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平和な時間

ちょっと登場人物の関係に苦労しました。遅れてすみません。

それはそれとして、十一歳編始まります。

 冬が過ぎ、世界が寒さを忘れた頃。

 最近十一歳の誕生日を迎えた俺は畑仕事を終えると、いつものように木の棒と数個の石ころを鞄へ入れて村の広場へとやってきていた。


 「それじゃ、始めるぞ」


 俺のかけた号令に幾つかの返事が返ってくる。

 今、俺の目の前には十人程度の村人がいる。集まった人の年はバラバラで、子どもから大人までの老若男女といった感じだ。その集まった人々に対して、適当に河原で拾った色付きの石ころを十個ずつ配る。


 「今日は初めて集まった人もいるからな。数の数え方からやっていこうか」


 そう、今やっていることは計算塾である。

 元々はウォーラに対してのみ行っていたこの授業であったが、村長から依頼を受けて週に一回くらいのペースで行うことになったのだ。

 そして、この計算塾が彼女がこの村に残ることができる理由にもなっている。


 「おれわかるぜー!ラムノせんせーが教えてくれたもんな!」


 この中でも特に幼いであろう、五歳の少年であるダノガが元気にそう言った。

 彼が言うように、ラムノはこの村にやってきた外部の講師という扱いになっている。裕福な家に育った彼女は基礎的な勉強を学習しており、人に教えることができるくらいには知識を持っている人間であったのだ。

 余所者であることには変わらないため最初は彼女に対しての対応が悪い人もいた。しかし村長の紹介でこの村にやってきた(ということになっている)こと、実際に村に恩恵をもたらしていること、しかも子どもで、更に人当たりの良い性格を演じられる彼女を露骨に毛嫌いする人は減っていき、次第に村に溶け込んでいった。

 ラムノは今、事情を知っている人間がいる俺の家に住み込んでいる。父さんは村長に逆らうことができないし、わざわざ逆らうこともしないだろう。

 きっと彼も大人だから、村を守らなければならない立場だから俺がラムノを連れてきた時に怒りを見せたのだろう。今現在ラムノを溺愛しているその姿を見ればそう想像することができる。

 しかし若干一名、彼女のことをよく思っていない様子の人間もいた。


 「はいはい!私もわかる!」


 ウォーラ・ブライド。あと二ヶ月ほどで十一歳の誕生日を迎える彼女は、何故か俺の家に住むラムノの存在に対して対抗心を燃やしていた。


 「まぁウォーラはそうだろうな」

 「ふっふっふ。私はユキの一番目の生徒だからね。数の数え方から足し算と引き算まで朝飯前ですよ。最早教える側に立ってもヨユーだね!」

 「じゃあウォーラねえさん。三掛ける三は?」

 「掛け算…!?掛け算はまだ…」


 ラムノが出した問題に対して口をつぐむウォーラ。

 ウォーラに算数を教えてもうすぐ一年半程だろうか。二桁の足し算まではできるようになったものの掛け算はまだできないでいた。


 「…フ」

 「あ、笑った!ユキ、今ラムノ先生が鼻で笑った!馬鹿を見る目で!」


 ちなみに、ラムノもラムノでウォーラのことをよく思っていないようだった。正確に言うと自分に突っかかるウォーラを揶揄っているというところだろうか。


 「怒るなよ、ウォーラよりもラムノの方が色々知ってるのは事実なんだから」

 「怒るよ!からかわれたら怒りたくなるよ!」

 「気持ちはわかるけど、お前はラムノよりもお姉さんだろ。仲良くしろよ、な」

 「向こうが仲良くしようとしてくれないんだもの!」

 「あー、それは、まぁ」


 どうしよう。今まで喧嘩とかには関わったことがない俺は、こういった仲裁をするのがとても苦手なのだ。自分がこうあるべきだ、と考えられたら相手を説得しようとできるが、この二人のように当人同士の問題ならばなんて声を掛ければいいのかさっぱりわからない。

 そもそも何でコイツらはこんなに喧嘩ばっかりするんだ。前世で殺し合いでもしていたのか。


 「私は認めてないからね!ユキと一緒に暮らしてるなんて、許してないからね!」


 何でお前の許可がいるんだ。

 俺の横で何故か勝ったような笑みを浮かべるラムノも軽く嗜めて、俺たちは今日の分の計算塾を始めるのだった。

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