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技術の進歩は◯◯の歴史とともに

年末年始の準備はできておりますか?

私はできてません。

 キザリィさんが指差した窓へと向かい、その枠からの景色を覗く。そこから見えたのは広い庭、そしてその庭を走る車輪の着いた、人を乗せた四角い塊だった。屋根がついた小さな機関車のようなその塊は、自転車が走るような速度で庭を動き回っている。デザインや速度は違えど、恐らくあれは自動車で間違いないだろう。


 「あれ、何かわかります?」

 「さぁ?なんだか偉い人たちがあれを動かして喜んでるみたいなんだけど」


 まだ一般市民には正体が知れ渡っていないのだろうか。庭という個人の土地とはいえ、街中で堂々と乗り回しているのだから機密性の高い物ではないのだろうけど。


 「いやぁしかし。あれのおかげでうちの売上も上がってるんだから感謝しないとだよなぁ」

 「ん、どういうことです?」


 腕を組んでそう呟いたキザリィさんだったが、俺にはその言葉の意図がまったく理解できなかった。自動車の名前も知らされていないのに、このお店がそれを使えるわけでもあるまいし。


 「あれを作るためにね、国が色んな金属を買い集めているんだって。だから去年急に伸びてた金属アクセサリー市場が落ち込んで、またまたうちみたいな木製細工の店が盛り上がっているわけですよ」


 あぁ、そんなことが起きているわけか。風が吹けば桶屋が儲かる、とは若干異なると思うが何の影響で人生が変わるかわからないものだな。

 そういえば先程店主の人が昨年より楽しそうに見えたが、この売上の話も関係しているのかもしれない。何にしてもこの二人が幸せそうならば俺はそれで良いのだが。

 再び自動車の方へと視線を向ける。今度は積載量のテストでもしているのか、車に紐で荷物を固定していた。フロントガラスなど無い車なのだから、紐程度では吹っ飛ばされないだろうか…と思ったがその後動かしているのをみるに問題はなさそうだ。俺が生きている間に一般市民にも動かせるような時代になるだろうか。いや流石に厳しいか。

 それにしても、と思う。現代日本で育った俺は全くあの機械に驚いたりはしないが、この世界の人にとっては未知の存在であろう。新たな技術が生まれるということは世界の歴史が一歩進むということだ。


 …そして技術が進まない国は侵食されていく。


 そんな考えがふと浮かんでしまった。地球の話ではあるものの世界史がそれを証明している。外部との交流を持たないうちの村なんかは、まさにそんな戦いの技術が進まない場所だろう。

 考えすぎだろうか。だが用心するに越したことはない。帰ったら村長にこのことを伝えるべきだ。もしかしたら村長もこの考えを持っているからこそ俺に街へ行かせたのかもしれない。


 「ありがとうございます、キザリィさん。俺戻ります」


 そう言って荷物を背負い、工房から出ようとした。


 「いや、ちょっと待ってよ」


 が、背後からの言葉で引き止められる。何か言いたいことがあるのかと振り向いてみると、何故か彼女は呆れた表情を浮かべていた。


 「何のために残ってたの?まだお父さんからお金もらってないんでしょ」


 …そうだった。まだ起きていない不安より、直近で使うお金の方が大事だ。

 結局その後、オーダーメイドの依頼を受けた店主が戻って来たのは完全に日が落ちた頃の時間になっていた。

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