消えない現実、消えない罪
久々に千文字越えの話ですが、あまり話が進んでいないところを見ると結局短くても毎日投稿した方がいいんですかね。
──。
目は、覚めた筈だった。
しかし脳みそが働かないというか、視界に映る景色を認識できなかった。頭も重いし、これが夢なのか現実なのかさっぱりわからない。俺はまだ夢を見ているのだろうか。
だとしたらどこからが夢だろう。ニュース番組を見た時から?スコードがウォーラを連れ去ってから?それともラムノと出会った時から?いやもっと、もっと前だろうか。
思考は続く、だが答えは出ない。陥った思考のループを断ち切ったのは外部から発せられた音だった。ドアノブが回る音だ。
「あ、ユキ!起きたの?」
入ってきたのは記憶の中に強く残っている水色の髪の少女だった。彼女は水を入れた桶を持って俺の近くへ寄ってくると、ベッドの脇に落ちていたタオルを拾い持っていた桶でそれを洗う。
「大丈夫?喋れる?」
「…?」
「頭から血を流してたくらいだから、もしかしたら普通に考えることができなくなっているかもしれないって。お医者さんが言ってたんだ」
頭から血を。何でだっけ。
彼女が言うように怪我をした影響だろうか、ちょっと前の出来事だけが思い出せない。俺が転生者であることとか、そういうことは覚えてるのに。
「はい、これ頭にのっけて」
「ん?」
再び思考を遮ったのはまたしても少女の一声だった。彼女が渡したのは濡れタオル、それも絞りきれていないビショビショなタオルだ。もはや絞った意味もないそれを受け取って、思わず笑ってしまう。
「ウォーラ、その桶貸してくれ。俺が絞る」
「…!うん」
あれ、どうしたのだろう。ウォーラに桶を要求した時、彼女が笑みを浮かべたように見えた。そういえば今日こうやって話していたが、自分のことばかりを考えていて彼女の顔をちゃんと見たのは初めてかもしれない。
「覚えててくれて」
「あ?」
「私のこと、覚えてくれて良かったなって」
そういうことだったのか。申し訳ないことをした。
やはり自分のことばかり考えていたせいだろう。彼女の顔だけでなく、彼女の質問にも答えていなかった。
「うん、忘れてないよ。…痛てっ」
「大丈夫!?」
桶を受け取ったその瞬間、何故だか手に激痛が走り桶を落としてしまう。入っていた水が床に飛び散り、ウォーラの足を汚してしまった。
「何で…」
「ごめん、そういえば骨が折れる寸前までいってるってお医者さん言ってたんだった。私が忘れちゃダメだよね。ごめんね」
「いや、それより折れる、って」
段々と記憶が戻ってくる。共に恐怖心も。
こんな感覚は前にもあったはずだ。それもつい最近、同じような目が覚めたタイミングで。
手のひらを見る。赤く汚れて見えた。
「あ…」
俺はこの手でやろうとしたことがあった。広げていた手のひらをゆっくりと握っていく。そうすることで見覚えのある凶器になっていった。
「あぁぁ」
夢じゃないのか。あんな醜く、愚かな時間が現実に起こっていたことなのか。
そんなことはないと思いたい。でも、否定できる材料もない。なら、やはり。
「うわぁぁぁ!」
「え、ちょ、ユキ!?」
認めたくない、認めたくない、自分が人を殺そうとしたことなんて!
現実を掻き消すように耳を塞いで絶叫をするものの、恐怖心だけは消えることはなかった。




