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外で何かが爆発するような音がして、目が覚めた。貴紀はベッドから体を起こし、すぐに部屋のドアを開けた。廊下に出ると、瞬太郎と亜衣が立っていた。
「今、なんか変な音したよな」
部屋から出てきた貴紀を見るなり、瞬太郎が言った。
「うん。外から聞こえた」
貴紀がそう答えると、「外で何かあったんじゃないのか?」と、彼が訊いた。
「多分……。」
「外の様子を見に行こう」と、瞬太郎が言った。
それから、彼は真っ先に階段を降りて、玄関に向かった。
「瞬くん、あ、ちょっと待って……。」
亜衣はそう言って、瞬太郎の後を追う。貴紀も、その後に続いた。
瞬太郎は玄関の扉を開け、外へ出た。亜衣と貴紀もその後に出る。
「あ!」
すぐに瞬太郎が何かを見つけて、声を上げた。
すかさず「何?」と、亜衣が訊く。
「みゆきちゃん!」
それから、瞬太郎がそう叫んだ。
玄関から一メートルほど離れた場所に、みゆきが血まみれになって倒れていた。
貴紀は驚いた。
それから、それを見た亜衣が、「キャー」と叫んだ。
その後、亜衣の叫ぶ声で香奈と壮介も外へやって来た。
「どうしたの?」と香奈が訊いた後で、彼女は地面に倒れているみゆきの姿に気が付いた。
「うそ……。」
彼女はそう呟いた後、手で顔を隠し、しゃがみ込んだ。
「みゆき……。」
壮介も彼女が倒れているのを見ると、すぐに膝から崩れ落ちた。
「どうして……。」
その後、壮介が泣きながら口を開いた。
「どうして、みゆきが殺されなくちゃならないんだ……。」
「とりあえず、一一〇番通報したほうがいいよな」
それから、瞬太郎が言った。
「ええっとスマホ、スマホ」と、瞬太郎がズボンのポケットをまさぐった。「あれ? 俺のスマホどこやったっけ?」
「金庫に預けてるんだから、ほぼ全員持っていないでしょ?」
その後、香奈が思い出すように言った。
「あ、そっか!」と、瞬太郎は思い出す。
「俺、持ってるよ」
その後、壮介が言った。「金庫に入れなかったから」
「そっか!」と、亜衣が言った。
「えーっと、俺のスマホ。スマホ……」と言って、壮介は自分のスマホを探した。その後、壮介は自分のスマホがズボンのポケットやシャツのポケットにもないことに気付くと、「あれ? おかしいな。どこやったっけ?」と言った。
「もしかして、例の窃盗犯に盗られたか?」
その後、瞬太郎が真剣な顔をして言った。
「え? それって本当?」と、亜衣が驚くように訊いた。
「そんなわけあるかよ」と、壮介が言った。その後、「ああ、そうだ。昨日部屋に置いたんだった」と、彼は言った。
「そうか」と、瞬太郎は言った。
「ちょっと部屋見てくる!」
その後、壮介がそう言って別荘に戻ろうとしたので、「おい、壮介、待てよ」と、貴紀は言った。
「一度、金庫を開ければいいだろう」
貴紀たちは別荘に戻った。貴紀は一度、自分の部屋に戻り、昨日履いたズボンのポケットから金庫の鍵を取ると、すぐにリビングに戻った。
リビングには全員が集まっている。早速、貴紀は持っていた鍵で金庫を開けた。それから、自分のスマホを手に取った。貴紀がそのスマホで一一〇番通報をしようとしたとき、壮介が口を開いた。
「なあ、みんな、今、警察に通報しないほうがいいんじゃないのか?」
「何言ってるんだ?」と、瞬太郎が言った。
「そうだよ。壮介君」と、亜衣も言った。
それから、壮介が口を開いた。
「もしかしたら、この中にみゆきを殺した犯人がいるんじゃない?」
