激情する彼
他に書いてみたいストーリーはあるのですが並行してやれるほど時間と余裕がないという。
やっとの思いで見つけたウォーラは呼吸を整えていて、その隣にいるスコードは自分の指を押さえている。先ほどまで声が聞こえなかった息が整っていない彼女と、彼の指からたらりと流れる一筋の血を見るところから推測すると、どうやら口を押さえられていたスコードの手をウォーラが噛んだようだ。
反抗された怒りか、それとも指の痛みのせいか、はたまた部外者である俺が来た苛立ちだろうか。スコードは俺に憎しみの視線を向けてくる。
「ユキト、てめぇ!」
「スコード、お前何やってんだよ!」
人気のない場所で二人きり、しかもウォーラの方は望んでここにいるようには見えない。正直に言って犯罪の匂いしか感じられなかった。
「こいつ、いつも邪魔をしやがる…」
「…いつも?何のことだよ」
スコードとまともに会話をしたことなど数えるほどしかない。私生活で顔を合わせることは計算塾の時くらいだし、そもそも俺はスコードと関わりたいと思っていないのだから邪魔をすることもないはずだ。
「うるせぇ!目障りなんだよ、お前が一々何かをする度によ!」
「…いや、意味がわかんないんだけど」
言葉の意味がわからず、ようやく俺は冷静になった。アドレナリンの分泌が収まったせいか、今はもう体中が痛い。切り傷がヒリヒリする。
俺とは対照的にスコードの方は段々と感情が昂っているようで、口調や態度が段々と荒っぽいものへと変わっていった。
「お前がよ!何か手柄を上げるたびにおれは自分の立場が危うくなるんだよ!」
はぁ?
「わかるんだよ!爺さんがお前を評価しているってことを!爺さんだけじゃねぇ、村の人間が段々お前のことを評価していくのが気に入らねぇんだよ!」
それは俺に言われても仕方がないんだが。大体それはお前の態度のせいだろうが。
どうしよう、今そのことを言ったとしても火に油を注いでしまう気がする。ただでさえ激怒している今の彼が更に感情的になったとしたら、どんな暴走をするのかわかったものじゃないのだから。




