人が来ないワケ
早いもので20話超えです。
十歳だけでかなりの時間を費やしてますね…。予想外です。
「おー、似合ってるじゃん少年」
俺を店の手伝いに繰り出したキザリィさんは丸椅子に座って文庫サイズの本を読んでいた。どうやら店番が暇というのは正しいようで、今は真っ昼間だというのに客が一人も入っていない。
「ほら、こっち来てこっち」
そう言うとキザリィさんは自身の横にあるもう一つの丸椅子をポンポンと叩き、俺に座るよう促す。
そして丸椅子に座ると、今度は俺の分の文庫本を手渡してくれた。村にはなかった本で、内容はどうやら冒険モノの小説のようだ。あらすじによると漂流した五人の少年少女が、無人島で協力しながら生活をして助けを待つという内容だった。
「本、お好きなんですか?」
「いや全然。外で遊ぶ方が好きかな」
ここで座りながらできることってそれくらいなんだ、と彼女は語っていた。俺が質問をしてからも客が来る気配はなく、ただただ時間だけが過ぎていく。
「そういえば君って何者?」
中盤まで小説を読み終えた頃だった。唐突に彼女は俺にそう問いかけてきた。質問の意図が読めず、つい聞き返してしまう。
「何者って?」
「いやぁ、お父さんが工房に迎え入れる人って中々いないからさ」
「そういうことですか。えぇと、僕はフェンコウっていう村の住人で…」
「ゔぇ?」
ずっと下を向いていたキザリィさんの顔が上がった。眉間に皺を寄せた険しい顔で俺を見ている。
「フェンコウからの人っていつもお父さんと盛り上がってるおっさんだったじゃん。あの人どうしたの?死んだの?」
縁起でもないことを言う人なんだな。
「死んでませんよ。今年はたまたま僕が来ることになっただけです」
そういえば、例年は職人の人が来ることになっているって村長が言っていたっけ。俺はその人とはちゃんと話したことがないし名前も知らないが、村の評判を聞くに悪い人ではないことは知っていた。
「そっかぁ、てっきり…」
キザリィさんは何かを言いかけて口を閉ざす。言いかけた彼女の顔が物憂げな表情を浮かべていたことを俺は見逃さなかった。
「何か思うところがあるんですか?」
「いーや、全然。君みたいなちっこい子が来ることもあるんだなぁって思っただけだよ」
「身長、ほとんど同じですよね」
「何を言う。アタシの方が大きいでしょうが。ほら、立ってみ」
わかる、わかってしまった。この人は本音を隠している。それもきっと、俺の村に関する本音を。
背比べをしようとする彼女へと詰め寄り、俺は彼女は質問を投げかけた。…ちなみに、悔しいことに彼女は本当に俺より一回りくらい身長が大きい。
「あの、もしかして何かあるんですか」
「何かって何かなぁ」
「俺が持ってきたアクセサリーとか、あんまり売れてなかったりするんですか」
全く客の来る気配のないこの店や、他の店と比べて馴染んでいないこの雰囲気、そして彼女の態度を見てそう思った。もしかして木彫り細工というのは流行っていないコンテンツなのではないかと。
「えーと…」
そして言い淀む彼女を見て確信してしまった。きっと、俺の思っていた通りであることを。
「君に話すようなことじゃあ、ないんだけどなー」
「でも、きっと俺にも関係する話なんですよね」
「まぁ…」
彼女は数秒の沈黙の後、唸りながら悩み続ける。しかし観念したかのように大きな息を吐くと、俺の方へ顔を向けて話をし始めるのだった。
ところで今回地味に過去作ネタ入ってるんですけど気づいた人いますかね。




