思い出の店
忘年会シーズンですね。私は最近喉を枯らしました。
「いらっしゃーい」
八百屋を出た後、俺は昨年も訪れた木彫り細工の店へと赴いていた。そこにいたのは背が伸びていたとはいえ、作月と同じ面影を残しているキザリィ・クボ。俺よりも一回り大きい彼女を見て、…いや、今は大体同じくらいだけれども、そんな彼女を見て俺はどこか懐かしさを覚えるのだった。
「お久しぶりです、キザリィさん」
「…ん、もしかして去年の少年くんかな?」
あの日のように本を読んでいた彼女はその文章から顔を上げて俺を見ると、パッと顔を明るくさせた。
「うわ、久しぶり!背、伸びたねぇ」
「一年も経ちましたから」
「でもアタシの方がまだ大きいよね」
「同じくらいだと思いますけど」
「何を言ってるのかな君は。一度鏡を見たまえよ、ほら」
キザリィさんは俺の肩を掴んで店の中にある鏡の前へと連れ出し、二人揃ってそこに並ぶ。頭の位置がまったく同じな俺たちを見て、ボソリと最後に言葉を付け足すのだった。
「…くそぅ、同じくらいかな」
どことなく悔しそうな彼女を見た後、俺は一年ぶりに訪れた店内を見渡す。内装などに変化は見られず、強いて言うのであれば商品の並びが変わった程度であろうか。心なしか置いてあるアクセサリーや小物が増えている気がする。やはり売れないと在庫が減らないのだろうか。
「キザリィさん、お店の方って」
「ん?」
「やっぱり売上とか落ちてるんですか」
キザリィさんは答えない。彼女は俺に背を向けて肩を震わせていた。その様子だとやはり経営は上手くいっていないのだろうか。ちょっと嫌なことを聞いてしまった。
「…ふっふっふ」
そう思っていたところ、芝居がかったわざとらしい笑い声が聞こえた。この場にいるのは俺と彼女だけだ。つまり。
「ふーふっふっふ」
「…まさか、笑うくらい回復してるんですか?」
「そう!実はまた木製の商品が売れてきててね」
俺の想像とは異なり彼女は満面の笑みを浮かべていた。強がりを言っている、というわけでもなさそうだ。
「おかげで一昨年くらいまでは売上が戻ってきてるんでございますよ」
「そうですか。前より商品が置いてあるんで、捌ききれていないんじゃないかって思っちゃいました」
「おバカだなぁ。売れないなら作る必要ないんだからそんなに物を置くわけないじゃん」
「なるほ、ど?」
店の経営などやったことがないが、そういうことらしい。そして彼女の言葉を証明するかのように店の扉が開き複数人の客がやってくる。キザリィさんは彼らの接客を始めたため、俺は職人さんの方に会いに工房へ向かうのだった。




