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多い道は迷いやすく

年末年始だというのに盛り上がりに欠けるテーマが続いてしまうと思います。

 「多分だけどさ、本当はアタシがこの店を継ぐことになると思うんだよね」


 キザリィさんは空になったコップをギュッと握る。「夢はあるか」というこの質問といい、今の言葉といい、彼女が将来に関しての悩みがあることは確実だろう。人間関係が近くて遠い俺は、その悩みの相談相手としてはちょうど良かったのかもしれない。

 彼女の話し方から察すると、店を継ぐという未来は彼女が望んでいるものではないのだろう。正直に言うと意外だった。キザリィさんがこの店で仕事をしているのを見て嫌そうな顔をすることはなかったからだ。寧ろ楽しそうに仕事をしていると見たが…。


 「もちろん木彫り細工が嫌だとか、お父さんが嫌いだとか、そういうことじゃないんだけどさ」

 「じゃあ、何で?」

 「モノ作りは苦手でさ。お父さんの腕を引き継げるかどうかっていうとそんな気持ちはないんだよね」


 何かを諦めたかのようにキザリィさんが「たはは」と笑う。恐らくだが、一度は本気で技術を学ぼうと努力したのだろう。だが芸術品を作るに当たっては努力だけでは良い品を作ることはできないと聞く。

 そう、必要なのは才能。生まれ持ったセンス。それがなければやる気があっても、彼女の父のように良い物を作り続けることなどできないだろう。悲しいけれどそれが現実のはずだ。


 「あ、なんか気づいちゃった?」


 …また考え事が顔に出ていたようだ。


 「ま、そういうこと。アタシはお父さんほど良い物を作れないし、木彫りに関して情熱もないってことに気がついたんだよね。だからアタシはお父さんの腕を引き継いで、この店を継ぎたいかって言われるとちょっと違うかなって」

 「それが悩みなんですね」

 「でもね、お父さんにこんなこと言えると思う?」

 「…わかりません」


 死ぬ前はまだ進路すら決めていなかったし、死んでからも父親と将来なりたいことを話していなかった。それに今の父親とは、根拠はないが俺がどんな道を示しても肯定してくれる気がするのだ。もっとも、うちのところは村のための行動が仕事みたいなものなので、キザリィさんのところとは事情が異なるのだが。


 「あと、さ。アタシは店を継ぐ気はないんだけど、店自体はできれば潰れて欲しくないっていうか」

 「後継者の話、ってことですか?」


 店で作った物をメインで売りに出している以上、技術者がいなければ店の存続はできないだろう。しかしこの業界のことはよくわからないが、それは問題ないのではなかろうか。現にキザリィさんの父親は別のところで修行して店を開いて…。あ。


 「仮にキザリィさんのお父さんに弟子ができたとしても、その人がお店を継ぐかどうかはわからないということですか?」

 「そういうこと。自分はやりたくないってのに、贅沢な悩みなんだけどね」


 まぁ確かに、と思ってしまう。自由に過ごした方が本人のためだとは思うが、恐らく彼女が店を継ぐことが最も波風が立たない選択だろう。

 どうしたいのか、他に何がやりたいのかはわからない。俺が受けているのはあくまで相談だが、どうか彼女を良い選択肢まで導きたいものだ。

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