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かきかけ~作者と愉快な主人公たち~  作者: 蓮井 ゲン
第二章 新たなる旅路
77/143

77 難問 その1

いつもありがとうございます。

今回から数話、意味不明な問題を解いて塔を上っていくだけの展開が続きます。

よろしくお願いします。

 ゲンたちが落ちたのは、すぐ下の階だった。床が特殊な素材でできているのか、落ちても衝撃や痛みはほとんど感じなかった。

「間違ったら下の階に落とされるっつーわけか……」

 ゲンは天井を見上げて呟いた。天井はすっかり元に戻っている。

 先ほどの問題は不正解だったようだ。そして、そのペナルティとして階下に落とされたのだろう。落とされれば、上の階まで行った苦労は水の泡だ。一度通過した階を、再度魔物たちと戦いながら進んでいかなければならない。



 上の階に戻ろうとしたゲンたちは、階段の前でやはり扉に行く手を阻まれた。下の階に落とされると、突破したはずの扉まで復活してしまうようだ。

「彼は一姫二太郎である。彼に子供は何人いるか。……さっきと問題が違うな」

 扉に書かれた問題まで変わっていた。前回は桃は何円かという内容だったはずだ。

「これは間違えやすいよね。僕も以前は勘違いしていたよ。女の子1人男の子2人って意味じゃなく、1人目が女の子で2人目が男の子ってことだよね」

 答えがわかったからなのか、ケンジアは嬉しそうだ。


「ケンジア、オマエ、よく知ってんじゃねーか。じゃ、答え合わせといこーじゃねーか。この問題の答え、それは……」

 ゲンはそこでボタンを押し、そして答えた。

「10人!」

 消滅した扉が、正解の証だった。

「ええ……。僕の知っている言葉の意味と違うよ……」

 ケンジアは呆然とした表情を浮かべている。

「一姫二太郎っつーのは、この男の名前に決まってんじゃねーか! 『彼はケンジア・シーガンである。彼に子供は何人かいるか』っつー問題と変わんねーんだよ。で、答えは10人。ちな、4男6女な」

 ゲンは勝ち誇ったような顔で叫んだ。




 上の階で先ほど不正解を出した扉も、やはり問題が変わっていた。階ごとに決まっているのではなく、ランダムに出題される仕組みになっているのかもしれない。

「次のうち、あやまっているものはどれか。

①すまん、オークを多く倒しすぎたようだ!

②ごめん、ドラゴンにドラコンで負けちゃった!

③悪ぃな、キメラとの勝負、最後は俺が決めらぁ!

④許せ、コボルト……。今のはたった5ボルトだ……。

⑤申し訳ない、リッチがリッチに見えたもんで……。

⑥ソーリー、ここはスライムすら忌む場所だった!」

 いつものようにロキが問題を読み上げた。

「どれも謝っているようにしか見えないが……」

「それに、全部ダジャレで謝ってるよね……」

 ロキたちは問題の内容に戸惑っているようだ。


「アヤは待ってねー! 待ってんのは妹のサヤのほーだ!」

 ゲンが答えると、扉は一瞬で消え去った。

「……お前、よくこんな問題ばかり思いつくな」

「こんな問題、絶対にわかるわけがないよね……」

 2人は呆れ顔だ。

「こーゆー言葉遊びみてーなのが、この特級問題にゃイパーイ出てくんぞ。覚えとくといー」

 ゲンは階段を駆け上がった。




「例の有名なやつ以外でこれを読み、意味も答えよ。子子子子子子子子子子子子」

 次の階も恙なく扉まで辿り着き、ロキがいつものように問題文を読み上げた。なお、後半部分はすべて「こ」と読んだ。

 かつてこれを読み解いた人物がいたと言われている。その人物が出した答えが、例の有名なやつ、なのだろう。


「こねこすこしすしこねこね(子猫少し寿司こねこね)! 食べよーと思ってテーブルの上に出しておいたら、飼っているぬこが少しだけお寿司をこねこねしていた。かわヨ!」

 ゲンは即答した。他の読み方も考えられるだろうが、この読み以外はもちろん不正解だ。

「どーだ、めちゃくちゃ簡単だろーが! オマエら、もしかして読めねーのか? おー、ノー!」

 ゲンはわざとらしいほど大袈裟に驚いた。


「……閃いた。オレばかり答えてもつまんねーから、たまにゃオマエらにも解いてもらおーじゃねーか」

「なんだと……?」

 ゲンの突然の提案に、ロキとケンジアの動きが一瞬止まった。

「戦闘はオレがワンパン、問題はオレが瞬殺。これじゃオマエらの見せ場が何もねーじゃねーか。オマエらにもいーカッコさせてやろーってんだよ」

「見せ場なんかいらないよ。それに、あんな問題、僕たちにわかるわけがないよ……」

 ケンジアは露骨に嫌そうな顔をしている。

「間違っても下の階に落とされるだけじゃねーか。死にゃしねーよ」

「俺たちは一刻も早く石を破壊しなければならない。落とされて時間を無駄にしているような余裕はない」

「他のやつらも落とされまくってんだろーし、オレたちだけ先に着いても意味ねーだろ。のんびり行こーじゃねーか」

 ゲンはロキの正論を鼻で笑い飛ばした。


 結界を消すためには、4つの石をすべて破壊しなければならない。ただし、他の石が1つでも無事なら、壊しても5分後には再生してしまうという。ゲンたちだけが早く着いても意味がないのだ。

 互いに連絡を取り合うことができないため、石を壊したらその場で5分間待機するということで話がまとまっている。5分後に石が再生したら、再度破壊して再び5分間待機する。これを石が復活しなくなるまで続ける。

 早く着くということは、石を壊す回数や待つ時間が増えることと同義だ。その意味では、適度に下の階に落とされながら、ある程度の時間をかけて進むほうがいいのかもしれない。




「次の問題に1か8かで答えよ。

・3+5=8

・7-6=1

・4×2=8

・3÷3=1

・4+9=?

