事件の終幕
十二月も何回かは毎日投稿をやってみようと思ってます。
「落ち着いたか、ユキト」
あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。いや、わかっている。時計がまったく動いていないのだからそれほど時間が経っていないのだろう。体感では一晩ほど経った気がするのだが。
「聞こえているか?」
「うん」
気がつくとウォーラの代わりに村長が目の前に立っていた。いつもの通り目は細まっていて表情は読み取れないが、心なしか心配そうな顔で俺を見ているように感じた。
まだ心臓はバクバクと鳴っている。だが村長が言っているように落ち着きはしたようだ。今では自分がやったことが理解できる。これから起こることも、理解できているつもりだ。
俺は彼の孫を殺そうとしたんだ。きっと重い罰が待っているに違いない。この村にいられなくなるかもしれない。いや、同じくらいに体を痛めつけられるとか、そういうことだってありえる。できるだけ苦しいことにならないよう、祈ることしかできない。
だが次に村長から発せられたのは、俺の予想とは正反対のものだった。
「すまなかった」
「…?」
予想外の言葉に理解ができなかった。すまない?何故謝られているのだろう。俺は村長に謝られるようなことなどしていない。寧ろ謝るのはこちらの方だというのに。
「話はモーブとウォーラから聞いておる。スコードがウォーラを連れ出し、お前たちに酷い怪我を負わせたことをな」
…あぁ、確かにそうだった。自分のしたことばかりを気にしていたが、よく考えれば俺の方も頭から血を流すくらい痛めつけられていたんだよな。
「お前がスコードを傷つけたのは知っておる。だがそれは仕方のないことじゃ」
「仕方のない?」
「ウォーラの言葉を全て信用するわけじゃないが、スコードは武器を持ちお前を殺そうとしていたとのことじゃ。お前が戦わなければ、きっと今もっと酷い状態でベッドの上にいたじゃろう」
確かにそうかもしれない。最後、俺がラリアットをちゃんと当てられていなければスコードに負けていたかもしれない。負けていれば…、その果ては想像に難くない。
でもそうなっていれば、今こうやって悩むことはなかっただろう。どっちが良いかは選べない、それぐらい自分がやったことの罪は重いと思う。
「そうだスコード。スコードは無事なんですか!?」
「安心しろ、血は流れていたが命に別状はない。いくらお前が一方的に殴っていたとしても、子どもの拳じゃ命を奪うことはできんよ」
「あぁ、そうですか」
そう言われて少しだけ心が救われた気がした。だがそれはスコードが生きていたことによる安心ではなく、俺が人を殺していないことによる安心だった。本当に自分本位な考え方だ。自分の本性がこんな醜いものだなんて、知りたくなかった。
「スコードの処置は後ほど決める。お前はしばらく休んでおれ」
「あ、はい。いや、俺は?」
「ん?ユキトがどうかしたのか?」
「どうしたって、俺には何かないんですか?」
「ユキトは被害者じゃろう。謝罪以外に何がいるというんじゃ」
違う。確かに仕掛けたのはスコードだが、やったことは彼と同じだ。俺だって加害者だ。罰を受けるべきなんだ。
そう村長に伝えようとしたのだが、彼はもう話すことはないというように部屋を出て行った。追いかけようとしたが体が悲鳴を上げるため、仕方なく布団の中で悶々とした気持ちを抱え続けるのだった。




