正しいと思ったことを
もしかしたら十月くらいから配信とかやってみるかもしれないです。需要は無さそうですが…。
「ひ、人殺し!」
子どもを蹴り続けるおっさんに対して絶叫する。そして周りにいる人間にも聞こえるように。先ほどまで蚊が飛ぶような声しか出せていない少年が突然叫び出して驚いたのか、はたまた俺が叫んだ内容が気に食わなかったのか、おっさんは子どもを蹴る足を止めた。
「そうやって人を殺すんだろ!」
「…おい、何言ってんだ?」
「理由をつけて子どもを蹴り続けるなんて、それが大人のやることか!人殺し、人殺しですよ!」
営業妨害も良いところだろう。子どもが大声を上げて一人の人間を犯罪者扱いしているのだから。
だがこの手段は人目を引くには有効だったようで、次々と大人たちが集まってくる。それはこのスリの子どものことを知らない人間もいたようで、蔑んだ視線を八百屋のおっさんに向けていた。
「何だあのおっさんは」
「子どもに足を乗せているぞ」
「人として最低ね、近所のママ友に教えてあげなきゃ」
へぇ、ママ友って言葉はこっちにもあるんだ。あ、いや、そうじゃなくて。
大勢からの視線のおかげでおっさんの足が止まっている。軽蔑の視線を受けて固まっている彼の足から、引きずるように子どもの腕を引っ張った。
「あ、おいっ、何しやがる、ガキ!」
「ごめん、おっさん!」
俺がこんなことをしてしまったばっかりに、もしかしたら明日から彼の店の売り上げが減るかもしれない。閉店しないことを祈りつつ、俺はスリの子どもを背負ってその場を走り出した。
この辺りの地形を知らない俺は、適当に人気の少なそうな道へと駆ける。やがて建物と建物の間、掃除も行き届いていないような路地へと辿り着き、臭く汚いその道を走り出す。流石にこんな道に人なんて来ないようで、俺たちはゴミに紛れてその路地裏へと座り込んだ。
鼻をつまみたくなるような不快な匂いを嗅ぎながら息を整える。正直呼吸をするだけでも不快だが、生きようとするためか体が勝手に呼吸をしてしまう。気持ち悪いが何もしないよりマシなのだろうか。
「ぐっ」
しまった。自分のことばかり考えてしまったせいで背中の子どものことを忘れてしまっていた。
床に子どもを降ろし、街に来るまでの道中で使用しなかった傷薬と包帯を取り出す。不衛生な場所だが何もしないよりはマシだろうと、治療をするために顔を隠すためであろう子どもの帽子を取った。
「…あ?」
…びっくりした。
サイズの合わない帽子を外した、その彼女の素顔に驚いた。
ぶかぶかな服、帽子を被っているせいでまったく気づかなかった。まさか、この子が女の子だったとは。
…それにしても、と思ってしまう。こんな時に限って。
整った顔立ちだなぁ、と彼女の顔に見張れてしまった。




