覚悟を決める
ちょっとしたターニングポイントです。
ベッドの中で目を瞑る。しかし今までずっと意識を失っていたからだろう、眠りたくても眠ることができなかった。
一人になると不安と恐怖が募っていく。時間はある程度経ったというのに、俺は未だに罪の意識から逃れられない。自分の拳の感覚が忘れられなかった。
ぎゅっと利き手の拳を握る。村長は子どもの力じゃ人の命を奪えないと言った。逆に言えば、俺がもう少し成長していたらこの手で命を奪えるということだ。もし俺が成長してからあんなに激怒することがあれば、その時は本当に人の命を奪ってしまうかもしれない。その事実が怖かった。
スコードが助かったから良い、ということではない。俺の方に問題があるんだ。もう二度とこんなことが起きないように振る舞わなければならない。
強く拳を握ると手の甲が痛む。その頭を魂に刻んでいると、不意に扉が開かれた。入ってきたのは幼馴染のあの子だった。
「ユキ、もう大丈夫なの?」
ウォーラは心配そう顔を浮かべて入ってきたのだった。そういえば俺は彼女の目の前で気がおかしくなったように絶叫したのだ。軽蔑されてもおかしくないはずなのに、今もなお心配してくれる彼女の優しさを嬉しく思う。それが俺以外に向けられるのが良いのに、とも思った。
「少しだけマシになった。そんなレベルだ」
「そっか。でも良くなったならよかったよ」
純粋な笑顔が心に刺さる。俺はそんなふうに思われる人間じゃないんだ。
この罪悪感は俺だけのものなのだろうか。事情を知っているはずの村長もウォーラも俺に対しての拒否反応を示さない様子を見て、そんな考えがよぎってしまう。
「本当に、良かったよ」
そしてその疑問は確信に変わっていく。この事件は誰も特をしないはずだ。それなのに、過去を思い出してうっとりとした表情を浮かべる彼女は、何故か恐ろしいものに覚えた。
「ユキはさ、私を助けてくれたんだよね」
ウォーラはスコードに襲われていた、確かにそれを邪魔した俺は彼女を助けたことになるだろう。実際俺にだって彼女を助けたいと思う意思はあった。でも、最後に抱いていた感情は違う。だから。
「あの時のユキ、ちょっとかっこよかったな」
「やめてくれ」
叫びたい気持ちがあった。それをしなかったのは彼女への、いや現状に対する恐怖からだろう。
「何で…」
「え?」
「何でだよ。俺、本当にスコードを殺そうとしたのに。何でそれを美談みたいに話すんだよ」
「美談って、そんな」
俺がおかしいんだろうか。ウォーラたちが正常で、殺されそうになったからってやり返そうとするのが正しいのだろうか。少し考えてみるものの、やはり俺はそれが正しいとは思えない。
改めて俺が異世界に来ていることを認識した。この世界に俺の常識は通用しないかもしれない。俺の考えはズレているかもしれない。消化できない恐怖を抱えて生きるしかないかもしれない。
ならば自分の中にある正義を信じるしかない。
罪の意識を忘れずに。もう二度と人を傷つけまいと、そういう風に生きることを心に誓ったその日だった。




