聞いちゃったから
もう少しで2月も終わってしまいますので、来月から何か新しいことをやってみたい気もします。
前々から気持ちだけはあるのですが…。
その後も俺たちは川で水切りをしたり、林の方へと歩いて森林浴を始めたりした。何だかデートというより、散歩をしているような感覚だ。よく考えたら遊ぶ施設などないのだから、こうなるのは想像がつくはずだった。想像力が足りないな、俺。
林の中はとても静かで、人の声は何も聞こえなかった。聞こえるのは木の葉が揺れる音や動物の音だけ。本当に良い場所なのだが、同時に嫌な思い出がある場所でもある。
「楽しい?」
「ん?」
それはとても唐突で脈絡のない質問だった。ラムノが見上げる形で俺の方へと顔を向ける。
「楽しんでるかなって」
「あぁ。楽しんでるけど、どうして?」
「だってこの林でしょ。例の場所」
「え?」
例の場所、と言われると直前まで考えていた嫌な思い出のことしか関係性が思いつかない。だがそれはラムノには話していないはずだ。
スコードを殴って俺が気絶していた時にラムノも一緒にいた?いや、それなら村長が話してくれるはずだ。確かあの時名前を出していたのは、モーブとウォーラだけだった。なら何故ラムノがそのことを?
「そのさ、聞こえちゃったから。ちょっと心配だったんだけど」
「聞こえちゃったって、何を」
「この前の倉庫の扉を押さえてる時の話。あたしもそこにいたこと覚えてるでしょ?」
そうか。ここの出来事について、ウォーラと仲直りした時も話をした。あの時にラムノにも話を聞かれてしまったのか。まさか壁越しに声が漏れているとは想像もつかなかった。
「ずっとユキトにぃ、変だったし。最近ご飯食べないときあるよね」
「あ、それは全然関係ないんだけど」
「うん。それなら良かったんだ」
ラムノはそう言うと珍しく屈託の無い笑顔を浮かべるのだった。




