12
12
それから二週間が経った。
レンタカーを返した後、貴紀は自宅で普段通りの生活を送っていた。夏休みと言うこともあり、大学は休みのため貴紀はほとんど自宅で過ごすか、コンビニのバイトばかりしていた。
その日はバイトが休みだったので、自宅で読書や趣味の小説を書いていた。
午後三時頃、ちょうど小腹が空いてきたので、貴紀は近くのコンビニでも行こうと思った。出掛ける前に財布の中身を確認して、お金が少ししか入っていないことに気付いた。コンビニに行く前に、銀行でも寄ろうと思った。
殺し屋のバイトで給料が口座に支払われているかもしれないことを思い出した貴紀は、軽い足取りになった。
銀行へ着き、お金を引き出す。ついでに通帳の記帳もした。それを終えて、貴紀はちらりと通帳を見る。
「あれ?」
それを見て、貴紀はおかしいことに気付いた。そこには六万円しか振り込まれていなかった。
一体どうしてだろうと思い、貴紀は考える。振り込まれる額は、人数×一万円だっただろうか。いや、確か二万円であったはずである。では、どうしたものか……。
あ!
それからすぐに貴紀は思い出す。殺し屋のバイトの先輩である大沢さんのことである。
貴紀は、あの時、彼を殺した。
このバイトで人殺しを行う際、万が一、従業員が別の従業員を殺害した場合、殺人をした者(従業員)は、給与を半分減額するという規約があった。それは従業員同士の横取りを防ぐためであった。
つまり、貴紀は彼を殺してしまったため、十二万円の半分しかもらえていなかったことになる。
それに気付いた貴紀は、自分が馬鹿だと思った。それから、ふいに貴紀は自分が皆を殺してしまったのだなということを改めて実感すると、急にむなしくなった。
人を殺すのはもうこりごりだ。だから、貴紀はもう殺し屋のバイトを辞めようと思った。減給されるのもそうだけど、大切な自分の仲間を死に追いやるのはもう御免だ。
その後、貴紀はコンビニに行くのも忘れて、そのまま自宅まで歩いてきていた。自宅の前まで着くと、そこにパトカーが一台停まっているのに貴紀は気付いた。それから、パトカーからすぐに警察官が二人降りて、こちらにやって来た。
「ちょっと失礼ですが、あなたが西村貴紀さん?」
警察の一人が、貴紀にそう訊いた。
「はい」と貴紀は返事をすると、その警察官は胸ポケットから警察手帳を取り出し、それを見せた。
「私、警視庁の松本幸太郎と言います。あなたは二週間前に軽井沢の別荘へ行きましたね?」
「ええ」
「そこであなたは六人のお友達たちと旅行をされていたと思いますが、そこにいたお仲間たちが何者かによって殺害されたようなんです」
松本と言う刑事がゆっくりと説明した。
「そうです……そうなんです」
貴紀は思い出したように言った。
「やっぱりそうですか。ところで、管理人さんに訊いたら、そこにいたメンバーの一人がいなくなっているそうなんです。それが、西村さん……あなたなんですよ」
「はい、確かに逃げました。怖かったんです」
貴紀がそう言うと、「そうでしたか。では、一体誰がそこにいたメンバー六人を殺害したんでしょうかね?」と、松本刑事が訊いた。
「さあ?」と、貴紀は首を傾げる。
「その中に、みゆきが……みゆきがいたんです」
それから、松本刑事がそう言った。
「みゆきさんを知っているんですか?」
すかさず貴紀がその刑事にそう訊くと、彼はおもむろに口を開いた。
「娘です。みゆきは、私の娘なんですよ」
それから、松本刑事が呟くように言った。
なんと! 貴紀は驚いた。
そして、そこで貴紀は合点がいった。この刑事こそみゆきの父親であったのだ。
「実は……あなたに容疑がかかっています」
その後、もう一人の警察官がそう言った。
「そうですか」
貴紀は諦めるように言った。
「事情聴取のために、署までご同行願いますか?」
それから、その刑事がそう訊いた。
「はい。分かりました」
貴紀はそう頷いて、そのパトカーに乗った。
お読み頂き、ありがとうございました。
いかがだったでしょうか?
皆さまの推理は当たりましたか。犯人を当てられたあなた様、お見事です!
今回、またミステリーを書きたいと言う思いから、構想して作り上げた作品です。
また、今回は本格ミステリーが書けたらいいなと思いで、必死の思いで書き上げました。
時間は掛かりましたが、何とか書き上げられたこと嬉しく思います。
ミステリーが好きな私は、某ミステリ作家さんの作品を読んで、この発想は面白いと思ったことから、登場人物たちの名前が、もしミステリー作家と同じだったら……というのを思いつきました(別荘のオーナーの青木と管理人の前田以外)。我ながら面白いと思うんですが、皆さん、いかがでしたか?(因みに、説明はしていませんが、もう二人隠れていますよ。まだ見つけていない方はもう一度読んで、探してみて下さい)
改めてこちらの作品をお読み頂いた皆様、どうもありがとうございました。
宜しければ、感想等頂けると嬉しいです。