「え?」
壮介のその言葉に、一同が面食らった。
「それって本当なの……?」と、亜衣が訊いた。
「本当かどうかは分からないけど、その可能性もあるって言いたいのね」
それから、香奈がそう言った。
「うん」と、壮介が頷いた。
「本当に俺らの誰かがやったって言うのか? 一体誰がみゆきちゃんを殺したっていうんだよ?」
その後、瞬太郎がそう訊いた。
「うちじゃないよ」と、亜衣が反論した。
「オレでもないぜ」と、瞬太郎も言った。
「あたしでもないわ」と、香奈が言う。
「僕でもない」と、貴紀も言った。
「となると、最後に俺が残るけど、俺も違うんだ」と、壮介も否定した。「第一、どうして俺がみゆきを殺さなきゃならないんだって話。俺はみゆきの彼氏だよ。彼氏が彼女を殺すか? 普通?」
「殺さないとも限らないんじゃないかな? もし本当に憎んでいたのなら」
それから、瞬太郎が言った。
「別に、俺はみゆきを憎んでいたなんてことはないよ。みゆきも俺を憎んでいる様子もなかったと思うけど」と、壮介は弁明した。
「オレはお前が怪しく見えるよ」
瞬太郎が笑って言った。
「本当に俺はみゆきを殺したりなんかしていないんだって。そう言うお前こそ怪しいよ」
「怪しいって、証拠はあるのか?」
瞬太郎が訊く。
「証拠は……ないけどさ……。」
「証拠も無いのに、勝手に怪しいとか言うの止めてくれよな!」
瞬太郎が大声で言った。
「そう言うそっちだって、俺のことも証拠がないのに勝手に怪しんだじゃないか!」
それから、壮介も怒鳴るように言った。
「二人とも、喧嘩はやめて!」
その後すぐに、瞬太郎と壮介の間を取り持つように、亜衣が大声で叫んだ。
「はいはい。どうもすみませんでした」と、ややぶっきらぼうに瞬太郎が謝った。
「ああ、こっちこそ悪かった」と、壮介は反省するように言った。
「やっぱり、犯人は部外者よ」
ふと、香奈が言った。
「いや、犯人はこの中の誰かだと思う」と、壮介が断言した。
「犯人って、一体誰なのよ?」
その後、亜衣が訊いた。
すると、「犯人である人物が、ここですんなりと白状すると思うか?」と、壮介が言った。
「いや、名乗り出るとは思わないな」と、貴紀が呟くように言った。
「だろ?」と、壮介はにやりと笑って言った。
「なあ」
その後、瞬太郎が口を開いた。
「みゆきちゃんを殺した犯人は部外者かもしれないけど、もしかしたら、この中の誰かかもしれないんだろ?」
「ああ、さっきからそう話しているだろ」
壮介が口を挟む。
「どっちでもいいけど、とりあえず警察に通報しないか?」
それから、瞬太郎がそう言った。
「ええ、そうね」と、香奈が賛成した。その後、他のメンバーたちも頷く。
その後、「ああ、そうだな」と、壮介も頷いた。
早速、貴紀は持っている自分の携帯で一一〇番通報をした。それを終えると、貴紀はまたスマホを金庫の中に閉まった。
「ねえ、皆、お腹空かない?」
貴紀が電話を終えた後、亜衣が皆にそう訊いた。
「ああ、腹減った」と、瞬太郎が言った。
貴紀たちは、朝から何も食べていなかった。貴紀はお腹が空いていた。他のメンバーたちもお腹が空いているようだったので、皆でご飯を食べることにした。
五人はご飯を食べた。終始無言だった。
「あのさあ……。」
ふいに亜衣が口を開いた。
「何?」と、香奈が訊いた。
「アウトレットにはもう行かない?」
それから、亜衣がそう言った。
貴紀たちは二日目の午後に軽井沢のアウトレットモールに行く予定だった。
しかし、メンバーの一人であるみゆきが殺されてしまった以上は、貴紀や他のメンバーたちはもうそこへは行けないような気がしていた。
