負の連鎖
すみません。あまり面白くない舞台説明の話がもう少し続きそうです…。すみません。
どういうことだ。ラムノが来ることで村の全員が死ぬ?どんな例え話だと言うのだろうか。村長の問いかけの意図がわからず首を傾げていると、話の的になっている少女が俺の袖を掴んだ。
「何だ、ラムノ?」
「ごめんユキトにぃ。やっぱり迷惑だったね」
そしてその掴んだ手を離すと、今度はその手を俺の背中に回し優しく押してくれた。
「あたし、戻るから」
「戻るってお前、そんな場所」
「いいよ。嬉しかったから」
こいつに戻るところなんてないはずなのに。もしかして街に帰ると言うことなのだろうか。だとしたら帰り道はどうするのだろうか。それに戻るとしたって水や食べ物がなければ途中で死ぬかもしれないんだぞ。
…あぁ、そういうことか。わかってしまった。
「お前、死ぬ気かよ」
ラムノの沈黙が答えを表していた。迷惑をかけるくらいなら、そういう考えなのだろうか。真意はわからない。だが想像はつく。
「ダメだ」
俺は彼女の肩をガッシリと掴む。今この手に込められている力が、この場に残って欲しいという意思表示だと伝わっているはずだ。
そうだ、理由を聞こう。人を一人見殺しにするなんて絶対におかしい。俺はラムノの肩を掴んだまま後ろへと振り向き、二人に向かって睨みつけるような顔で問いただす。
「村長、教えてください。どうして彼女を連れてきてはダメなんですか?」
「余所の者はどんな事情を抱えているかわからん。どんな暮らしをしていて、誰に恨まれているか」
「それは、だから」
「そうだ。お前は少女が孤児だと言ったな。だがそれを証明できるか?」
「証明って、それは」
「その少女が言っていただけならば、その言葉が真実かどうか確かめることはできまい」
「だけど!…そうだ、ラムノ。お前のそのコート貸してくれ」
ラムノの体には合っていない大きなコートを受け取り、それを村長と父さんに向かって見せびらかす。
「これ、子どもが着るような大きさじゃないでしょ。本当に親を亡くしたんですよ!」
村長は俺が見せたコートに触れる。質の良いコートだ。サイズか違うその上着をこの少女が持っていることは、彼女が孤児だという証明の一つにはなるはずだ。
しかし俺の想像とは異なり、村長は大きくため息を吐いた。
「確かに、もしかしたら本当に彼女は孤児なのかもしれんな」
「でしょ!?」
「だが、どうやら彼女は裕福な家庭の娘なようだな」
「…は?」
村長はゆっくりとラムノの方へ歩み寄る。そしてその細い目で彼女を見つめるのだった。
「少女よ。貴女の親は商人かな?」
「い、いえ。軍人と科学者ですけど」
俺に背を向けている村長の顔は見えない。だがその顔が残念そうになった、そんな風に感じた。
「軍人と科学者、か。ならばやはり、受け入れるわけにはいかんな」
「…そういうことですか」
「村長、ラムノ?何を納得しているんですか?」
「ユキトにぃ。あのね」
今度はラムノの方から声を発した。目上の人である村長が言うよりも、自分から言ったほうが俺が納得すると思ったのだろうか。
「あたしの親が死んだように、あたしの親のせいで死んだ人もいるんだよ」
「でもラムノは関係ないだろ」
「あるよ。さっきこのお爺さんが言ってたでしょ」
言っていた?今までの会話の中で?
ダメだ、どうも血が回っているせいか頭が回らない。その会話の内容とやらを思い出せずにいると、ラムノの方が続きを話し出した。
「恨まれてるかもしれないんだよ。あたしが」