……なんだ、このひどい問題は?」

「1でも8でもないし、答えようがないよね……」

 次の階で待ち受けていた問題に、ロキとケンジアは閉口しているようだ。


「こりゃさすがにオマエらにゃ無理だろーな。今回はオレが答えてやんよ。……3万72!」

 当然のように正解だった。

「全然意味がわからないよ……」

 ケンジアが頭を抱え込んだ。

「問題に書いてたとーり、適当な数字を一か八かで答えりゃいーんだよ。っつーわけで、本当はどんな数字でも構わねーんだが、答えを1つ決めなきゃなんねーから、パッと頭に思い浮かんだ3万72っつー数字を正解にしたっつーわけだ。オレ以外にわかるやつがいたらすげーわ」

 ゲンは笑いながら階段を上がっていった。




「ずばり、今は何問目?」

「2万匁!」

 次の階の問題も、ゲンは迷うことなく即答した。もちろん正解だった。

「これはどういうことだ? 何かの重さなのか?」

「この問題を考えた当時の、オレの体重に決まってんだろーが。言わせんなよ、恥ずかしーじゃねーか。ちな、今は2万4千匁な」

 ゲンは堂々と体重を暴露した。


「……お前、死にたくなければまずは痩せろ」

「さすがにその体重はちょっとまずいと思うよ……」

 2人の心配そうな視線がゲンに突き刺さる。ロキもケンジアも長身だ。2人ならともかく、ゲンの身長では危険な数値だろう。

「うるせーよ。オレもオマエらみてーな身長になりてーからめちゃくちゃ食いまくってんのに、縦じゃなく横にしか伸びねーんだよ。おかしーだろ! でも、諦めねーぞ。あと20センチ身長が伸びるまで、食うのをやめねーっ! ちな、こー見えてもオレは健康体だから心配いらねーぜ。健康診断っつーもんは今まで受けたことねーから、メタボとか高血圧とか高血糖とか、そーゆー指摘を食らったことねーんだよ。異常を指摘されてねーんだから、健康っつーことだろーが!」

 ゲンは興奮したように早口で叫んだ。




「次のうち、炎の魔法はどれか。

①サンダー

②スリープ

③ブリザード

④ストーム

⑤ヒール

⑥ポイズン

⑦ファイア

⑧ダークネス」

「おっ、こりゃちょーどいー問題じゃねーか。ケンジア、魔法使いのオマエならわかんじゃねーか? っつーわけで、この問題はオマエに任よーじゃねーか」

 次の階の問題で、ゲンは解答権をケンジアに渡した。指名されたケンジアの表情に、不安以外の感情は見つからなかった。


「心配いらねーよ。この問題はそこまでひねくれてねーから、間違いなく①~⑧のどれかが答えだ。勘で答えても8分の1で当たる。がんがれ」

「普通に考えたら⑦だけど、さすがに違うよね……。もしかして、魔法の名前と効果が合っていないのかな……? 名前はサンダーだけど全然別の魔法とか……」

 ケンジアは顎に手を当てて考え込んでいる。

「……一番怪しいのは③かな。ブリザードという名前だけど、実は炎の魔法なんだと思う」

 ケンジアは意を決したようにボタンを押し、そして答えた。開いたのは扉ではなく、足元の床だった。

 

 ケンジアが正解できず、ゲンたちは階下に落とされてしまった。落ちてもダメージをほとんど受けなかったのが救いだ。

「……ケンジア、残念だったじゃねーか。さっきの答えは⑤のヒールだ」

「ヒール? ヒールという名前だけど、実は炎の魔法ってことなのかな?」

「ちげーよ。炎っつーのはヒーラーの名前だ。ヒーラーが使う魔法っつーたら、ヒールに決まってんだろーが! だから正解は⑤だ。簡単やろがい!」

 ゲンの解説に、ケンジアは呆れたように肩をすくめた。




「新潟、クワガタ、雛形、山形、干潟、明け方、扇形、鋳型、五十肩、花形、皆様方、ガタガタ……。両親がともにAB型の場合、生まれてこないものを4つ挙げよ」

 上の階に戻ろうとするゲンたちを待ち受けていたのは、やはり前回とは異なる問題だった。

「なんだ、これは……? 提示されている中から4つ選ぶのか……?」

「これも不思議な問題だね……。いろいろと意味がわからないよ……」

 ロキたちはお手上げのようだ。


「いとこ、はとこ、甥、姪!」

 ゲンの解答が扉を消し去った。

「どれも自分の両親からは絶対に生まれてこねーだろーが! 最初の新潟とか山形っつーのは、選択肢じゃねーぞ。ただの独り言だ。ちな、この問題の正解はイパーイある。両親から生まれてこねーもんを4つ挙げりゃいーから、じーさんばーさんでもいーし、近所のおっさんやおばはんでもおkだ。めちゃくちゃ簡単ジャマイカ! じゃ、次行こーぜ」

 ゲンたちは次の階に進んだ。

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