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30 のりまくり その5

いつもありがとうございます。


今回で一連のノリツッコミは終わります。

お目汚し失礼しました。


よろしくお願いします。

「ちくしょう、俺としたことがドジを踏んじまったぜ。まさかこんなところで捕まるとは」

「ははは、いいザマだな。ここに忍び込んで、今まで無事に出られた人間はいないんだよ」

「殺すならさっさと殺せ」

「言われなくてもそうしてやるよ。……と言いたいところだが、簡単に殺したんじゃつまらない。どうだ? 俺とゲームをしないか?」

「ゲームだと? 俺はそんなことに興味はない」

「まぁ、そう言うな。俺が今からクイズを出す。もし全問正解できたら、貴様を逃がしてやる」

「全問正解で俺を解放だと? どうせ嘘に決まっている。だが、俺もクイズは嫌いではない。いいだろう。死ぬ前に楽しませてもらおうか」

「問題は五択だ。『はい』か『イエス』か『ウイ』か『ヤー』か『シ』で答えろ」

「ちょっと待て! それ全部同じ意味だろう!」

「ルールを説明する。選択肢は常に5つ。『はい』『イエス』『ウイ』『ヤー』『シ』。この中のどれかを1回だけ答えろ。これ以外の言葉は発するな。言い直しはもちろん認めない。不正解やルール違反があった瞬間、貴様の命は尽きる」

「いいだろう。どうせ『今からこの引き金を引いていいか?』みたいな問題が出て、どう答えても俺は死ぬんだろうがな」

「ではいくぞ。物が燃えると何が残る?」

「なんだと? どういうことだ?」

「『はい』か『イエス』か『ウイ』か『ヤー』か『シ』で答えろと言ったはずだ! 物が燃えると何が残る?」

「……灰?」

「正解」

「なるほど、そういうことか」

「選択肢以外の言葉は発するなと言ったはずだ! 今度やったらルール違反で殺すぞ! わかったか!」

「はい」

「次だ。九九で、2×2=?」

「4!」

「正解。魚はエラ呼吸、では人間は何呼吸?」

「肺!」

「正解。ずばり、何キリスト?」

「イエス!」

「正解。新年の挨拶、ハッピーニューイ?」

「ヤー!」

「正解。世の中は絶えず移り変わるという意味の四字熟語、何転変?」

「有為!」

「正解。音階で、ラとドの間は?」

「シ!」

「正解。初めての出陣、何陣?」

「初!」

「正解。数の大小を当てる遊び、何アンドロー?」

「ハイ!」

「正解。蒸留酒の一種、何スキー?」

「ウイ!」

「正解。江戸幕府を開いたのは、徳川○○や◯。○をつなげると?」

「いえす!」

「正解。掛け声の一種、えい、何、たー?」

「やー!」

「正解。次が最終問題だ。これに正解したら貴様を逃がしてやる。心の準備はいいか?」

「はい」

「立つ前の赤ん坊が四つん這いで歩くことを何と呼ぶ?」

「はい……はい?」

「残念。貴様は『はい』を2回言った。ルール違反で失格だ」

「だが、正解は『はいはい』だから、『はい』だけでは不正解になるんだろう?」

「その通りだ。察しがいいな」

「なるほど、汚いやり方だな」

「最終問題だと言ったはずだ。貴様がどう答えようと、必ず貴様の負けになる」

「最後の最後でやってくれたな。どうあがいても俺はこうなる運命だったわけだ」

「勝敗は決した。俺が勝なら、貴様は何だ?」

「敗……」

「そう、そのとおりだ。そして、俺は今から引き金を引く。そうしたら、貴様はどうなる?」

「死……」

「そのとおり! 貴様は死ぬんだ! さぁ、死ね! ……うわっ!」

「やれやれ、死んだか。銃が暴発するように細工をしておいて正解だったな。……これが鍵か。こんなところ、早く脱出するぞ。……あっ!」

「残念だったな! こんなこともあろうかと、部屋の外で待機していたのさ! さぁ、手を上げろ!」

「ちくしょう!」

「このままてめぇを殺してもつまんねぇから、俺様とゲームをしようぜ」

「ゲームってまさか……」

「俺様が今からてめぇに問題を出す。全問正解したらてめぇの勝ちだ。見逃してやるよ」

「やっぱりクイズかよ!」

「俺様の出す問題に、てめぇは『いいえ』か『ノー』か『ノン』か『ネイ』か『ナイン』か『ラー』で答えろ」

「今度は五択じゃなくて六択かよ!」

「ごちゃごちゃうるせぇ。てめぇはただ俺様の出す問題に答えりゃいいんだよ。ルールはさっきと同じだ。早速行くぞ。サッカーはイレブン、では野球は?」

「ナイン!」

「正解。次。絵画の展覧会に行って一言。『どれもみんな○○○だね~』。何が入る?」

「いい絵!」

「正解。次。住宅の展示場に行って一言。『こんな素敵な○○○みたいね~』。何が入る?」

「家住……って、おい! 問題が違わないか!?」

「やっちまった! 出題ミスは重罪。捕まったら恐ろしい罰が待っている。捕まるくらいなら死んだほうがましだ。……ぎゃぁっ!」

「やれやれ、バカのおかげで命拾いしたぞ。出口までもう少しだ! ……あっ!」

「待っていたぞ。ここを通りたければ、私とクイズで勝負しろ」

「またかよ! どれだけクイズが好きなんだ、ここの奴らは!」

「早速だが、問題だ! 三択ロースには兄が2人いるという。1人は一択ロース、もう1人は何ロース?」

「三択ロースに兄が? それは初耳だな。……というか、それだけなのか? 選択肢はないのか?」

「そんなものはない! 自分で考えろ!」

「……普通に考えたら二択ロースだが、それではあまりに簡単すぎる。ひっかけ問題か?」 

「わからないようだな。ではヒントをやろう。15人いる弟たちの名前を教えてやる」

「兄だけでなく、弟が15人もいるのかよ!」

「洗濯ロース、光沢ロース、帰宅ロース、干拓ロース、贅沢ロース、信託ロース、電卓ロース、委託ロース、採択ロース、どんたくロース、身支度ロース、全くロース、特上ロース、サザンクロース、サタン苦労す」

