安心には程遠く
リングフィットアドベンチャーで全てのスキルを習得しました。着々と完全クリアへ辿り着いている気がします。
「わかりました。村のためだというのであればご協力いたしましょう」
正直驚いた、まさかこんなにあっさりと隠し事に協力してくれるだなんて。村中の人を騙すようなことなのだから、もう少し考えることになると想像していた。優しい人なのか、それとも言い方は悪いが考え無しな人なのか。できればこの人が浮かべている優しい微笑みが答えであると思いたいものだが。
「つまりはユキトくんが作るパンをうちが作ったと言えば良いんですね?」
「あぁ、そうじゃ」
「しかし、それだと懸念事項がありますね」
懸念事項?何だろうか。このパン屋の店主と話ができればそれで解決できるとそう思い込んでいた。
「うちのパンは家族全員で作っている。ワタシ一人がその口裏を合わせていても、妻と息子も巻き込まなければいずれ疑われてしまうでしょう」
「あ……」
そうか、納得した。この店は家族経営なのだから、一人だけが俺たちの嘘に乗ってくれても意味がないのか。ではその妻と息子さんとやらにも話をする必要があるというわけだ。一難去ってまた一難という言葉が頭に思い浮かぶ。
村長もここまでは考えていなかったようで、顎に蓄えた髭を撫で始めた。店長さんに話をすることにさえ一晩考えるほど慎重に行ったのだ。更に二人に話をするとなれば、考え事だって増えるに違いない。
だが一つ信じてみたいことがある。わざわざ自分から懸念点をあげてくれたこの店主さんのことを、だ。彼の家族ならば俺の魔法に対しても理解してくれると、そう信じたいと願っていた。