「今この状況じゃ、行けそうにないね」と、壮介が言った。
「ああ、そうだな……。」と、瞬太郎も言った。
「そんなあ……。」
亜衣は残念そうに言った。
「警察が来たら、事情聴取とかもあるだろうし。しばらくは、ここにいた方がいいね」と、壮介が言った。
「そうだね」と、貴紀は頷いた。
ご飯を食べ終わった後、五人はそれぞれの自室へ行った。
貴紀が自室でくつろいでいた時、扉がノックする音がした。
「はーい」
貴紀がそう返事をすると、ドアがガチャリと開いた。誰かと思ったが、壮介だった。
「なあ、貴紀」
「どうしたの?」
「さっきお前、一一〇番通報しただろ?」
「うん、したよ」
「パトカーも警察も、まだここへ来ていないんだ!」
それから、壮介がそう言った。
「え!?」
どういうことだろうか。貴紀は驚いた。
「貴紀、お前、本当に一一〇番通報したんだよな?」
それから、壮介がそう訊いた。
貴紀はそう言われ一度ドキリとしたが、その後すぐに先ほど電話した時のことを思い出す。あの時、貴紀は確かに一一〇番通報をした。そして、人が殺されたことや事件が起きた場所などを伝えていた。
「ああ、電話したよ。事件があったこととか、自分たちがいる場所を伝えてるはずだけど……。」
「本当に一一〇番したんだな?」
「ああ。信用ならないなら、今、着信履歴でも見るか?」
貴紀がそう言うと、「そうしてもらってもいいかい?」と、彼が言った。
その後、貴紀は「分かった」と言って、部屋を出た。貴紀は一階のリビングへ向かった。壮介もその後についてきた。そして、リビングに着くと、貴紀はポケットから金庫の鍵を出し、金庫を開けた。貴紀は中から自分のスマホを取り出して、着信履歴を開いてそれを壮介に見せた。
「確かに、一一〇番通報していたんだな」
貴紀のスマホの着信履歴を見た壮介が納得したように言った。
「うん」
「貴紀、疑って悪かった……。」
それから、壮介は謝るように言った。
「ううん」と貴紀が首を振ると、「でもさ……。」と、壮介が口を開いた。
「どうしてまだ来てないんだ?」
その後、再び壮介がそう訊いた。
「さあ?」
「さあ? ってなんだよ」
「それは警察の都合ってもんじゃないのかなって思っただけだよ」
「都合?」
「そう都合。もしかしたら、ここへ来られない理由でもあるんじゃないかなって」
「何だよ、それ」
「ええっと、例えば、警察たちは僕たちに構っていられないとか、それよりも重大な事件が起きてしまっていて、それどころじゃないとか。つまり、そこまで手が回らないとかなんじゃないのかな?」
「そんなことあってたまるかよ……。」
それから、壮介が呟くように言った。
「でも、まあ、今のは僕の勝手な推察だけどね……。」
貴紀はそう言うと、ハハハと笑う。
「推察ね。それはご丁寧にどうもありがとう。だけど、それは推察にしか過ぎないだろ?」
「そうだね。まあでも、しばらくしたら、パトカーや警察も来ると思うけどな」
貴紀がそう言うと、「そうか。じゃあ、もう少しだけ待つよ」と、壮介が言った。
夕方頃、亜衣と香奈の二人が、夕飯の支度を始めた。二十分くらいして、夕飯が出来上がった。ちょうどそこへ貴紀が下へ降りてきた。
「あ、貴紀くん。ご飯できたから、瞬太郎と壮介君を呼んできてくれる?」
亜衣にそう言われて、「分かった」と貴紀は返事をし、二階に上がり、瞬太郎と壮介を呼んだ。
それから、すぐに瞬太郎と壮介が下へ降りてきた。
「うん、いい匂い。おいしそうだね」