「なんだ、そのふざけた名前は!? 特に後ろのほう! こんなヒントでわかるわけがないだろう!!」

「残念、時間切れだ。答えはヲタクロース。知らんけど」

「知らないなら問題にするな!」

「大丈夫だ、事実だから安心しろ。なにしろ、私の遠い親戚の友達の友達のそのまた友達のいとこの元カノの先輩のフォロワーの担任の妻の祖父の主治医のはとこの隣人のペットの元飼い主の初恋相手の甥の上司の恩人の飲み友達の同僚の前妻の弟のゴルフ仲間の愛人の同級生の悪友が言っていたそうだから、信憑性はかなり高い」

「そんなわけがあるか! どう考えてもガセネタだろう!」

「とにかく、不正解は不正解だ。消えろ!」

「……うっ! ちくしょう、こんなところで……」

「何か言い残したいことはあるか?」

「最後に1つだけ教えろ……。どうしてお前たちは、そんなにクイズが好きなんだ……?」

「今日が月曜日だからだ。月曜日以外ならクイズは出さない」

「月曜日とクイズに何の関係が……?」

「カレンダーを見てみろ。月曜日のところにMONDAYと書いてある。だから問題を出すんだ」

「って、違~~~~~う!!」



「『五択』ではなく『御託』だ。間違えないでくれ」

「ノリィさんはやっぱり面白いや~。最後のクイズ、悔いず~っと残りそうだね~」

 この状況でも能天気にはしゃぐジョージ。ノリィも嬉しそうだが、一瞬で真顔に戻る。


「お前は作者だ、やろうと思えば何でもできるはずだ。作者しか知らない秘密の通路があったり、作者だけ扉や壁をすり抜けられたりしてもおかしくはない。それに、お前は魔法使いだ。魔法を使って密室から脱出した可能性もある」

「ちょっと待て! オレは魔法なんか使えねーよ! この服装のせーでよく間違われるが、オレは魔法使いじゃねーんだよ!!」

 ゲンは必死で訴える。魔法使いに間違われたのはこれで何回目だろうか。ユーシアたちはもちろん、リョウにも間違われた。今度はノリィだ。

 服装以外に心当たりはない。Tシャツの胸の部分に、魔法使いの少女の顔がプリントされている。それを見て、着用しているゲンも魔法使いだと思われたのだろうか。

「いや、お前は間違いなく魔法使いのはずだ。なぜなら……」

「なぜなら……?」

 ゲンが身を乗り出す。早く理由を聞きたかった。


「30歳まで童貞だと、魔法使いになれると聞いたことがある。お前の年だと、既にかなりの力を持っていても不思議ではない」

 ノリィの指摘に、ユーシアたちも頷いている。

「な……!」

 ゲンが息を呑む。魔法使いと間違われている理由が、やっと理解できた。

 30歳を過ぎても童貞だと、魔法使いになれる。巷でまことしやかにささやかれている都市伝説だ。さらに年齢を重ねると、悟りを開いたり賢者になれることもあるという。


「オマエら、オレが童貞に見えんのか!? ふざけんじゃねーぞ!!」

「違ったか。それは悪かった。……で、どこの店だ?」

「そーゆー店にゃ行ったことねーよ! オマエらと一緒にすんじゃねー!!」

 ゲンは顔を真っ赤にして怒鳴った。

「オレはこー見えても、今までに数えきれねーほど女を抱いてんだよ! 脳内で! 空想で! 妄想で! 現実じゃ0人でも、頭ん中じゃ余裕で1000人斬り達成だぞ! だから、オレは童貞じゃねーんだよ!!」

 ゲンの告白で、現場はしらけたような微妙な雰囲気に包まれた。ユーシアたちも呆れたように肩をすくめている。


「もしかして、生身の女には興味がないのか?」

「ねーわけがねーだろ! オレの場合は、やったら捕まる年の女にしか興味がねーから、やりたくてもやれねーんだよ! そんな年の女が店にいるわきゃねーから、行く意味がねーんだよ!!」

 ゲンの絶叫に、その場にいた誰もが後ずさった。ノリィら刑事たちですら、一様に表情が凍り付いている。ミトに至っては、顔を引きつらせ、汚らわしいものを見るような目でゲンを睨みつけてくる。

 ゲンが嫁と呼ぶ4人の少女たちは、全員10代前半。それがゲンの食指が動く年齢層なのは明らかだ。


「……今回の事件の犯人であろうとなかろうと、お前は逮捕しておいたほうが社会のためになりそうだ」

 ノリィが苦笑いを浮かべる。

「オレは犯人じゃねーと言ってんじゃねーか! 殺されたねーちゃんの年を考えりゃわかんだろ! オレのストライクゾーンじゃねーんだよ! 興味ねー女を襲うわけねーだろ!」

「お前の言い分はよくわかった。続きは署で聞かせてもらおう」

 弁解もむなしく、ゲンは刑事たちに取り押さえられ、連行された。

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