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幸せな…

平日の朝からちょっと嫌な内容です。

 気がつけば朝になっていた。

 包帯少女は俺の肩に頭を乗せて気持ちよさそうに眠っている。そんな様子の彼女を起こすのは申し訳ないが、このままだと動くことができないし肩も凝ってしまう。


 「おい、朝だぞ」


 俺は空いている手で彼女の頭を撫でつつ声をかけた。しかし少女は俺の肩を涎で濡らすだけで起きようとしない。どうしたものか。


 「起きろって」

 「ぱぱぁ」

 「…んん?」


 頭を軽く叩くと少女は薄く瞳を開けてそう呟いた。完全に寝ぼけている、俺のことを父親と勘違いするだなんて。


 「俺はまだそんな歳くってないぞ」

 「…ん」


 あ、そういえば寝言に返答をしてはいけないんだっけか。確か睡眠の質の低下に繋がるとかどうとか。

 そう思った直後、少女は間抜けな顔をして目を覚ます。やはり声をかけてしまったことで起こしてしまったのだろう。申し訳ない。


 「おはよ」

 「ん。…パパ、おはよ」

 「ごめん、違うんだ」


 大きなあくびを出した彼女はようやく覚醒したようで、今度はしっかりと焦点が合った目で俺を見つめる。

 そこから数秒の沈黙の後、彼女は大きなため息を吐いた。彼女の間の抜けた姿を見てしまったこともあり騒がれるかと思ったので、この反応は意外なものだっあ。


 「家族の夢を見てた」

 「だろうな」

 「暖かい家にいてさ、起きたらパパとママがおはようって言ってくれて。朝のご飯で野菜を残したら怒られて、でも食べたらすっごい喜んでくれて」

 「…うん」

 「でも、起きちゃった。夢なんだよね」

 「…あぁ。そうだ」

 「これが現実なんだよね」

 「そうだ」

 「痛くて、みっともなくて、辛いのがあたしの現実なんだよね」

 「…」


 言葉が出なかった。何も言いたくなかったんだと思う。下手なことを言えば、彼女を悪い方向に導いてしまいそうで。


 「…違ったらいいのに」

 「違わない。それが現実なんだ」


 だからこそ言えた。彼女を夢の世界に留まらせてはいけないと思ったから。


 「慰めてくれないんだ」

 「慰められたいわけじゃないだろ」

 「どうだろ」

 「俺は慰めないから。違う言葉が欲しいなら他の奴を探してくれ」

 「…うん、わかってる。ありがと」


 そう笑顔で返した少女はとても儚げで。それこそ夢の存在のように思えた。

 俺は消えてしまいそうな彼女の腕を掴み、どうにか現実へ引き戻そうとする。放っておいたらいつしか夢の世界に行ってしまいそうで不安だったのだ。


 「俺と一緒に来ないか?」

 「は?」


 無意識だった。特に何も考えずに出した言葉だった。

 自分で発した言葉にあたふたと慌てながら、俺は目の前の少女を助けるために話を続けるのだった。

こんなにこの会話が長引くとは思わなかった…。

次回でこのテーマの会話は終わります。


多分。

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