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家族になろうね

ようやくこの話題も落ち着きました。一歩前進です。

※予約投稿時間を来週に設定してしまっていました。失礼しました。

 「あ、いや。俺ってこの街の人間じゃないからさ」


 無意識に掴んだ彼女の手を離す。強く握りしめていたのだろう。彼女は俺が腕を離した途端、その握りしめていた場所を撫で始める。


 「知ってる。だからカモだと思ったんだ」

 「その、俺と一緒に来てくれればさ。お前を知らない奴と過ごせるぞ。新しく人生を始められると思ったんだ」

 「…それって今の現実から逃げるってこと?」

 「違う」


 どうだろう、厳密には違わないのかもしれない。しかし少なくとも、俺の考えは彼女を現実から逃すとかそんな思いは込めていなかった。


 「辛い現実はあると思うんだけど、人は悲しい思い出とか辛い記憶とかを抱えながら生きていけると思うんだ。だからさ、少しでも前向きに生きてほしいって思って。だからその」


 感情が突っ走っている。言葉がまとまらない。伝えたいことがあるのに、それが伝えられないもどかしさが溜まっていく。


 「えっと、つまりだ。お前はもっと幸せになって良いと思うんだよ!」

 「ふぅん」


 何とか自分が言いたいことをまとめたつもりだったが、当の少女はそっけない反応をしていた。俺が言った言葉の内容を考えていたようだ。そして数秒の沈黙の後、一つの質問を俺に投げる。


 「あんたがあたしを幸せにしてくれんの?」

 「あぁ。約束する」


 …ん。なんか今言い回しが変じゃなかっただろうか。


 「そっかあ」


 少女は態度を一変させ、満足そうに皺を作って笑った。これまで浮かべていた表情の中で一番美しい顔だ。思わずこちらが動揺してしまうほどだった。

 俺より一回りほど小さい体の彼女は笑顔を浮かべたまま俺の胸に顔を埋める。そして上目遣いで。


 「じゃあ、幸せにしてね?」


 と言ってきた。

 …何だろう。何か俺とコイツの間に壮大な勘違いがある気がする。

 しかし嬉しそうな彼女を見ると、それでも良いかと思ってしまった。俺が、こいつにもっと良い暮らしをして良いと思ったのは違いないのだから。


 「そうだ、あんたの名前は?」


 少女は引き続き上目遣いでそう問いかけて来た。そういえば散々身元について推測していたのに、肝心の名前を紹介し合っていなかった。


 「あぁ。俺はユキト・メイクブレッド」

 「そうか。じゃあユキトにぃだね」


 …ユキトニー?何だろう、あだ名の付け方なのだろうか。日本で言うところの「っち」みたいなものだろうか。


 「あたしはラムノ。これからよろしくね、ユキト。…おにーちゃん」


 そう言うとラムノは俺の腕に抱きついて来た。なるほど、ユキトニーというのは兄と言われていたのか。そう言われると、目の前にいる少女が何だか妹のような存在に思えてきた。

 …家族。

 時折日本で生きていた時のことを思い出す。畑仕事とかは関係なくて、学校に通って遊んでいただけの日々のことを。

 父さんも母さんも元気だろうか。俺がいなくなって酷く悲しんだりしていないだろうか。こちらの基準ではもう十年だ。もし俺が死んで悲しい気持ちになったとしても、立ち直っていてほしいものだが。


 『子どもを心配しない親なんていませんよ』

 『お前が思っているよりも、周りはお前を見ているんだぞ』


 こちらの世界での両親の言葉を思い出す。思い出すと、父さんと母さんのことを思い出して胸が苦しくなる。

 妹のように甘えてくる少女を撫でながら、俺は本当の家族に対しての思いを馳せるのだった。

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