揺れる瞳、その心を見て
ちょっと短かったので土曜に投稿です。
明日にまた投稿予定です(今から書き始めますが…)
「父さん?」
父親が立っていた。村の出入りをする門の向こうで立っていたのだ。朝起きた時にいないと思っていたが、勝手に畑仕事でもしているのだと思っていた。
「どうしたんだよ」
「その、なんだ」
昨日まで俺に得意げにテントの立て方などを教えてくれた父の姿はない。そこには本音を出せない不器用な男が一人立っていただけだった。
「大きくなったな」
やがて男は、俺の肩を叩きながらそう言った。彼の揺れている瞳からは少さな雫が流れているように見えた。
「思ってたんだ。お前は早いうちに、おれたちから自立してしまうんじゃないかって。お前は一人で考えることが多いからな」
「…そういうこと、考えてたのか?」
「お前が思っているよりも、周りはお前を見ているんだぞ」
村長のこと、ウォーラのこと、母さんのこと。そして、今目の前にいる父さんのこと。色々な人の言葉を思い出した。みんな、俺よりも俺のことを考えてくれているということを。
何故か涙が出てきた。悲しいのだろうか、それともその反対の感情なのだろうか。人から思われていることで、思わず感極まって涙が流れていたのだろうか。
ここに悲しみの感情はない。ただただ、心が昂っただけである。それが先程の問いかけの答えだった。
「頑張れよ」
「わかってるさ」
「帰ってこいよ」
「わかってるって」
涙と鼻水で俺を濡らす父さんの思いを受け止めて。
俺は抱きつく父さんの肩をぽんぽんと叩くのだった。こういう時落ち着いているのは親ではなく息子なんだな、と悟る俺であった。




