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皆の心、自分知らず

前回の配信についてですが、やるとしたら9月からになるかもしれないです。

ちょっと今月は余裕ないんで…。

 あっという間に七日が経った。

 地図やコンパスを貰って道を確認したり、火の起こし方を聞いたり、テントの建て方を学んだり。これからの三日間を過ごすための知識を蓄えているだけですぐに日々が過ぎていった。


 「水筒は持った?」

 「あぁ」

 「地図は?コンパスは?」

 「持った。大丈夫だって。母さんは心配しすぎなんだよ」


 旅立ちの日、朝日が登る頃。母が俺の荷物を一つ一つ確認する。こうしていると、昔遠足で家を出ようとした時を思い出すな。あの時も今みたいに弁当や水筒を持ったか確認してたっけ。母さんが作ってくれた砂糖たっぷりの卵焼き、好きだったなぁ。


 「食料は?」

 「ん、あぁ」


 そう言いながら、今の俺の母が革袋の中身を確認した。中には干した肉やパン、木の実などがたくさん入っていた。

 栄養バランスはともかく、俺に保存食は必要ない。しばらく使っていないが、パンを生成する魔法が唱えられるからだ。

 だが俺はこのことを誰にも話していない。皆が協力しあっているこの村で能力のことを話したら、もしかしたら俺に依存してしまうんじゃないかと思ったからだ。それでも良いかもしれないけど、俺は今の村が好きなのだ。それを壊してしまうかもしれない力はなるべく広げたくない。

 …ウォーラの目の前で何度か使っているが、それはまた別問題として。


 「持ったよ。だから心配しすぎだって」

 「子どもを心配しない親なんていませんよ」

 「そんなもの?」

 「そんなものです」


 親を否定するわけではないが、そういう感覚はわからないんだよな。自分が親になったら大事にされていたとかわかるのだろうか。

 母から背中を押され、村の出入り口である門へとやってくると、今度はいつも見ている幼馴染が俺を待っていた。


 「やっほ、ユキ」

 「日が上ったばかりだぞ。何で起きてるんだよ」

 「見送るためでしょ」


 間髪入れずにそう言った彼女は、こちらが照れている間に握り拳を差し出した。急に喧嘩でもふっかけてきたのかと思ったら彼女はその拳を開き、中にある小さな彫刻物を見せてきた。木彫りの、何だろうか。


 「猫?」

 「ウサギ!持っていると幸運が訪れるんだって」


 やけに短い耳をしたウサギの彫り物を、ウォーラは強引に俺のズボンのポケットに詰め込んだ。


 「一応言っておくけど」


 いつもこちらを動揺させる彼女は、珍しく顔を赤らめて小さな声で言う。


 「しないでよね。怪我とか」

 「気をつける」

 「約束!」


 ウォーラは小指を出した。指切りを求めているのだ。不思議だ、こちらの世界でそういう約束をする風習などないと言うのに。

 やはりこいつは…。


 「お前、もしかして転生…」

 「ん、何?ユキが前にこういう約束の仕方があるって言ってくれたんでしょ」


 …そんなこともあったかもしれない。多分無意識のうちにやったことなので忘れていた。

 差し出された小指に小指を絡め、あの謎の歌を唱える。指切りげんまん、嘘ついたら。


 「一生私にパンを食べさせる」

 「歌、変えてないか?」

 「ユキが針千本飲んだって嬉しくないし。それより、あの美味しいパンをずっとくれた方が嬉しい」

 「そうか」


 そうなのだ。こいつは俺の生み出したパンをとても美味しそうに食べてくれる。幸せそうに、目を細めて笑ってくれるのだ。

 だからかもしれない。色々考えてはいるのに、こいつにパンを作り出してしまうのは。


 「ウォーラが一生満足するほどのパンを作るって、大変そうだな」

 「そう思うなら無事に帰ってきてよね?」

 「わかってるさ」


 絡み付いた指を離す。名残惜しそうにウォーラが俺の指を見ていたのは多分気のせいだろう。

 彼女の思いを受け止めて、俺は門の向こうへと歩き出す。眩しい朝日に目を細める中、もう一つの人影が見えた。

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