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見透かされてる?

早速次回の展開で悩んでます。

どうしたものか。

 「違うって何が?」

 「うーん、なんていうかなぁ」


 体温が下がっていくのを感じる。それはウォーラと共に水に浸かっているせいだろうか。それとも、図星を突かれて血の気が引いてるのだろうか。

 鼓動が早まる。動揺する。

 人間は自分とは違う存在を嫌う傾向がある。それは前の世界で嫌というほど学んだ。だからつい恐れてしまう、人に嫌われることを。ましてや彼女に嫌われるなど…。

 『俺はお前とは違う?でもそれがどうした』そう思う自分と、『俺はお前とは違うかもしれない。だからって俺を嫌わないでくれ』そう懇願する自分がいた。それは事実だった。

 考えるだけで嫌だった。恐怖の感覚が理由なく俺を蝕んでいった。


 「ユキは、なんというか。よく考える人だよね」

 「えっ?」


 だが、彼女が発した言葉は俺の不安な想像とは違うものだった。


 「私さ、自分が未来でどうなってるのかなんて考えたことないんだよね。それよりも言われたことをやる、今大事だと思ったことをやる。私って、そういう人なの」

 「…あぁ」

 「でもさ、ユキは違うじゃん。ユキは自分が将来何をやりたいのか考えてる。私が考えていない何年後かの未来を考えている。それってさ、うまく言えないけど良いことだと思うよ」


 そう言って彼女はニコッと笑った。先ほどと同じように太陽のような笑顔だった。

 その言葉は裏表のない本心だと思う。だから俺はそんな彼女に救われた。愛しいと思った。気がつけば俺は彼女をギュッと抱きしめていた。突然のことにウォーラもとても驚いている。


 「うぁっ。な、何?」

 「ごめん。ちょっとこうさせて」


 安心したからだろうか。それとも、彼女を抱きしめているからだろうか。

 全身の血の流れを感じる。自分の体が熱を帯びていることを感じる。川の水で顔が濡れる中、何か違う液体も顔を濡らしていた。

 嬉しい。愛しい。溢れる感情が、彼女を抱きしめる力を強めていた。こう言ってくれる彼女の存在を絶対に忘れたくない。

 あぁそうだ。だから、きっと、俺は彼女にパンを渡しているのだろう。そうすれば彼女は笑ってくれるのだから。


 「あの、ユキ。痛いんだけど」

 「…ごめん」


 徐々に歪む彼女の顔を見て腕を離す。冷静になってから今まで考えていたことをまとめると、何だか恥ずかしくなってしまいウォーラの顔をちゃんと見ることができなかった。


 「俺、戻るよ」

 「家に?」

 「あぁ。ウォーラも早く戻れよ、お化けが出るぞ」

 「…ユキってそういう事を言うよね」


 川から上がって手を伸ばしウォーラを引き上げると、彼女はムスッとした表情でそう言った。すると今度は彼女の方から俺の腕へと抱きつく。


 「どうした?」

 「お化けに襲われたら怖いでしょ?」

 「ウォーラってそんなの気にするタイプだっけか」

 「かもね」


 彼女は表情を変えてにっこり笑い、その後もずっと腕に抱きついていた。やがてウォーラの家まで彼女を送り届け、俺自身も自分の家に辿り着く。突然出て行ったことについて父さんと母さんに謝罪して、俺は冷めた夕飯に手を伸ばすのだった。

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