瞬太郎がテーブルに並んだ料理を見て、そう言った。
「でしょ? 香奈と二人で作ったんだ!」と、亜衣は上機嫌に言った。
それから、「早速、食べよう!」と亜衣が言うと、貴紀や他のメンバーたちがダイニングテーブルの席に着いた。
「いただきます」
瞬太郎が手を合わせて言った。
いただきます、と他もメンバーたちも言って、皆でご飯を食べた。
夕飯の後、「ちょっと一服」と壮介が言って、昨日と同じようにウッドデッキへ向かい、煙草を吸いに行った。
「亜衣、オレ、コーヒー飲みたい」
それから、瞬太郎が亜衣にそう言った。
「いいよ。皆も飲む?」
その後、亜衣が壮介以外の皆に訊いた。
「僕も飲もうかな」と、貴紀が言った。
「あたしも」と、香奈も言った。
「オーケー」
亜衣はそう言って、笑顔を見せた。その後、「壮介くーん」と、亜衣は大声でウッドデッキにいる壮介を呼んだ。「何―?」とそこでタバコを吸っている壮介が返事をし、亜衣は壮介にコーヒーを飲むか訊いた。それから、「うん」と、壮介の声が聞こえた。
「りょうかーい」
亜衣はそう叫ぶと、すぐにキッチンへ向かった。そして、コーヒーを作り始めた。
五分程して、コーヒーが出来上がる。
「お待たせ」
亜衣はコーヒーのカップを五個、白いトレーに乗せて、ダイニングに運んだ。テーブルにコーヒーを一人一人の前に置いた。
「亜衣、サンキュー」と、瞬太郎が言った。
「ありがとう。亜衣」と、香奈も言った。
貴紀も亜衣にお礼を言った。
そして、それぞれがコーヒーを飲んだ。
それからしばらくして、壮介がウッドデッキから戻って来て、席に着いた。壮介も自分の席の前に置いてあるコーヒーを一口啜る。
五人はコーヒーを飲みながら、雑談していた。
そして、少ししてから、瞬太郎が口を開いた。
「なあ、みゆきちゃんを殺したのって、本当に部外者なのかな?」
「またその話?」と、亜衣が瞬太郎に訊いた。
「部外者の誰かなんじゃない?」と、香奈が言った。
それから、「部外者って誰だよ?」と、瞬太郎が訊いた。
「それは……。分からないけど」
香奈がそう言うと、「あ!」と、亜衣が思い出したように言った。
「その部外者って、この近くをうろついているっていう窃盗犯なんじゃない!?」
「あの前田って、管理人が言ってた?」と、瞬太郎が言った。
「そうよ! ええ、きっとそうだわ!」
それから、香奈も思い出したように言った。
「窃盗犯ね……。」
瞬太郎はそう呟きながら、その窃盗犯かどうかを考えていた。
「なあ、壮介。お前はどう思う?」
それから、瞬太郎は今度、壮介にそう訊いた。
「部外者という点では、その窃盗犯が一番怪しいとは思うけど、現に俺は見ていないし、皆も見ていないだろ?」
「そう言えば、そうだね……。」
亜衣が同意するように言った。
「でしょ? だとすると、その窃盗犯の仕業とも言い切れない。それに、第一、どうしてその窃盗犯がみゆきを殺さなくちゃならないんだよ」と、壮介が言った。
「確かにね」
香奈が頷いた。
「そう考えると、窃盗犯以外の部外者か、もしくは、僕たちの中の誰かということになる。俺はこの中の誰かの仕業だと思ってる」
壮介はそう言うと、黙ってしまった。
「なるほどね」
その後、瞬太郎が再び口を開いた。
「じゃあさ、仮にこの中にいるとして、みゆきちゃんを殺した犯人をオレ達で見つけるってのはどうだ?」
瞬太郎はそう言うと、にやりと笑った。
「いいんじゃない? 呼んだ警察も来ないんだし、俺達でこの事件を解決するってのは面白そうだな」
それから、壮介がそう言って、にやりと笑った。




