逃げ場のない討論
書いてて「ユキトくんは真面目だなー」って思ってます。
ラムノが恨まれている可能性。彼女の両親が軍人で、科学者で。戦争で彼女の両親が亡くなっていて。…でもきっと、戦争が起きている以上同じ人もきっといて。
そうか。その原因の一部を作っているのは戦争の関係者である彼女の家族。ならば犠牲者が関係者の娘であるラムノを狙って襲ったりすることも考えられる。そして、その巻き添えでこの村も。…そういうことか。
でもそれって酷い話じゃないか。ラムノには悪いが、既に彼女の両親は亡くなっている。直接の原因が死んでしまった以上ラムノを恨んだってしょうがないだろ。彼女が恨まれる理由なんてもうないはずだ。それとも、そう考えてしまうのは俺が彼女の知り合いだからだろうか。
「さてユキト。わかってもらえたかのう。何故我々がこの娘を迎え入れることができないか」
苦悩する俺の元へ村長が声をかけてきた。いつもは細く、開いているか閉じているかもわからない目が俺を見ていた。
理由はわかった。だが納得はしていない。やはり俺はラムノにこの村に来て欲しいと思っている。彼女自身がどうにもできないことで彼女が苦しむことになるなんて、間違っている。
「じゃあ質問させてください」
「ほう。何かな?」
「この村は外界とは関わらないようにしてるんですよね。それならどうして通貨を持っていて、街まで物を売りに行ったりしたんですか」
そう。気になったのはそこだった。
今回の件だって、村長が俺に木彫り細工を売りに行かせなければ起きなかった事態だ。外の世界とは関わらないようにしているというのに、わざわざ村から出て活動するのは矛盾している。
その矛盾さえ示せば、村長の考えだって変わるかもしれない。そう思っていた、のだが。村長は蓄えた髭を撫でて余裕を見せながら話を続ける。
「ふむ。少し違うのう」
「え?」
「外の世界と関わらないようにしているわけではない。外の者を入れないようにしているだけなのじゃよ」
「…意味が、わかりませんが」
「ユキト。お前が街に出る前に言ったじゃろう。お前にはもっと外の世界を見てほしいと」
あぁ聞いた。俺は街へ行き、その言葉の意味を知った。村の外で起きる悲劇を知れと、そういうことなのだと思った。もしかしてそれは間違いだったのだろうか。
「外の世界を見た結果、それに魅了された者もおる。村に住んでいてできることは限られているからのう。ワシはその者たちの夢は応援したいと思っておる。ユキト、お前に対してもそう思ったのじゃ」
「でも、そんな事をしたから俺みたいな奴がいるんでしょう」
「いや、予想外じゃったよ。村の外の者には必要以上に関わってはいけない。そういうルールじゃからのう」
そういうと村長はしばらく黙っている父さんの方へ視線を向けた。おい父さん、俺はそんな話聞いた覚えがないぞ。
「ともかくじゃ。ワシらは村の外と関わることを悪と言っているわけではない。外の情報を手に入れないと逃げられないこともあるしのう」
「そんな中途半端なぁっ…!」
「中途半端ということもあるまいよ。基本は村の中で完結させる。それが村を守る上で最も安全なのじゃ」
来るもの拒まず去るもの追わず、の反対だということだろうか。
理屈はわかる。納得も、できないこともない。確かに外界と関わらなければ得られない情報もある。その上で自身の知らない人物を招き入れなければ想定外のことが起きずに済むだろう。そしてその想定外のことを起こさないことが、村の平穏に繋がるということもわかってしまった。
村長の考えはわかる。
そしてそれに反論はできない。
そんな状況に陥った俺にできることはもう少なかった。もう、みっともない行動をするしかない。
ブクマ20件達成しました!多分過去最速です!ありがとうございます!
これからもどんどん陰鬱な雰囲気になっていくと思いますが、読者の方が楽しめるような物を作れますよう頑張ります!




