバーだったのである。

 彼が自殺をした時、貴紀は相当ショックだった。貴紀は彼と親友だったからである。

「ねえ、皆を殺したのって、我孫子君のせいじゃあ……。」

 それから、亜衣がそう言った。

「我孫子のせい? どういうことだよ?」と、壮介が訊いた。

「本当は我孫子君って、まだ生きてるんじゃないかな?」

 その後、亜衣がそう言った。

 亜衣のその言葉に、貴紀や壮介も面食らった。

 しかし、貴紀は彼が自殺をしているのだから、生きているとは思えなかった。

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